Campus Report 2003

関 伸彦 to Sloan School of Management, Massachusett Institute of Technology(全28回)

MBAホルダーへの道

Vol.22 シミュレーション優勝(2回目)と今学期総括

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シミュレーション優勝(2回目)

9月、10月頃の体験記でPyndickという、経済学を教えるSloanの名物教授と、その彼が教えるIndustrial Economicsという授業の話をしたと思いますが、この授業では通常の講義に加えて、10週間に渡ってシミュレーションでの競争も平行して行われます。 このシミュレーションの結果が12月頭の最後の授業で発表されたのですが、そこでも先学期のオペレーションの工場シミュレーションに続いて、なんと80チームのなかで1位 の成績を収める事ができました。今回は、まずはそれについて触れたいと思います。

シミュレーションは、ビール業界を想定したもので、Pricingの考え方とゲーム理論について学べるように設計されています。2人で1チームを形成し、2セクションにまたがって競争を行い、最終的に最も大きな利益をあげたチームが優勝します。3つのチームが1つの業界にアサインされ、直接の競合は同じ業界の他2チームになるのですが、利益の比較は全てのチームで行います。

各チームは、毎週月曜日に価格と生産量を入力します。そして、同業界の3チームの価格によって需要の大小が決定され、最も安いチームの製品から売れていく、というのが主なルールです。合計10週間(10ピリオド)で行われるため、この入力を各チームは10回行うことになります。ユニークなのは、成績の15%はこのシミュレーションで稼いだ利益の大小のみで決定される、ということです。

先学期のオペレーションの工場シミュレーションと違って面白いのは、他チームの価格戦略・生産戦略が自分のチームの利益・在庫にも影響を与えるため、相手チームの出方を伺いながら作戦を決めなくてはならないという点です。

累積の生産量が多くなればなるほどLearning Curveの影響でコストが安くなるという要素も含まれており、「価格を最も安くして大量 に生産し、コストアドバンテージを確立する」というものが基本的な戦略となるのですが、どこかのチームが価格を切り下げ始めると、他のチームも追従して価格競争に突入してしまい、業界全体が沈み、業界全体として他の業界に負けてしまう、という状況になってしまいます(ゲーム理論の要素)。

このため、このシミュレーションの眼目は、いかに他の2チームに一定の価格を保つことで、「価格競争は回避すべし」というシグナルを送りつつ、利益を安定的に確保することが可能な価格を保つか、ということになります。

ただ、シミュレーションを難しくするのは、他チームの戦略の影響を受けることに加え、ランダムな景気の変動により需要のパイ自体も増減することです。このため、景気が悪い時には、価格の切り下げを行うインセンティブがさらに増す、という構造になっており、一定の価格(作戦)を保ち続けることが非常に難しくなっています。

私は、先学期の工場シミュレーションで組んだのと同じ日本人同級生と組むことにしました。今回のシミュレーションでは、需要曲線やLearning Curveなどの仕組みが全て公開されているので、それを基にしてエクセルでモデルを構築し、3チームが同じ価格・生産量 を選択した場合に利益を最大化できる価格・生産量を割り出すなどの準備をして、万全の体制で臨みました。

それでも、ゲームが始まってみると、予想通り(?)他チームが全く予想外の行動を取り(例えば我々より2倍近い価格を設定してきたり)、当初想定していた「業界全体の利益を最大化する価格・生産量 を保つ」という作戦は全く機能しなくなってしまいました。ただ、幸運だったのは、理不尽な作戦を採り続けるチームは、我々のチームに有利に働いていた(要は賢くなかった)、ということでした。

途中で気がついたのは、彼らは価格を低く設定するものの、それに見合った量 を生産しないため、必ず需要の取り漏れが発生しているということでした(他の業界には、価格を大幅に切り下げ、なおかつそれでも吸収できないぐらい大量 に生産を行って、業界自体を沈没させた理不尽なチームもいたようです)。

そこで我々は、最適な価格・生産量よりも、常に少し高めの価格を設定し、少し大目に生産を行うことで、取り漏れ需要を高価格でさらう、という他チームの理不尽さを最大限に活用する作戦に変更しました。

途中までは「それなりには上手くいっている」というぐらいの認識でしたし、シミュレーションが終了した後も、我々のモデルが計算した我々の最終利益を見て「あと一歩届かなかったねー」などと話していました。最終日に結果 のシートが配られても、優勝チームが明確に書いてあるわけでは無いので、ゲーム終了後の他の2チームとのブリーフィング(それまでは誰が競合かは秘密だが、最終日に公開される)で、他チームに「お前達が1位 なんじゃないか?」と指摘されて、初めて1位だったことに気がつきました。

