Campus Report 2002

高橋 邦比呂 to Tepper School of Business, Carnegie Mellon University(全46回)

MBAホルダーへの道

Vol.46 総括(2) 卒業式~MBA取得を目指される方へ(最終回)

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次回に引き続き、MBAレポート総括の第二段になります。最後のMBAレポートとして、卒業式の模様と、僭越ながらこれからMBAを目指される方に少しでもお役に立てればと思い、自分への反省を兼ねながら、「有意義なMBAライフを過ごされるためのコツ」のようなものをお届けしたいと思います。

■卒業式 - これで全工程が終了!

2004年5月15日、とうとうMBAの卒業式を迎えた。当日はあいにくの曇りだったが、卒業生の心はやっと勉強が終わった喜びと、学生生活が終わる寂しさと、そして仕事に向けての期待や夢でいっぱいだ。

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卒業式会場の前で

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雨で結局撮影できなかった集合写真・・

約2時間の卒業式典は、校長の話、ゲストスピーカーの話、教授の表彰式、そして卒業証書の授与式からなる。ゲストスピーカーには、1978年Tepper School卒である Universal Studio Hollywoodの社長兼COOのKurzweil氏が来校。ビジネスにおける定量 分析のアプローチとリーダーシップが、これまでのビジネス人生にどう役立ってきたかを熱烈に語った。

個人的には校長の話が特に印象深かった。「どんなにビジネスで成功しようとも、どんなに高い給与を受けとるようになったとしても、その人に"情熱"がなければ、決して人生において成功できたとは言えない」と訴え、また 「仕事で人生を"消費"するのは最も簡単なことだ、成功する人には必ず高い"バランス感覚"が備わっている、バランスを決して忘れないように」とも訴えた。勉強と就職活動の両面 でプレッシャーを受け続けてきた学生への、素晴らしいはなむけの言葉だったと思う。

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卒業式典の模様

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友人のフアン、レオと

■MBA所得を目指される方へ

以下は自分への反省を込めて、MBA留学を終えて肝要だと感じたことを簡単にまとめたものです。重要度順というわけではなく、これまで感じてきたことを徒然とお書きしていますが、ご参考になれば幸いです。

日本文化、日本の経営のよさを忘れない

MBAに限らず留学や海外長期滞在で陥りやすいのは、欧米の文化や生活に自分自身が染まりすぎてしまうことだと思う。何かと欧米のいい面 ばかりを見てしまい、あるいは日本が何か劣っていると"無意識に"感じてしまうことだ。語弊を招くことを覚悟で述べるなら、何でも「米国的(あるいはビジネススクール的)合理主義、効率主義、個人主義」が、ビジネスあるいはその他の面 で絶対なわけでは決してない。そのことを肝に銘じておくべきだと思う。

前回もお伝えしたとおり、自分はアメリカにわたることによって、短期間ながら客観的に自分のいた日本を見る機会に恵まれた。日本にいるときには、書店からTVから多くのメディアがそろって欧米(特にアメリカ)のビジネスのあり方、文化の潮流を賛美する傾向にあり、それを自分も比較的自然に受け入れていた。しかし、こちらに実際にきてみて、純粋に日本の文化や経営のなかにある大切な点を多く感じ取ることができた。日本を離れてみて、より客観的になることができたと感じる。

ビジネススクールで学ぶことのなかには、よくよく考えてみれば「日本では当たり前のことじゃないか」といった概念がある。「顧客優先」的な議論は、まず個人主義の行き過ぎがあって初めて「そうか」と思う議論である色彩 が強く、日本では一般的には「当然」の議論だ。いろいろなビジネスコンセプトの現実的成熟・浸透度合いは、実は日本のほうがよっぽど進んでいると感じられるものもあるため、そこは冷静に観察したい。他方、日本が改善を求められるのは、国際競争や環境などへの戦略的対応、迅速な行動といった面 だと思う。これらの点は逆にビジネススクールでさして強調されなかったとしても、日本人にとっての重要性は非常に高いものと捉える必要性があると思う。

アメリカや欧州のビジネスの現場、ビジネススクールで学んだ様々な手法や精神的態度を、どう日本で生かすか、そのやり方は我々個々人にゆだねられている。決してそのまま適用すればよいわけではないと思う。だからこそ、日本の文化、経営への理解や感覚を、留学を通 して忘れてしまうのではなく、むしろ敏感に見つめている必要があると感じる。

学生間での交流を深める

ビジネススクールには、講義、ケース討論、ケースコンペ、フィールドスタディ、プロジェクトといった様々なプログラムがあると思う。が、一番学ぶことが多いと感じるのは、そのプログラムや教材そのものからではなく、仲間との議論や交流を通 じてだと思う。どんな授業よりも、ある分野で活躍してきた同級生の何気ない一言の方が、ずっと心に残る。授業に傾倒するより、仲間との交流や議論に重きを置いた方がいいと感じる。

