Campus Report 2003

関 伸彦 to Sloan School of Management, Massachusett Institute of Technology(全28回)

MBAホルダーへの道

Vol.15 オペレーションのクラスでの表彰状獲得と「頑張れ!湯川専務」

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オペレーションのクラスでの表彰状獲得

前回に引き続き、私のとっているMITスローンのクラスを具体的に紹介したいと思います。今回は、今セメスターの個人的なベストクラスでもある、Introduction to Operations Managementに関してです。

セメスターも終盤に差し掛かった先日、このクラスの締めのプロジェクトとして、最後の1週間を使って行われていた、Web上にある架空の工場を使ったオペレーション最適化のシミュレーションが終了したのですが、そこで私のチームが他の31チームを押さえ、なんと1位 を獲得したのです(各チーム3名、私のチームの他のメンバーは、日本人と韓国人)。

このシミュレーションに臨むにあたっては、このシミュレーションの順位 の良し悪し自体が成績の10%を占めるというモチベーションも確かにあったのですが、それよりもトヨタの国から来た者として「アメリカ人に負けたくない」という気持ちが強くありました。

ここMITスローンでも、トヨタ生産方式の信奉者は非常に多いのですが、考え方というよりは、ツールとして理解されているケースが多いように感じます。個人的には、それよりも根底にある日本人的な完璧主義を理解することが大切に違いないと考えていて、これが「アメリカ人に負けたくない」という気持ちに繋がっています。

さて、実際のシミュレーションですが、これは簡単に言えば、あの小説ゴールの世界がよりリアルに体験できるといった感じのものです。参加者は、衛星TV用のセットトップボックスを生産する工場のマネジャーとして、日々バラつきを持ってやってくる顧客のオーダを満たす量 を生産しつつ、最終的な持ち金(キャッシュ)の多さで順位を競います。

顧客オーダのパターンは全てのチームに共通であるため、実際に競合同士として顧客を奪い合う、ということは残念ながらできません。しかし、このシミュレーションは、1週間の間、1時間=1日という設定で、夜も授業中も進み続けるため、リアルタイムでの意思決定が必要であり、このためかなかなか緊迫感のあるものに仕上がっていました(参加者はブラウザ経由で、いつでも(深夜でも)意思決定を反映させることが可能)。

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実際のシミュレーション画面 とランキング(見にくいですがSake(私のチーム)が1位です)

参加者がコントロールできるのは、おおまかにみて下記の4つです。
・ 顧客との契約の種類 (短いリードタイムの契約では1オーダで最大$900の利益、長いリードタイムの契約では最大$400の利益が獲得可能。但しリードタイムを満たせないと利益は遅れた時間に応じて減少し、最終的にはコスト分持ち出しになる)

・ 3つの工程にある機械の数 (機械は購入して増やすことが可能。但し非常に高価)
・ ロットサイズ (顧客オーダと同じサイズ→1/2→1/3→1/4と刻むことが可能)
・ 部品購入のタイミングと量 (注文から部品が届くまでの4日のリードタイムを考慮して在庫量 を最適化する必要(注文した部品が届くまで次のオーダはできない))

1日ほど作戦を考える猶予が与えられた後に、その週の金曜日の午後6時という、とんでもない時間にシミュレーションはスタートしました。ここから、次の週の金曜日午後6時まで、ノンストップでの競争です。

このシミュレーションでは、単に私のように楽しむだけでなく(笑)、これまで授業で習った、Queuing TheoryやSafety Stockの考え方を適用しながら、Operations Managementについて学ぶことも当然求められているわけですが、シミュレーションではありながら小説よりは実際に近いということで、実際始まってみると色々と学ぶところがありました。

最も大きかったのは、当たり前ではあるのですが、何事も計画通りにはいかないということでしょうか。計画時にあれこれ考えていても、実際に始まってみると全く予想外の問題が発生し、対応に追われる、ということはままあるとは思うのですが、今回のシミュレーションでも案の定発生してしまいました(笑)。生の情報を集めることで初めて分かってくることも多いため、計画を詰め過ぎるよりは、むしろフレキシブルな設定にしておく方が良いことも多い、ということを改めて実感しました。

実際の作戦を考えていた段階では、小説ゴールでやっていたように(また授業でも習ったとおり)、各工程・機械のスループットと、工場全体でのスループットを計算しました。そして、シミュレーション開始直後に「これでピーク時の需要にも対応できるはず」というだけの機械を買って、あとは左うちわ、という計画だったのですが、最初から深刻な問題が発生してしまったのです。多めの機械を買うというリスクをとって短いリードタイムを選択したにも関わらず、$900の利益を獲得するに必要なリードタイムが全く達成されず(リードタイムが以前と変わらず遅いリードタイム契約のまま)、最初の2日間(シミュレーションでは48日)ぐらいは、夜も対応に追われました。夜中の1時に携帯で会議もしました。

それでも、結局原因が分からず「しょうがないからボトルネックになってそうな工程の機械を買ってキャパを上げてみようか...」なんて言っていたのですが、私の「その前に一度だけロットサイズを下げてみよう」という提案により、少し実験をしてみることになりました。

