経営者に必要な素質とは何?そういった疑問が湧いてきたことはありますか?"戦略に精通 する"、"人間力のある"、"決断力に長ける"などなど。恐らく10個以上の答えが返ってくると思います。それらの答えはそれぞれ正しいようで実は断片的な部分しか捉えていません。経営者に必要なのはその人のユニックなスタイルとそのスタイルを貫き通 す力だと私は思います。
さて、ちょっと話題を変えます。皆さんは三国演義を読んだことはありますか?羅貫中が書いたあの歴史超大作に対して親しみを抱いている方も少なくはないと思います。その中の誰が一番強く印象に残っているのでしょうか?私にとっては、曹操、劉備、諸葛孔明、関羽及び張飛は最も印象に残った役です。その中でも、曹操及び劉備は特に印象深かったです。なぜならば、彼らはそれぞれ自分のユニックなスタイルを持ち、しかもそれを貫き通 したからです。
例えば、曹操を例に挙げましょう。彼が若い頃、首都洛陽の北部尉(所謂首都警備隊長)に就任早々、四方の門を修繕し、五色の棒を作って門の左右にかけて、おのおの十数本ありました。禁令を犯す者あれば、どんな人であろうと、容赦なく罰しました。
ある時に、当時それこそ泣く子も黙る権勢を誇っていた宦官・蹇碩の叔父を、夜間外出禁止令を破ったとしてためらいもなく処刑しました。ここで私はいとも簡単に書いたのですが、ちょっと想像してみてください。現在風で例えると、一介の自衛隊旅団長のような階級の人間が自民党の大物長老の直系親戚 を殺したようなものです(そのたとえが適切ではないかもしれませんが、そのような力関係でしょう)。「常識」のある人なら、そんなことはやるはずはありません。少なくとも私はそのようなことはしません。間違いなく恨まれるし、今後の出世が絶たされるリスクはあまりにも高いからです。でも曹操はやりました。
勿論、彼がばかでやったわけではありません。十分その辺の利害関係を計算しています。それにしても、彼の行為に思わず拍手を送りたくなるのは私だけでしょうか?いくら計算するとはいえ、逃せばどちらにとっても良かったことを彼が自分のスタイル(ある意味では威信)にかけてそれをやり遂げたわけです。結局、曹操はその件で一躍有名人となり、百姓の心を掴むきっかけともなったようです。
一方、劉備と言えば、曹操の攻撃を受けながらも、領民を捨てずに、あえて彼らを連れて新野から命がらがらで江陵まで逃れてきたストーリはあまりにも有名でしょう。普通 の人なら、領民を連れて移動すると、間違いなく途中で曹操に捕まり、攻撃を受けるのが分かります。劉備は決してばかではないので、その辺も十二分に分かっているでしょう。
では、なぜ彼がそのような愚とも言えるような行動に出たのでしょうか?皆さんは考えたことはありますか?そう、彼も自分のスタイルを貫こうとしているからです。「仁」で知られている劉備はもしその肝要なところ、自分の領民を捨てるのであれば、彼は所詮そこまでの人だったでしょう。劉備が蜀を創設できたのは正しく彼の「仁」によるところが大きかったのではないのでしょうか?一方、曹操も後の魏の基盤を築けたのも彼のスタイルによるところが大きかったと思います。
最初の話題に戻ります。結局経営者、つまりリーダーたるものが最も必要なのは他でもなくユニックさ及びそれを持続する力です。昔はそうでしたが、今となってもなんら変わりません。人間は所詮猿から進化してきたものです。人間の本質はそう簡単には変わりません。
ふっと自分自身のことを思い出します。私は自分の信念を貫き通しているのでしょうか?現時点では、答えは「No」でしょう。でも、以前と比べ、少しずつではありますが、前に向かって進歩していると思います。世界の「王」になるには、やはり「王」スタイルというのは必要でしょうね。