ファーレンハイト9/11を観てきた。この映画、アメリカではしばらく前から話題になっているし、日本でも公開とともにたくさんの人が映画館に押し寄せていると聞く。
マイケル・ムーアの監督作品は、このF9/11の他にはボーリングフォーコロンバインを観たことがあるだけなのだが、この人はいったいどういう人なのだろうと、とても興味がある。自分の監督作品には必ず出演しているようだから、出たがりには違いないのだろうが、正義感が強いのかと思いきや、F9/11に関してはちょっと偏見の入った見方をしているようだ。民主党びいきなのかというと、そうでもないようだ(?)が、その割には今佳境の共和党大会に殴りこみをする、などと言っているようだし。
映画自体は、事実の一面しか映し出していないという点において、私にとっては共和党と民主党の足のひっぱりあいの一環にしか見えなかった。だから、アメリカに住みながらもアメリカ大統領選挙からはまるで部外者の私にとってみれば、ちょっと物足りない感の残るものであった。
ところで、映画の中に登場する今回の戦争で美味しい思いをする予定のアメリカ企業の経営者たちのほとんどがMBA取得者だったのは気のせいだろうか?
ビジネスにおけるストラテジーと、戦争におけるストラテジーの最大の違いは継続性が求められるか否かという点だと、授業でも、サマーインターン先でも学んだ。戦争はいつか終わるものだが、ビジネスにおける戦いには終わりがない、と。 しかしブッシュは(彼も某有名MBA取得者である)、いかに戦争を継続させ、軍需産業をはじめその他アメリカ国籍の企業に利益を上げさせ続けるのかに彼の持ちうる、MBAで学んだものももちろん含まれる、全てのストラテジーを注ぎ込んでいるように見受けられる。
アメリカというたくさんの雇用とたくさんのキャッシュを必要とする大国を立ち行かせるための彼のストラテジーは戦争を継続させること、なのだろう。MBAにも色々な使い道があったものだ。しかし、ちょっと片手落ちだと思うのだ。ビジネススクールで最も重要だと教わるはずの、従業員(ここではアメリカ国民)の心に取り入ることが戦争では片手落ちになってしまう。映画にもあったように、国民はいつまでも騙され続けない。もちろん、自分の利益になる限りは騙されたり、騙されたふりもするものだろうが、王様も居ず、貧富の激しいこの国ではよっぽど合理的な手段でない限り、国民全員を満足させるのは至難の技である。誰がやっても。ブッシュじゃなくても。
ただ彼は、もしかしたら最初当選したときからちょっと不運だった上に、あまり賢くないような顔と話し方をしていて、しかも2世だという点において非難されやすい存在だったのかもしれない。更に戦争という、長期的には利益を生みそうもないものによって彼の国民に対するコミットメントを満たそうとしたがために、マイケル・ムーアの餌食になってしまったのかもしれない。
企業経営は政治と似ているとある経営者が言っていた。もしかすると、アメリカ国大統領という世界に一つしかないポジションは、MBA取得者にとってもっともチャレンジングで醍醐味のある職業なのではないだろうか。もし私がアメリカ国民で、立候補するかと言われても、怖がりなのでしないだろうけれど。