日記をつける

留学の少し前から日記を書き始めた。3年連用の日記帳を使用したのだが、留学前後の自分の姿を客観的に常に見つめることができ、いろいろな意味で役立ったと感じている。特にビジネススクール留学といった短期集中のプログラムの場合、自分の目的意識と日々の歩みを照らし合わせるためにも、日記は役に立つと思う。また、普段は無意識である自分の根底にある価値観などを意識化し、確かめるのにも有用だと思う。

自分にとって特によかったのは、3年間を通じて自分のなかで変わったことと、変わらないことを発見できたことだと思う。特にビジネススクールへの留学前、勉強中、そして卒業を迎えた今日を比べると、物事の見方、自分の将来に対する考え方などが相当変わった。他方、相変わらずの面 も多々あり、3年前の今日の日記に目をやると、まったく同じようなことを書いていたりする。成長しないな・・とガックリくることもあるし、随分変わったと純粋に驚くこともある。また、自分の字体が随分変わったことにも驚いたりした。

毎回授業で一回質問する

面白い授業からつまらない授業まで様々ある。毎回の授業で一回、質問や意見を述べる習慣をつけるといいと思う。授業への理解や意見を(英語で)主張する能力、肝っ玉 が磨かれる。簡単なようで、意外に面倒くさかったりする。最初のころは緊張もする。

自分の尻を叩くために、年間の授業料を授業数で割ってみるといいかもしれない。一回約2時間の授業に何万円払っているか分かる。「何か質問しなければ」との動機付けになる。

語学能力について

留学前、「留学すれば英語のコミュニケーション能力が急速に伸びる」と思っていた。しかし、(自分の場合)そんなに単純じゃなかった。間違いなく伸びるのは、恐らく読み・書き能力だと思う。他方、話す・聞く能力は意外に伸びにくいと感じる。発音もまた然りだ。

自分の場合、結局英語能力が急速に伸びるきっかけになったのは、マネジメントゲームで社長業をやってからであった。チームメートとの議論の進行役、地元企業の役員へのプレゼンテーションといった、かなりプレッシャーの強い修羅場を経験することによって、言語能力が急激に刺激されたのだ。やはり切羽詰まるような状況に置かれないと、なかなか自分は進歩しないものだなぁ、と再確認した。

もう一点、語学能力を上げるのにいいと感じたのは、ネイティブや他の外国人と飲むこと。自分の感情、ジョークを自然に英語として口から出すのは、ビジネスの場で「堅い」英語を話すのとは、使ってる脳ミソの場所がかなり違う気がする。かなり個人的な意見だが、多少のお酒は饒舌にしてくれるついでに、英語能力も伸ばしてくれているような気がする。

「グローバル」 と 「アメリカン」 を明確に分ける

ビジネスに限らず、政治その他の分野で言われることであるが、「グローバルスタンダード」が実質的に「アメリカンスタンダード」を意味するに過ぎないときがある。現実、政治経済の"中心"は見方によってはアメリカかもしれないが、無意識に「アメリカ=グローバル」と考えてしまうことがないよう、注意する必要があると思う。

留学の一つの大きな価値は、「国際的な」感覚を肌に身につけることだと思う。「アメリカ的」なことが必ずしも国際的なことではないことは、言葉ではわかっても、実際には意外に混同されている局面 は多いのではないかと感じる。ビジネススクールで教えられている内容についても然りである。国際人として、ここの区分けを意識しておきたいと思う。

ハードスキル、ソフトスキルについて

ビジネススクールで学べる内容について、よく「ソフトスキル」と「ハードスキル」という区分が用いられる。自分の勝手な定義では、ハードスキルとは講義や教材を通 して「頭を使って」学び身につけることができるものだが、ソフトスキルとはそうできないもの、あるいは「体や気持ちを通 じて」身につけるものである。

ソフトスキルは元来、学校で勉強することは難しい分野だと思う。リーダーシップ論を勉強したからといってリーダーになれるわけは当然ないし、組織論の権威だからといって組織内で自分の地位 やパワーを獲得・保持できる人とは限らないからだ。言い換えるなら、ソフトスキルの多くは「ノウハウ化」するのが困難なものばかりだと感じる。だから、「ビジネススクールに行けばソフトスキルも磨かれる」 という理解や噂には疑問を感ぜざるを得ない。

