Campus Report 2004

岩瀬 大輔 to Harvard Business School(全16回)

MBAホルダーへの道

Vol.6 新学期スタート

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南米で迎えた新年

ビジネススクール学生の大きな楽しみの一つが、仕事をしているあいだは取ることができなかった長い休みを活かした旅行。HBSでは学生の手によって各種のトレック(旅行)が企画されるが、これは二つのタイプに分かれる。

一つは就職活動を主な目的としたもので、サンクスギビングの休暇を使って行なわれたヨーロッパ・トレックや、新年明けにカリフォルニア現地集合で行なわれる西海岸トレック、あるいは、香港と上海の企業を訪問するチャイナ・トレックなど。他方は主に観光を目的とするもので、南アフリカトレックや、僕が今回参加したアルゼンチンなど。ちなみに、毎年5月に行われるジャパン・トレックも、ソニーやトヨタなど会社訪問が若干含まれるものの、後者の部類に属する。

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12月半ばから今月上旬までの冬休み、2週間強をアルゼンチンで過ごした。20世紀初頭には南米のパリと言われたブエノスアイレス、ブラジル・パラグアイとの国境に位 置するイグアズの滝、山と湖がきれいなバリローチェ、そして氷河が残るカラファテ。一つの国とは思えないほど、実に彩 り豊かな風景を見ることができた。

しかし、陽射しが強く、夜も日が長い異国の地でタンゴを見ながら迎えた正月は、なんだか拍子抜けした気分で、いまだに新しい年を迎えた気になれない。やはり、日本人はこたつ+紅白+年越し蕎麦、このうちの少なくとも2つ以上がないと、思う残すことなく年を越せないということだろうか。

新学期スタート

そんな冬休みが明け、新学期も3週目を終えた。新しい科目と教授、そして新しい座席に馴染めずに続いていたぎこちない日々も、ようやく落ち着こうとしている。たかが席替えと思われるかも知れないが、授業の発言で成績の50%が決まってしまうHBSでは、どの席で1学期を過ごすかが大きな意味合いを持つ。半円形、シアター風の教室では、座る位 置によって教室の風景や、教授からの注目具合、ひいては授業の参加スタイルも変わってくる。

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僕は秋学期は教室中央、前から3列目という恵まれたにいたため、発言の間合いがつかみやすかったが、今学期は最上段、右端から2人目に移動したため、教授が教室の反対側を向いているときは完全な死角となってしまう。教授それぞれに癖があるので、それぞれの科目でどのような参加の仕方をするか見極めるのに、数週間はかかってしまうというわけだ。

そして、この日記を書いている1月末時点では、今学期行なわれる6科目中4科目が開講した。

まず、Leadership and Corporate Accountability (LCA)。これまで短期の講義として行なわれていたbusiness ethicsの授業だが、昨年から全30回の本格的なコースとして始められた。いかにしてビジネス上の意思決定を、経済性の観点だけでなく、法務上のコンプライアンス、そして広義のethicsの面 からバランスよく行なっていくか、著名なケースを題材に議論していく。教授陣も多種なバックグランドを持つ経験豊かな人材が並び、ポスト・エンロン時代にHBSが自信を持って送り出す、リーダー教育の目玉 講座だ。

個人的には、各ケースで無難な落としどころを探ろうとするのではなく、経済性よりもprinciples, ethicsを重視した判断をしたらどうなるか、一度大きく揺さぶってみて、今後のキャリアにおいて自分がどのように判断をしていきたいか、指針となるものを作ろうとしている。このコースについては、もう少し詳しく後述した。

次に、Business, Government and International Economy (BGIE)、通 称ビギー。マクロ経済の基本ツールと、経済政策の大きなトピックを議論していく。コースはドイツのハイパーインフレーション、1920年代の金本位 制に始まり、最近では米国における大恐慌や1930年代の金融危機、ニクソン大統領の政策などを議論した。多少素養がある者にとっては議論が簡単すぎることもあるが、腰をすえて幅広く国際政治経済をおさらいするにはいい機会だ。

今後はヨーロッパ諸国や中国やインドに加え、シンガポール・マレーシアなどのアジア諸国、メキシコなどの南米諸国、さらには南アフリカなどのについても見ていくことになる。この授業では、いつもは大人しいinternational studentsもここぞとばかりに発言し、活躍している。

そして、Finance II (FIN2)。秋学期のFinance Iを受けて、より複雑なプロジェクトのバリュエーションの手法を学んでいく。担当のBergstresser教授は30代前半と若いが、早いテンポの授業と鋭い切り返しで学生の信頼を得ており、評判はよい。これまで実務で何気なく使っていた手法を、改めて理論の裏づけを身につけ、手を動かして練習することになり、これまた興味深く参加している。

最後に、Strategy (STRAT)。この授業は先週から始まったばかりで、まだサプライカーブやコスト分析など、基本的なツールを練習するケースを2、3回取り扱っただけ。担当のYao教授はWhartonで教えていたそうなのだが、途中FTC(連邦公正取引委員会)で働いていたという経歴は面 白い。

2回目の講義で扱ったヤマト運輸のケースでは、「実際に使ったことがある人に、どういうサービスなのか聞いてみよう」ということで、僕が冒頭に当てられた。最近になっては米国でもFedExなどがほぼ同様の決め細やかなサービスを手がけているので、アメリカ人にとってもことさら目新しい特徴があるのか分からない。

