ようやく夏休み最後のレポートになります。この日記の約3ヵ月半の遅れを何とか取り戻したいと思っていますので、もうしばらくお付き合い下さい。今回は8月後半の内容になります。
■ 最終アサイメント - 生命保険業のアジア進出戦略 (続き)
8月22日(金)がいよいよインターンの最終日だ。前回ご報告した「生命保険業のアジア進出戦略」のプレゼンテーションを行う日でもある。当日はご多忙のなか、投資銀行部門の方々が、アナリストからMD(マネージング・ディレクター)レベルの方々まで40~50名に集まっていただいた。パワーポイントを使用しながらの約30分のプレゼンテーションと、約20分の質疑応答という構成だ。
これまでご報告してきたアサイメントがきれいに片付いていたわけでなく、そのうちのいくつかを前日まで掛け持ちでやるキツいスケジュールだった。最終プレゼンの資料がようやく完成したのは、当日の早朝だった。すぐに50部のコピーの手配をした。そしてコッソリと会社を抜け出し、近くの喫茶店で2回のドライ・ラン(予行演習)。こういう感覚は久しぶりだ。前職でクライアントとの最終ミーティングに出掛ける直前みたいな感覚で、いい緊張感だった。
プレゼンテーションはあっという間に終わった。しゃべりにしゃべって、質疑に必死に答え、「なんだ、もう終わりか」という感じだった。全般 的には自分の力を出したかな、という感触だったが、一般に公開されている情報しか用いなかったため、分析の深度についてディレクターの一人から「もう少し掘り下げてほしかった」と後でアドバイスを頂いた。
それでも、事前に何人もの方々から助言を頂きながら作業を進めたこともあり、「いいプレゼンだった」とご好評をいただくことができた。何より終わって嬉しかった。この日のビールは本当に最高だった。
ビジネススクールにきた目的の一つでもあった夏のインターンが、これでようやく終わった。
■ 夏の間の就職活動記(3) 投資銀行各社の「違い」 について
昨年から今年まで投資銀行各社のレセプション、ディナー、説明会や面 接に出席させていただき、多くの方々の話を伺う機会があった。投資銀行にご興味がある方には、各社の違いは何なのか関心がおありだと思うので、独断であることをお断りしたうえで、私が感じたところを簡単に述べたいと思う。
私が思うところ、仕事内容に直接インパクトのある違いとしては、
(1) 現在やっているディールの数(景気がいいかどうか)、
(2) M&Aに強いか、資金調達業務に強いか、或いはその両方をバランスよくやているのか、
(3)不動産部や証券化部との連携はどうなっているか(総合力)、
(4)日本とそれ以外の各国でのプレゼンスはいかほどか(海外ネットワークの強さなど)、といったところが挙げられると思う。
(1)は特に今不況といわれる投資銀行業界では重要で、これが仕事量・質だけでなく、人員削減などを通 じた自分へのインパクトにもつながってくる。(4)はクロスボーダーの案件をやりたい方には重要だと思う。北米で強い投資銀行と欧州で強い投資銀行は必ずしも同じではないし、日本でのプレゼンスと他のアジア地域でのプレゼンスもまた違う。
また、今後の中国その他の地域の伸びを考えると、これらの「未開拓市場」にどれだけプレゼンスを確立する行動をとっているか(子会社の設立や現地証券会社との提携等)というのも重要な「違い」になってくると思う。(2)や(3)は特に自分のやりたいことが定まっている人には重要だと思う。
よく「米系」と「欧州系」の投資銀行では「文化」や「やり方」が違うと言われるが、率直なところ自分には明確には分からなかった。あえて言えば、上記(4)の各国でのプレゼンス(ブランドとも言える)に違いはあると思う。しかし、基本的に行っている業務やアプローチ、文化の違いについて、「米系か欧州系か」という点に関連付けて説明できるとは私個人には感じられなかった。
「日系」と「外資系」の違いとしては、おそらく(4)の違いが大きいと思う。日系はやはり日本で非常に強い。日系証券会社と銀行との関係が深いし、その銀行と日系企業との関係が深いことは、日系証券会社の非常に強い武器になっている。
他方、「クロスボーダー案件」では、やはり外資系に分があるように感じる。海外ネットワークの広さと深さが違うのだと思う。また、日系は外資系のように大企業だけに的を絞らず、中小企業のディールにも多く関与するため、ディールの数が非常に多いと伺った。外資系はこの点、大企業の金額の大きいディールを数少なくこなす、という印象を受ける。
また、上記(1)から(4)以外のもっと"表面的"な違いとして、やはり「ブランド」があると思う。「この投資銀行はいい」という、根拠不明に感じられるかもしれないが、ある種の心理的なランキングみたいなものがあるように感じる。これが重要なのは、この「ブランド」の強さによってお客さんの獲得率や、人の獲得競争に影響を及ぼしうるからだと思う。特に、人の獲得競争に違いがでると、サービスの質にも違いが出てくる可能性がある。
ただ、このサービスの質の違いは、そもそも会社単位で「どっちの方がいい」と語るのは難しいのも事実だと思う。サービスの質の違いは、「ブランド」よりも、むしろ極めて「属人的」でもあるからだ。インターン中に上司から伺った話では、「この会社はこの人が強い」、「あの会社はこの人が出てくると面 倒くさい(手強い)」との評判が業界内であるようだ。
こういった「極めて質の高い仕事をされる人」がその会社にいるかどうかは、会社の「名前」や「ブランド」では分からない。「いい人のもとで働きたい」というのは、就職する人にとっての共通 の気持ちであると思うが、そういう人がいるかどうかは、「ブランド」ではなく、実際に会い、話をして判断するべきことだと思う。
従って、自分が就職活動をするにあたっては、一重に「お会いした方々に魅かれるかどうか」という点を重要視した。さらに大雑把に言うなら、「あうか、あわないか」。それに次いで (1)のディールの数と、(2)のM&Aに強いかという面を考えたが、これはあくまでも補足事項というイメージだ。敢えて「ブランド」には縛られないようにして活動した。