あけましておめでとうございます。今年も皆さんにとって良い一年でありますように!
コロンビアは12月17日が試験の最終日で、その後1月21日まではずっと冬休みです。冬休みだけでも一ヶ月以上あります。妻に「こんなに高い学費を払っているのに、実質上の勉強期間は一年中の半分しかなく、コロンビアもいい商売をやっているね」と冗談っぽく言ったら、彼女から「じゃ、その商売をやったら」とまじめに薦められました。
さて、休み期間中、結局どこにも行かず、殆ど家の中でごろごろと過ごすことになっていた。とは言うものの、暇であるのを良いことに、今まで暇がなく、読めなかった本を読んだり、日ごろ感じていたことをまとめたりしていました。更に、ふだんあまりケアが出来ていない妻への家族サービス(?)も兼ねて久々映画を見に行ってきました。
目当ては最近話題になっている「ザ・ラスト・サムライ」です。トム・クルーズも出演しているから、兼ねてより妻が見たいと言っているのだが、どうせハリウッド映画では碌なものが作れなく、アメリカ大衆向けの日本人像や日本史観で終わってしまうだろうと私は最初思っていたが、それは意外とちゃんとした映画で結構感じさせられた部分が多かったのです。勿論、所々「えぇ?」と思わされる場面 も多かったが、基本的には、日本人の魂に刺し貫かれる「武士道」たるものを克明に描いています。
しかしながら、映画を見ながら、ふっと気づいているのはこの「武士道」が日本人の魂の根底をなしているのと同時に、日本の発展を妨げていないのかということです。なぜなら、「武士道」を目指すのと同時に、必然的に日本という狭い世界の中で閉じこまれる恐れがあるからです。
新渡戸稲造氏が言うには、武士道とは「その表徴たる桜花と同じく,日本の土地に固有の花である」。その表現からも分かるように、基本的には武士道とは日本古来の考え方に基づいたものであり、外部からの影響を受けずに代々継承されてきたものとは言えましょう。恐らく、これほど古来の思想や文化に固執する先進国も今となって少ないと思います。
また、それを反映する一つ良い例としては、先進国の中で日本は恐らく唯一と言っていいほど国民構成に関しては、ピュアな国ではないのでしょうか。アイヌ族や在日はいますが、かなりのマイノリティといわざるを得ません。で、何を言いたいかといいますと、その単一性は日本の更なる発展を妨げていると思えてなりません。
塩野先生が書かれたローマ史を最近読んだ機会がありました。塩野先生によりますと、ローマが全ての面 においては、当時の地中海においては、最強とはいえませんが、対外的に寛容な政策を取ったおかげで、徐々に国力を蓄え、結局世界の強国になったそうです。それと比べ、当初ローマよりずっと強かったアテネやスパルタなどのギリシャ強国はローマのような対外寛容融和の政策を取らず、そのせいもあって、徐々に国力が衰え、結局強国の地位 から転げ落ちました。
もちろん、一国の盛衰はただ一つの対外政策で決まるわけではなく、色んな要因が複雑に絡み合って、その複雑系の結果 として生まれるわけだが、ローマが取ったその政策が国政に対して極めて重要な結果 をもたらしたのは誰の目には明らかではないのでしょうか。
単純な歴史比較は出来ないが、歴史は循環するものだと私は信じています。数千年の人類の歴史は長いようで実はかなり短いと思います。宇宙の形成に要する時間と比べ、微々たるものとも言えます。なので、その間、色んな技術革新などで社会がだいぶ変わってきているように見えますが、それはあくまでも物質的なものであり、決して精神構造は根本的には変わっていないと思います。それだけに、過去を参照し、先人達が残してくれた標本、つまり、歴史上のさまざまなイベントをよく見ながら、現在自分自身がおかれている立場、すべきこと及び将来の予測もある程度は見当がつくと私は思います。