1.新年=3学期
年末年始の休暇が終わり、キャンパスに戻ると3学期です。3学期の特徴は二つあり、ひとつはキャンパス交換が始まる事、もう一つは必須科目がほぼ修了し、科目の選択が可能になる事です。
キャンパス交換
インシアードには、パリ近郊フォンテンブローとシンガポールに二つキャンパスがあり、3学期以降キャンパス変更が可能となります。往来の回数は自由となっており、シンガポールキャンパスから始めて、3学期以降フォンテンブローに移る事も可能ですし、3学期のみ、もしくは4学期のみ移動して、5学期にシンガポールに戻ってくる事もできます。
この二つのキャンパスという選択肢に加え、インシアードでは米国MBAのウォートンとの交換プログラムがあり、1学期間をウォートンで過ごす事も可能となっています。若干、複雑なので以下にキャンパス交換例を挙げました。
9月 10月 1学期 |
11月 12月 2学期 |
1月 2月 3学期 |
3月 4月 4学期 |
5月 6月 5学期 |
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典型例1 |
シンガポール |
フォンテンブロー |
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典型例2 |
フォンテンブロー |
シンガポール |
フォンテンブロー |
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"世界一周" |
シンガポール |
ウォートン |
フォンテンブロー |
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"大久保" |
シンガポール |
フォンテンブロー |
典型例1はシンガポール・キャンパスでMBAコースを開始した学生の3割前後が選択するスケジュールです。典型例2は、ヨーロッパの寒い冬(3学期)を逃れ、暖かいアジアで過ごそうという"甘い"動機から3学期にシンガポール・キャンパスに移るシナリオです。フォンテンブローキャンパスでMBAコースを開始する300名の学生のうち、80名前後がこのスケジュールを選択しています。
"世界一周"例は、インシアードのキャンパス交換プログラムをフルに生かしたい学生の場合で、シンガポールキャンパス出身者100人中数名このハードスケジュールを選ぶ学生がいました。最後の"大久保"は、私のスケジュールです。
キャンパス交換の是非については、私自身がフォンテンブローに移動する5学期になってまた詳述いたします。現時点で言える事としては、アジア・ヨーロッパという二つのロケーションを経験できるという事の他、人数の違いから来るキャンパス文化の差異を感じられる点でも興味深いです。
フォンテンブロー・キャンパスでは一学年300人もいるので、学生はグループ化し、MBAコースが修了する頃になっても学生同士面 識がない場合もあるようです。反対にシンガポールでは一学年100人という学生数から、2学期が修了する頃には学生同士お互い気心知った間柄になれます。
異文化間の交流という点からは少人数のシンガポール・キャンパスの方が適しています。但し、人数が少ないというハンディキャップは、選択科目の数、企業のリクルーティング訪問の頻度に反映され、この点ではフォンテンブロー・キャンパスが有利です。
個人的には、MBAプログラムの前半はシンガポール、後半はフォンテンブローといったキャンパス交換がベスト・ストラテジーと言えるのではないかと思います。
- コラム1:チャイニーズ・ニューイヤー(旧暦正月)
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シンガポールでは旧暦正月が日本人にとっての正月にあたります。今年は1月22日(木曜日)が旧暦正月にあたり、22-23日(木-金)はデパートや店舗、食べ物市場など軒並み休みとなり、食事をする場所を探すのも一苦労です。通 常インシアードでは、シンガポールの公休日カレンダーとは無関係に授業が行われるのですが、さすがに正月ばかりは無視できず、21日(旧暦大晦日)以降、食堂、セキュリティ以外のすべての職員は休み、23日(旧暦正月2日)は休校となりました。旧暦正月前後はシンガポールのあらゆる場所で赤を基調とした飾り付けがされ、正月ムードとなります。飾りつけは夜には煌びやかにライトアップされます。
ライトアップされた旧暦正月飾り付け
チャイナタウンでの大晦日花火
2.選択科目
3学期には、必須科目数が3科目に減り、3-4科目の選択科目(electiveという)を選択できるようになります。3学期の選択科目は以下の通 りです。
ストラテジー | 組織論 |
---|---|
Strategy for Product and Service Development | Power and Politics |
Strategy for Asia Pacific | Career Dynamics |
Strategy for Alliance M&A | Social Psychology for Management |
Market Driving Strategies | Negotiation Analysis |
ファイナンス | ベンチャー |
International Finance Management | Venture Opportunities and Business Model |
Applied Corporate Finance | New Business Ventures |
産業分析 | その他 |
Electronic and Mobile Commerce | Managing Global Team & project |
Technology Strategy | |
Global Bank Management |
選択科目には学期末の試験はなく、レポート及びクラスへの貢献(発言など)での評価が主です。私は、Negotiation Analysis、Strategy for Asia Pacific, International Finance Management を履修しています。以下、簡略にコメントします。
Negotiation Analysis
選択科目の中では、この授業が最も面白いです。毎回ケースを渡され、教授によって指定されるクラスメートを相手に交渉をし、授業ではその交渉についての分析をします。
ケースの例としては、交通事故の示談交渉や、組合・経営者間の賃上げ・条件交渉などが挙げられます。実際にロールプレイをして擬似体験した後、行動経済学(2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンが扱っていた心理学と経済学の応用分野)のフレームワークを用いて交渉過程、自分の心理過程を分析するので、非常に面 白いです。
Strategy for Asia Pacific
欧米企業がアジアに進出する際に必要な知識というコンテクストでアジア各国の経済・政治・文化環境について勉強します。授業の手法はケーススタディ様式で、例としてはカルフール(フランスのハイパーマーケットチェーン)の台湾進出、ルノー・日産の提携等を扱います。但し、少なくとも3学期半ばの現時点までの授業内容は初歩的で、私がこの科目を選択したのは誤りのように思えます。今後、シンガポールの企業見学などもあるので、後半に期待しています。
International Financial Management
この科目では、為替リスクのヘッジなど、国際的な企業が直面する金融面 での問題について扱います。オプション、スワップなど金融デリバティブの特質についての理解を深めるのが主な内容です。授業の半分程度は講義様式、もう半分はケーススタディです。ケーススタディの例としては、東京ディズニーランドからの円収入についてウォルトディズニーがどのようにヘッジすべきか、などが扱われます。