すると、驚くべきことに、あっという間にリードタイムは約半分になり、$900の利益を獲得できるようになりました。原因の細かい記述は割愛しますが、ロットサイズがこのシミュレーションにおいてここまで重要だとは、シミュレーションが始まるまでは、メンバーの誰も気付くことができなかったのです(現実の工場であれば、実際の作業が目で見えるため、全く同じロットサイズのミスは起こらないでしょうが、それでも、同じような他の予測外の問題が発生するかもしれません)。

しかし、一旦この問題が解決すると、その後は比較的順調に進み、他チームが短いリードタイムの契約に切り替えるのが遅かったことから、最初は最下位 から2番目程度だった順位も、1日(シミュレーションでは24日)後には1桁になり、次の日には1位 まで登りつめることができました。

ここからは、再び一進一退の攻防が続きました。部品の在庫注文ごとに順位 が3つほど下がってしまう(F1のピットインで順位が下がるようなもの)ので、実際の順位 の見極めが難しく、最後まで勝てるかどうかは微妙だったのです。しかし、最終的には2位 に比較的大差(機械1台分の価格の差)をつけて、なんと優勝することができてしまいました。

最後のシミュレーションのレビューの授業では、全く予期していなかったのですが、教授が賞状を用意しておいてくれ、皆の前で表彰をしてくれました。終わってみると、やはり授業の成績よりも、この賞状と、あとは日本人(と韓国人)のオペレーションにおける優秀さを多少なりともクラスのメンバーに証明できたことが嬉しかったです。

あと、うちのチームは、もう1人の日本人の発案でSake(酒)という名前だったのですが、この人を小馬鹿にしたような名前(笑)が他のチームよりも上にあるのを見るのもなかなか爽快だったことを付け加えておきます。

「頑張れ!湯川専務」

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獲得した1位 の賞状

もう1つ、Introduction to Operations Managementというクラスからのトピックです。上記のシミュレーションが進行している中で行われた、最後のケースディスカッションの授業で、なんと、あのセガのドリームキャスト発売時のCMである「頑張れ!湯川専務」シリーズを見ました。それも、日本語で(英語の字幕付き(笑))です。ついでに「セガ田 三四郎」シリーズも見ました。

ケース自体は、当時のセガの社運を賭けたプロジェクトだったドリームキャストが、せっかく色々と斬新なCMをうって、消費者の気持ちを盛り上げることに成功したにもかかわらず、コアのグラフィックエンジン(NEC製)の生産が追いつかず、発売予定日の12月までには予定の1/3量 しか生産できないという状況に関するものでした。

そして、臨場感を出すためか、なぜか当時のドリームキャストのCMが全て流されました。比較のためにサターンのCMも流されたのです(なぜか生徒は皆笑っていましたが、とても彼らに「姿三四郎×セガサターンしろ=セガ田 三四郎」が分かるとは思えず、さすがに説明する気にはなりませんでした)。

マーケティングのクラスではないので広告の批評はさておき、生徒としては、セガが発売を遅らせた場合、ドリームキャスト用のゲームソフト会社も同じく開発を遅らせるに違いなく、発売日のゲーム数が少なくなる、という厳しい状況も踏まえつつ、そのまま発売するか、発売予定を遅らせるべきか、の決断をすることを求められました。

但し、実際の授業のディスカッションでは、このポイントに関しては「次に同じような状況に遭遇したソニーは、結局Playstation2の発売日を遅らせることを選んだ」という事実に触れるに留まり、最終的なディスカッションは「果 たして、製品のコアであるグラフィックエンジンを、アウトソースするという決断は正しかったのか?」といったMake or buy系の話へと導かれていきました。

この点に関して、教授は「アウトソースすべきではなかった」と考えのようだったので、私は「128ビット機になるまでは、市場に既にあったプロセッサを流用していたゲーム業界だから、その流れでアウトソースしていたのも無理はない。誰がやっても、いきなり社内開発(少なくとも設計)という選択は難しかったのではないか」と反論しておきました。それでもあまり納得してくれた風ではなかったのですが、まあ言いたいことは言えたので、とりあえず良しとすることにしました(良くないという話もありますが)。

それにしても、セガはビジネススクールでポピュラーです。MITスローンでは、戦略論の授業でもSEGA vs. 任天堂のケースがここ数年取り上げられているのですが、セガの記述は妙に具体的でリアルなのです。ひょっとしたら、セガは取材に対して非常にオープンなのかもしれません。ケースは深い取材ができた方が、いいものが書けそうですからね。

あと、授業中にどうしても気になることがありました。Toyota生産方式の信奉者で、アンドンや自働化、はたまたポカよけ、などという日本語まで知っている教授が、なぜかNECのことを「ネック」と言い続けていたのです。授業中に指摘するのは少しメンツを壊すかな、と思ったので授業後にこそっと行って「一般 的にはエヌイーシーだよ」と教えてあげました。すると、今度はあっさりと私の意見を受け入れてくれたばかりか「ありがとうございました」と、日本語でお礼を言われてしまいました。

またもや隠れ日本語スピーカー(本当に多いんです)かと思いきや、実は彼は空手をやっているので、空手関係の日本語の挨拶だけは知っているのだそうです。そういえば、空手と同じ格闘技である柔道もトヨタ同様に、外人たちに日本語を使わせている(イッポンとかユウコウとか)偉大な文化だったことを思い出した。・・・日本語のようななマイナーな言語を外人に使わせてしまう空手・柔道、そしてトヨタって本当に凄いですよね。

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