Campus Report 2002

高橋 邦比呂 to Tepper School of Business, Carnegie Mellon University(全46回)

MBAホルダーへの道

Vol.30 「マネジメントゲーム II」 真骨頂!

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このMBA日記もようやくVol.30を迎えました。今回は9月後半、Mini1(1学期)がはじまって1ヶ月ほどたった頃の内容です。前学期から引き続き履修している Management Game の話をご報告します。

■ これまでの流れ

マネジメントゲームは約100社の擬似企業が業績を競うオンラインでの仮想ゲームだ。一企業5名の生徒からなり、日本、南米、中国、欧州などからも参加校がある。100社の企業は20の世界に分割され、実際には5社一組で競争する。戦略立案にはかなりの数量 分析が要される。

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地元労働組合の方々の講演

面白いのは、業績報告や来期の戦略を地元の企業のエグゼクティブに説明するノルマがあること。浅い分析や失敗はすぐに集中砲火を浴びる。もうひとつ面 白いのは、地元の労働組合の方々と実際に労働契約のネゴシエーションをさせられること。経営者サイドの人間として、給料から有給休暇、各種の保険・保障条項をどう決めるか、なかなか考えさせられるものがあった。

1年生のMini4(4学期)に最初の1年間の経営をやり、わが社は5社中4位 の成績だった。かなりの苦戦を強いられた。そして、今学期に残りの2年間の経営をやり、マネジメントゲームは完結する。

■ 返り咲き!&ボード・ミーティングも問題なくパス!

1年目で苦戦を強いられたわが社は、全工場を中国に移転するという「超ドラスティック」な戦略を提案し、実行した。製品の特徴からも通 常はやらない戦略だ。いろいろな市場調査と勘に基づく決定だった。この戦略には回りの学生も驚いていたが、結果 は最高だった。2年目で2番手まで踊りでて、3年目でとうとう1位に返り咲いた。最後まで競った企業はArtisan社、青山学院大学の学生が経営していた会社だった。

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毎回、本物の役員会並みの資料を用意する

最終年度に何とか1位の座に返り咲くことができたため、今学期に迎えた2回目・3回目のボードミーティングは気分的にかなり楽だった。とはいえ、浅はかな戦略を提示するわけにはいかないため、チームメンバーとはかなり議論を重ねる。数量 分析、競合分析、その他のリスク要因と対応策を羅列して、どんな状況に遭遇してもダウンサイドのリスクを最小限にするように努めるのだ。これには今学期も相当の時間を費やした。

ファイナル・ボード・ミーティングは10月8日に、FreeMarketsの本社ビル会議室で開催された。7時から夜10時頃までの3時間、ボードと議論を尽くして終わった。地元企業のエグゼクティブから「非常にいいチームだった」と最後に誉めていただいたときは嬉しかった。その足で皆でビル近くのバーで一杯。「ようやくゲームも終わったんだなぁ」と感慨にふけった。よく「長かったような短かったような・・」と言うが、今回に限っては間違いなく長かった。

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最後に掲げた会社の成長戦略-新しい収益源を提示

■ マネジメントゲームで学んだこと - やはりチームワーク

マネジメントゲームは一応「戦略」の分野の授業となっているが、自分にとっては組織論とかチームワーク、プレゼンテーションといった「ソフトスキル醸成型」の授業だった。緊張とワークロードが極めて高いため、実は「崩壊」するチームも多くある。自分のチームでも、何度か「大激突」が発生してしまい、いかにチームワークをワークさせるかが常に問われた。

ゲームでは、「誰が社長」といった"決め事"を除けば、誰にも正式な権限はない。ここが職場と大きく異なるところだ。しかし毎日のように意思決定をしなければならない。どんなに意見の対立があってもだ。翌日にはその結果 が数字で現れ、意思決定の成否が如実に現れる。ここがゲームと職場の共通 点になる。

ただでも「自己主張力」の強いビジネススクールの生徒が集まっている場で、この過程がスムーズに進むばかりでないことは、容易に想像がつくと思う。自分のチームの場合、アメリカ人のメンバーが作成した数量 分析モデルの成否をめぐった議論は壮絶なバトルになった。オペレーションやマーケティングごとの意思決定権限をめぐっても、かなりの火花が散った。反省することも多く、チームワークの難しさを深く知った。

たぶん、「戦略的に正しい意思決定をすること」と、「チームの皆がハッピーになること」は同じではない。ロジックさえ正しければ万人が納得するわけでもない。だから、自分が正しい答えや論理をもっていることが、成功に結びつくわけでもないと思う。ロジックと実行の違いと言ってもいい。ビジネススクールの授業では"People Skill"とも言われる。

自分が思うに、チームワークに必要なのは、第一に謙虚さであり、聞く耳であり、しかし同時に主張する口であり、そしてコンセンサスをつくろうとする姿勢だと思う。自分の意思と価値観の軸だけは、強くもってなければならない。日本人同士でさえチームワークは必ずしも容易でないが、ことにマネジメントゲームでは、米国人、中国人、日本人の混合チームであり、個性、文化、歴史が皆大きく異なるチームだった。相手の立場に立つこと、気持ちを理解することが難しいということを、これまで以上に理解した。

紆余曲折があったマネジメントゲーム、このMBAレポートですべてを語りつくすことはとてもできないが、地元エグゼクティブに「いいチームだ」と誉めていただいたときの喜びは大きかった。エグゼクティブからの総合評価(これはウェブ上で公開される)も非常に高かった。チームメンバーと共に喜んだ。

マネジメントゲームは、カーネギーメロンの"One of the best programs"であることは間違いないと思う。しかし、他の授業と同様、取り組み方次第で得るものも大きく変わる。もし当校にご興味があって、マネジメントゲームに参加する機会がある方には、是非「社長」に挑戦していただきたいと思う。大変だったが、学ぶ事が本当に多いプログラムであった。

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