我々のモデルに若干の間違いがあったために、利益が少なめに見積もられてしまっていたようなのです。確かに、結果 のシートをよく見てみると、我々の最終利益と、最も利益を稼いだチームの利益が全く同じでした。さらに、ピリオド毎の結果 を見ると、6週目以降は、1週を除いてトップを快走していたことも分かりました。

先学期の工場シミュレーションでの優勝も気分が良かったのですが、今回はSloanで最も有名な授業のうちの1つ(ビッドの競争率も非常に高い)のシミュレーションでの優勝なので、嬉しさもひとしおです。残念ながら、優勝チームの表彰はおろか、誰が優勝したかの発表もなかったため、多くの人から称えられる、ということは無かったのですが、代わりに成績でAをもらっていたことが最近判明しました。

この授業はやる気のある生徒が集まっているため、クラス中の発言はなかなかできなかったのですが、その状況でAが来た、というのはやはりシミュレーションでの優勝が大きく貢献しているのだと思います。

今学期総括
さて、早いもので4つのうち3つのセメスターが終了してしまいました。今学期はPeter Sengeの授業などをはじめ、非常にバラエティに富んだ授業を受けたわけですが、なんと幸運にも、オールAの成績で終了する事ができました。この段階にもなると、1年の時は気合の入っていた生徒も、就職先が決まったりなどして少しリラックスし始めたためか、いい成績がつきやすくなっている、というのもゲインの1つかもしれません。

さて、授業の内容ですが、前半だけで終了したSengeのリーダーシップに関する授業は、今から振り返ってみると非常に示唆に富んだ内容で、なかなか良い授業であったように思います(受けていた当時は忙しいとしか感じませんでしたが)。もう1つの目玉 だったPyndickのIndustrial Economicsは、授業自体は非常に良く設計されていて、多くのことを学んだと思うのですが、若干アカデミックにより過ぎている傾向があり、その点は当初の期待とは異なることろでした。

Advanced Corporate Financeは、先学期のCorporate Financeと内容に重なりが多く、また講師の質もイマイチだったこともあって「そこそこ」という評価です。但し、やはりFinanceはビジネススクールが教えるのが得意な科目である事もあって、学ぶ事はそれなりにありました。この科目がPre-requisiteとなっている、来学期のM&AとEntrepreneurial Financeに期待です。

Operations Strategyは、内容自体は興味深いものの、これまで製造業を中心にコンサルティングを行ってきた私には若干物足りないものでした。「金融バックグラウンドの方で、オペレーションも理解したい」というような方には、製造業の企業が取り組むべき課題を広範に取り扱っている、という意味において非常に良い科目ですが、「より深く学びたい」「最新のマネジメント手法について学びたい」という人には不満の残る内容なのかもしれません。

3セメスターを終了して感じるのは、やはりビジネススクールで学びやすい科目と、そうでない科目があるということです。前者は、Finance、Accounting、Marketingなど、古くからビジネススクールが取り扱っている科目です。後者は、戦略論、組織論・人事、オペレーション、MOT(Management of Technology)などでしょうか。自分の興味に合致した科目を選ぶ事も重要ですが、その多くの場合は、「より深く学びたい」「最新のマネジメント手法について学びたい」というケースだと思うので、そうするとビジネススクール(少なくともMIT Sloan)の授業では物足りないと感じてしまうかもしれません。

ビジネススクールでは、これまで触れてこなかった、自分にとって未知の領域の科目をとった場合に、得られる効果 が最も大きいと感じています。実際、この方針に従って、来学期にオファーされているMOT系で非常に人気の高いTechnology Strategyは取得を見送り、代わりにMarketing StrategyというMarketing系科目の最上位 にあたる科目を取ることにしました。

最後に、引き続き行っている英語上達の努力ですが、今学期に履修したMITのESL科目Speaking, Listening and Pronunciationという科目は、非常に良いものでした。基本的には発音の仕方とその理論を学ぶのですが、初めて気付かされた事も多く、特にリズムとイントネーションの点で学ぶ事が多かったように思います。この点に関しては、妻も「話し方が少し変わった」と言ってくれています。

さらに良かったのは、講師が日本語も話す韓国人ネイティブだったことです。彼は日本人や韓国人の弱点を良く分かっており、さらに日本語の音も熟知しているので、「日本語のらりるれろは、LとRのどちらでもないので、ちゃんと区別 する事が必要」といったアドバイスももらえることは非常に有用でした。

最後に この体験記を書いている現在は、12月31日の午後6時です。もうすぐで新年(日本は既に新年)になりますが、今年も私の体験記にお付き合い頂き、どうもありがとうございました。来年には、外国人生徒50名ほどを引き連れて、Japan Trekという企画で日本に行きますので、その準備の話などをおいおいしていきたいと思います。それでは、良いお年を!

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