Campus Report 2003

王 夏亮 to Columbia Business School, Columbia University(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.7 Value Investment

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2004年1月のNYは歴代8位の寒さだったそうだ。マイナス15度になったのには驚いた。しかし、1月中旬まで冬休みであったためか12月と比べ、僕の動きも比較的活発だった。

まず、今まであまり関わりのなかった株価について、知り合いの影響で見るようになった。 株価(他の商品もそうだけど)については、人によって考え方はそれぞれ違う。テクニカル分析もあれば、ファンダメンタル分析もあり、それでつい最近まで流行っていた裁定取引の考え方もある。

僕の知っている範囲では、全ての手法を取り入れているところがなかなかなく、理由としては、それぞれが異なる視点で株価を見ているので、必ずしも同じ見方になるとは限らないからであろう(もし、間違っているのであれば、指摘を宜しくお願いします)。だからこそ、マーケットで勝負するのが面 白いのである。

僕も以前マーケットでの経験があったが、商品が為替で株ではなかった。為替の分析に関しては、どちらかと言えば、テクニカル分析とファンダメンタル分析(マクロ分析でトップダウン)が主な手法である。

例えば、日本の景気が良くなるから、円が買われるだろうとか。今まで僕の経験上では、そのマクロ分析は殆ど当たった試しがなかった。ソロモンに入社して早々エコノミストのリサーチレポートを信じ、ドル円を140円近くで掴まされた苦い経験もあった。結局、マーケットの流れはマーケットに聞くしかなく、表面 上のマクロ分析は何の役にも立たない(少なくとも為替に関しては)。

すこし余談になったが、株価分析はアメリカにおいて、基本的にはバリュー分析が主流である。勿論、イベント裁定取引などの投資スタイルもあるが、僕が見ている範囲内では、間違いなくValue Investmentが非常に大きな比重を占めている。幸運なことに、コロンビア大学はバリュー投資のホームランドと言われている。あの有名なバフェーさんもコロンビアビジネススクールの出身である。

バリュー投資の真髄は何と言っても良い物を安く買うとのこと。当たり前のことが、なかなかそれを実行するには勇気がいる。安いものにはそれなりの理由があるので、マーケットに捨てられた株をいくら安い値段とは言え、ひょっとしたらただの紙屑同然の株券を買うにはやはりそれなりの勇気が必要。ただ、今の値段の安さはあくまでも一過性的な原因によるもので将来はまだ戻るという確信を持てるのであれば、迷いもなく買いにでるべきだろう。

さて、最近いくつかの株について自分なりの分析を行ったが、その中で皆さんがなじみの日産自動車を一つ取り上げてみよう(念のために、断っておくが、僕にとっては日産がベスト買ではない)。

日本の自動車株に大きな影響を与えているのは二つあって、一つは為替(特にドル円)、もう一つは日本以外のグローバル市場での業績。

まず為替については、最近の動きからも分かるように、基本的には短期筋が円買いを行い、当局がドル買いをやり、がっぷり四つという格好となっている。そもそも、今のドル安はアメリカの11月の大統領選挙をにらんだアメリカ当局の作戦であり、本当の意味での円高ないしユーロ高ではない。実需の円買いがなく、短期筋の円ロング玉 が殆どなので、当然ながら、長続きはしない。だから、ドル円がいとも簡単に109円に上がったのがそのためだと思う。

今後アメリカ当局の思惑をウォッチする必要があるが、しばらくは100円割れのリスクは後退したと見て良いだろう。先ほど言ったように、日本の自動車株には為替、とりわけ、ドル円が大きく影響している。例えば、過去3年間のホンダのP/E倍率とドル円のチャートを照り合わせてみると、見事にほぼ同じ動きをしている。つまり、ドル高になれば、P/E倍率が高くなっている。勿論、会社によって、現地化の進み具合が異なり、為替から受ける影響も違うが、影響を受けることは否定できない。

それと、もう一つ日本の自動車産業ほどグローバル展開している業界も少ないと思う。それだけに、海外における業績が会社全体に大きな影響を及ぼす。最近アメリカにおける日産の業績を見ると、群を抜いている。例えば、1月の新車販売に関しては、全体が下がっているにもかかわらず、日産はほぼ一人勝ちで20%超の新車販売増を達成した。あのトヨタでさえ、15%前後の増加しか達成していないことを考えれば、そのすごさは分かるだろう。

また、先進国におけるマーケットシェアがあまり大きく伸びるのが期待できない中、以下に次のビッグマーケットでの足場を固めるのが肝心である。そういった意味で、日本の御三家の中で最も積極的に中国に進出しているのが日産である。要するに、将来の展望をきちんと描いているわけだ。

また利益性に関しては、日本の御三家の中で日産の営業利益率が最も良かった。どんな会社でもそうだけど、EBIT(業界によってはEBITDAを見るが)と並んで、営業利益率は最も重要な指標とみなされる。なぜならば、本業でどのぐらい稼げるのがその会社の将来性を占う上で重要だからである。その意味では、ホ●ダは要注意と言っていいだろう。

他のQuantitativeな数字としては、P/E倍率がある。御三家の中では、日産が最も低い。この時点で僕にとってはもし自動車株を買うのであれば、日産の買いがほぼ決定的なっている。最後はやはりマネジメント。どのぐらい株主のことを気にしているのかがポイントで、そういった意味で日本人の社長よりはゴーンさんが長けている。

以上ざっくりとした分析の流れを書いておいたが、会社によって、置かれている状況が違うが、基本的には、その会社の製品、マネジメント、それと財務状況を見るべきだと思う。 機会があれば、次回他の株もピックアップしてみよう。

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