ヤマトが郵政の規制と戦いつつ発展してきたこと、郵便局まで行かなくても近所の酒屋やコンビニに荷物を預けられるのが便利であること、日本では多くの人が電車でスキーに行くことからスキー宅急便も流行っていることを説明した上で、これが最大のポイントだと念を押した上で、「クロネコヤマトの宅急便~♪」と心をこめて唄ってあげたところ、大うけだった。同社がいかにhousehold nameであるかということを伝えたかったのだが。

残る2つの科目、Entrepreneurial Manager、Negotiationsは2月の休み明けに始まる。これらについては、次回以降にまた取り上げたい。

守るべきprincipleとは

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1月22日の土曜から日曜にかけて、何10年に一度という大雪によって、ボストンの街は雪ですっぽり覆われてしまった。我が家はduplexといって、3階建の家が縦で2軒に分かれているのだが、お隣さんと協力して裏の駐車場に雪かきを行なった。近所のメキシコ人のおばさんからスノー・ブローアーという雪かき専用機を借りることができたが、それでも腰の高さまで積もった雪を掻き分けていくのは大仕事。お陰で、数日間背中と腰が痛かった。

翌月曜日はハーバード大学全体が休校となったのだが、ビジネススクールだけは別 扱いで、授業は通常通り行なわれた。全体の7~8割がオンキャンパスのレジデンスに住んでいるのだから、言い訳はできない。オフキャンパスの学生は各自の判断によって欠席が認められていたものの、セクションメイトのほとんどが参加して授業が行なわれるとなると、心理的には休みづらい。結果 的に、ほぼ全員が登校してきた。この日に行なわれたLCAの授業が印象深かったので、ここで本コースについてもう少し詳しく説明したい。

結果的に「きわどい」判断が要求されるようなビジネス上の判断には、短期・長期的に企業の収益にとってどのような判断が望ましいかという点に加えて、何が法律的に認められているかという法務面 と、自分の信条や倫理的な判断に何が合致するかという個人的な「軸」と照らした判断が要求される。HBSもナイーブではないので、小学校の道徳の授業のように、講義を通 じて倫理の類が教えられるとは考えていない。

しかし、実際に企業倫理が問題となった具体的なケースを疑似体験することを通 じて、必ずしも理解していないような法律的な知識をきちんと植えつけるとともに、個人の考え方を議論を通 じてチャレンジしていくことによって、将来ジェネラル・マネージャーとして類似した状況に直面 したときに、よりよい判断を下すことができるよう、自分なりの信念を構築していく機会を与えてくれる。

本コースは大きく8つのモジュールに分かれている。
1. 投資家への責任
2. 顧客への責任
3. 従業員・サプライヤーへの責任
4. 公共・社会への責任
5. 外部からのガバナンス
6. 内部のガバナンス
7. リーダーシップと個人の価値観
8. まとめ

去年の夏、HBSに来たばかりの頃であれば、この授業で自分の意見を述べることは難しかったように思う。あったとしても、きわめて戦略的・技術的な解決方法、その場のしのぎ方を述べるくらいだろうか。しかし、これまで考えてきたこと、友人とのinteractionを通 じて、少しずつ自分なりの「軸」らしいものができ始めたような気がする。

月曜日のケースの舞台は投資銀行のトレーディングフロア。凄腕上司の指示で、顧客をミスリードするような資料をファックスすることを要求される新入社員の話。複雑な為替の先物取引であるのをいいことに、不当な利ざやを得ようとするが、顧客が疑い始めている。そこで、彼らが納得するような、実は本件には該当しないような間違っている資料をファックスするよう指示されているわけだ。

皆は、いかに自分のポジションを守りつつ、会社にとっての儲けを確保することができるか、上手に「落としどころ」を探そうとする。反対の人も、短気なトレーダーの上司に首にされないよう、どうやって自分の職を守ろうか、そんな視点から議論している。ちょっと違うんじゃないの、そう思って授業の後半で手をあげた。

*****

これまでの発言を聞いていてもそうだけれど、僕たちはついつい、tacticalに意思決定をしがちだ。でも、自分のよりどころとなるprinciple, valuesを持たずに、そうやってその場その場での判断をしようとしていると、本当にグレーな問題に直面 したときに、誤った決定をしてしまうのではないか。これまで見てきた大きな企業スキャンダルも、その場しのぎの判断の積み重ねの結果 として起こったように思える。  

僕が言ってることがナイーブだと思わないで欲しい。僕も22才の新米アナリストだったら、落としどころを探し、誰よりも上手に立ち振る舞うことができたと思う。でも30近くになって、この学校で教育を受けてきた今の自分は、自信を持って言うことができる。指示されたことはできません、それは自分のprincipleに反するから。僕はもう何らかのパズルを解くように最適解を見つけようとするのは辞めて、自分の明確なprinciple、ぶれない軸に基づいて、胸を晴れるような判断をできるようになりたい。

*****

これらの考えは、これまでHBSで出会った友人に触発されてきたところが大きい。必ずしも100%自分のものにできたわけではなく、上のように力強く発言したのも、自分に言い聞かせる意味もあったのだと思う。しかし、この2年間が終わったときに、一つ学んだことがあったとしたら、自分の明確な信念と価値観を持って、自分自身のありたい姿に忠実に生きていくことができるようになった、そう胸を張って言えるようになりたい。

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