最近株式の研究にはまっている。はまっているとはいえ、別にギャンブルにはまっているというような感じではなく、あくまでも理論に基づく計算の元でやっている。特に私の好みはValue投資とEvent Drivenタイプである。
例えば、この前とある著名な雑誌(Bと呼びましょう)に超目玉株(Aとしましょう)が推薦され、その株価が暴騰することがあった。Bによれば、Aの理論株価が2,000円以上あるはずだと。その時の市場価格が75円だったので、いかに超目玉 かというのが分かるだろう。
その記事を読んだ時、こんなよい株があるのであれば、買わない手はないよなぁと瞬間的に思ったが、いざAの財務諸表、業界展望と株価の動向などをチェックしたら、おや、これが果 たして良い株なのかは疑わざるを得なくなった。
まず、Aの株価動向は明らかにおかしかった。例の記事がリリースされる何日前から、既に株価がそれまでのレンジから飛びぬ けて、窓を作っていた。2000年以来ずっと100円以下で低迷していた株が何の大きなニュースもなく、いきなり上抜けして窓を作ったというのは私にとっては、おかしいと思わざるを得なかった。
一方、Aの財務諸表と企業状況も見てみた。残念ながら、私には優良企業あるいは有望企業には見えない。売り上げは2001年以来ずっと下落傾向にあって、2003年の売り上げは2001年の半分以下になっていた。
また、本業の儲けを示す営業利益に至っては、過去2年連続で赤字になっており、今年度の上半期はようやく収益を叩き出したが、それも本業以外での儲けによるものだった。言わば本格的な回復にはまだなっていない。当然のことながら、その企業のキャッシュフローもめちゃくちゃになっている。
また、大量の債務を抱えているので、デット・エクィティ・レシオは容認できないほどの水準にある。それでは、Aのビジネスモデルないし業界の展望が明るいかと言えば、必ずしもそうとは言えない。高付加価値のものを作っているわけではないので、必然的に価格競争に巻き込まれ、その分将来のキャッシュフロー、収益及び売り上げが安定することはなかろう。
以上の分析を経て、私は空売りとの判断を下した。私の考えはこうである。長期的には、市場が割りと理性的であるが、短期的には市場と投資家は非理性的である。何の根拠もなしに、盲目に追従したから、Aの株価が暴騰してきた。ファンダメンタル的に、その暴騰に値しないとの判断が下せる以上に、後はタイミングだけ。いろんなテクニカル指標を総合すると、A株は既に過熱しており、十分の売りサインが出ていた。
因みに、その判断を下したその日の終わり値は300円近くあったが、翌日のザラ場で一旦300円超えもあったが、結局上がりきれず、その後ずるずると下がってきた。今の値段はざっと200円前後で、もし私に十分な資金力があるのであれば、ざっと10日間で50%のリターンをあげることが出来た。それを年率に直すと、とてつもない大きなリターンにはなる。
今の話をしてしまうと、私がコロンビアで何をやっているのかと思う人もいるだろう。もっとMBAらしい話しを期待している人もいると思う。実は今のトピックスは十分にCBSらしさを反映している。
コロンビアビジネススクールは元来Value投資の総本山といわれている。彼の有名なWarren Buffetも実はCBSの卒業生である。そのためか、学校内で株投資、特にValue系の株投資に興味を持っている学生が多く、多くの学生は卒業後、ヘッジファンドやMutual FundなどのBuy Sideに行きたいと思っている。
そのための授業も多くあり、私が最も好きな授業はBruce Greenwald教授のValue Investingという授業。教授がレクチャーする以外に、業界内の有名な方を招いてGuest Speakerシリーズも頻繁に行っているので、実経験に基づく話しはさすがと思うところが多い。
次回はその授業で分析されたケースについて話しをする予定。乞うご期待。