ようやくレポート内容は4月前半のものとなりました。今回は最後の学期である「Mini4の全貌」と題して、毎度おなじみの授業紹介を中心にご報告したいと思います。
■2年目Mini 4 の履修教科
(1) International Finance
【内容】 主に外国為替を取り扱う授業。マクロ金融論・金融危機の概論から始まり、外国為替市場の概要、スポットレート、フォワードレートなどの算定方法、スワップ、オプション理論、外貨建て負債、VaRの算定など、幅広い分野を取り扱う。特に南米と東南アジアの金融危機に関する講義、為替市場におけるあらゆるレートの使用・算定方法の説明に時間を割く。担当のTelmer教授は、3年前にTepper SchoolのLeland Bach Award (学生による評価が最も高かった教授に送られる賞) を受賞している人気教授だ。
【感想】 これまでデリバティブの授業をなんとなく避けてきたのだが、この授業でその方針は断念。一からデリバティブを勉強しなおすことになった。かなり苦労したが、大体の基礎を理解できたことと、アレルギー反応がなくなったことは個人的な収穫。
Telmer教授は特に課題と試験の質がよく、問題自体は非常に単純だが、物事の本質にからむものを多く出題してくれる。講義メモ、教科書、過去問などに必死に取り組むことによって、何とかついていくことができた。終了した今振り返ると、もっとオプションやフィナンシャル・エンジニアリングの授業を履修しておいてもよかったかな・・と感じている(CMUにはこの手の授業が多く用意されている)。
(2) Financial Statements and Fundamental Analysis
【内容】 かなりユニークな財務諸表分析・バリュエーションの授業。財務諸表を「ビジネス」の観点からすべて作り直し、そのうえで分析・バリュエーションを行う授業。具体的には、企業活動を「オペレーション」と「ファイナンス」の二つにわけて、すべての財務諸表を再構成し、詳細な利益・成長分析を実施。企業の戦略に基づく将来予測を各種行い、バリュエーションを実施する。この授業では「DCF法は不完全なもの」とされ、会計上の利益を調整した超過利益をディスカウントして株価を算定する。
【感想】 授業の基礎になっているのは、コロンビア大のPenman教授の教科書。会計情報をフルに活用・調整してバリュエーションを行うアプローチで、米国会計士協会からも表彰・評価されている方法のようだ。
DCF法を否定することから始まるこの授業には最初から驚かされた。が、考えてみれば、EVAや他のコンサルティングファームも単なるキャッシュではない指標を開発している。ファイナンスの授業では、超単純にフリーキャッシュフローを算定することしか殆どしないのに対して、この授業では、「企業価値を表す指標とは何ぞや」という原点にかなりのエネルギーを費やす。会計でもキャッシュでもない、「第三の指標」を自ら算定する。
会計の知識、会社ビジネスの理解、ファイナンスの知識を組み合わせて取り組む・・という感じで、かなり大変な授業だった。が、バリュエーションなどを将来の仕事で使用する人にはおすすめできる授業だと思う。有名なファイナンス理論をそのまま受け入れるのではなしに、「本当にこれでいいのか」を問い詰めて考える機会が与えられる貴重な講義だ。
「そもそもキャッシュフローで本当にいいのか」、「一般の資本市場はキャッシュを見て本当に動いているのか」、「会計情報のどこに齟齬があるのか、どこは信用できないのか」といった重要な質問に正面 から取り組む講義であった。MBAにしては細かすぎる授業とも思ったが、学ぶことが多かった。
■2年目Mini4 の課題攻勢
基本的に毎週2回の課題提出のペース。これまで4科目・5科目を履修してたときよりも格段にワークロードは少ない。が、4~5科目履修していたときは、十分に理解するまで時間を費やすことができず、消化不良の分野も多くあったのに対し、今回は教科書や追加資料まで時間をかけて読める余裕があった。最終学期ということで悔いを残さずに勉強することができた。
■"Posner Center"の建設
完成に近づいたPosner Center
Posner Hall (MBA校舎)の隣に、去年から新しくPosner Centerと呼ばれる建物の工事が進められていた。4月に入ってPosner Centerもほぼ完成に近づき、その概観は写真の通りとなっている。MBA校舎とは内部の廊下でも繋がっており、今後は学生のMeeting Space、ビジネスに関連した書物の図書館などとして使用される予定とのこと。
残念ながら自分が卒業するまでに中に入れるかは微妙だが、概観も綺麗だし、これで教育環境がまた少しでも向上すればと思う。