ソフトスキルを「理解する」ことと「実践する」ことの間の隔たりは相当大きいというか、まったく別 物だと感じる。ビジネススクールでは「論理的理解は実践に役にたつ」と信じて、ソフトスキルのTipsを体系的に勉強するわけだが、むしろ理解が実践を邪魔するときさえあると感じる。人間、左脳だけで動いてたら不自然である。ビジネススクールでソフトスキルを「学ぶ」ことの難しさは、こういった面 にあるのではないだろうか。

ちなみに、ハードスキルは一言で言えば「知識」だ。勉強すれば、その分だけ返ってくる。ハードスキルの取得はビジネススクールでは容易であり、また最も適しているとと思う。努力が報われるものだと思う。

MBAの費用と効果

米国ビジネススクールの授業料(私立)はざっと年間350万円、生活費を入れれば年間500万円はくだらないだろう。2年間で1,000万円以上、家族がいたり住居費用が高ければ(NY, CAなど)1,500万から2,000万円になると思う。さらにその間の機会費用(給料)も含めれば3,000万円以上の投資だ(そして、その間の仕事の"経験"や"出会い"も失う) 。

本当に米国などのビジネススクールに行く価値はあるのか、これは自分に厳しく問う価値のある質問だと思う。この点、国内MBAの取得や他のビジネス養成コースを履修することも有力な選択肢になると思う。

変わりゆく自分の目的意識

のっけから「自分の将来、仕事はこれ」と決めてかかる必要はないと思うが、ある程度の短期的な目的意識は明確にしておいた方がいいと思う。目的は複数あってもいいし、決まりきってなくてもいいが、「今やっていることはどんな位 置づけにあるのか」を意識しているのとしていないのとでは、恐らく学業を通 じて得られるものに大きな差が出てくると思う。

先の日記をつけることとも関連するが、2年間の留学期間の間に、自分の目的意識が今どうあって、またどう変わっているのかを常に意識していると、履修する講義、グループワークやプロジェクトへの姿勢、就職活動への取り組みなどの過程全てに、ポジティブに影響してくると思う。何となく過ごすよりも、やはり「目的はこれ」と意識していた方が、やる気もでる。目的意識はむしろ変わっていくのが当然と思うが、それを意識しておくことが重要だと思う。

インターンの価値

サマーインターンほど仕事についてダイレクトに学べる機会は2年間でなかった。1年間と2年間のMBAプログラムの間に価値の違いがあるとすれば、サマーインターンを経験できるか否かが、重要な違いの一つであることは間違いないと思う。仮に派遣で留学するような場合でも、状況が許す限り、何らかのかたちでインターンをして、経験とネットワークを広げることは極めて有意義であると思う。

ビッグピクチャーを忘れない

どんなビジネスの題材であっても、ファイナンスや戦略、マーケティング、人材云々の話だけでなく、その背景にはもっと大きな政治、法律、経済、文化、科学、軍事等の問題が横たわっている。ビジネススクールで学ぶ内容は、「経営」という範疇で見ればトップレベルの視野を磨く色彩 が強いが、その経営という範疇そのものの背景にある、より社会的な事象、高い視野を磨く機会は意外に少ない(これは恐らく行政大学院などの勉強の範疇かもしれない)。だから、これらの問題意識を自ら日ごろから抱くようにすることが必要だと思う。

これは一般的な政治経済等の事情に通じておくということもそうであるし、例えばある特定のファイナンス理論や戦略論が、国単位 で実行された場合に、どのような政治的・経済的意味合いをもちうるか、といった面 も考える価値があると思う。あるいは特定のビジネスのイッシューが、現在の政治・法規制などにより、どういった影響を受けているか、といった内容を授業、あるいは仲間と議論することが有用であると思う。

■日本へ - 今後の目標

日本に帰ってからは、まずはとにかくガムシャラに仕事に家庭に打ち込むことになる。ビジネスに関して言うならば、自分の目標は、抽象的な言い方になるが 「アメリカで学んだビジネス理論や考え方を、日本的・自分的なやり方に修正して現実に適用していくこと」、またそれによって「実際に何か変化を生み出すこと」 だ。仕事では矛盾や葛藤をどうしても感じることになるが、そこでどう動くか、いつも問われることになると思う。ここからが新たなスタートになるが、前回・今回お伝えしたような「自分にとってのMBA総括」、言い換えるなら新しいスタートの「初志」になるわけだが、これを忘れずにいきたいと思う。

これまでMBAレポートを読んでいただいた皆様、有難うございました。微力ながら、MBAに関心のある方々に少しでも有用な情報をお届けできていればと思い、レポートをお届けしてきました。お役に立てていれば幸いです。また、このような機会を頂いたキャリア・インキュベーション社、荒井社長と担当の武藤様に心より御礼申し上げたいと思います。2年間、本当に有難うございました。

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