学部を卒業して就職してからのここ7年間、クリスマスといえば仕事で華やかなことは皆無だった。私が働いていたマスコミ業界は年末年始も関係なく新聞を製作し、雑誌を発行する半面 、秋が深まるころから前倒しで編集作業を進め、年末年始は最小限の人数が出勤すればいいような態勢を整える。これがいわゆる「年末進行」というもので、クリスマス前後は、通 常の半分以下の人員で倍以上の仕事をこなさなければいけないという修羅場真っ只中だったのだ。
しかし今や学生の身分、遂に地獄の年末進行から解放された私は、「今年こそ華やかなクリスマスを」と楽しみにしていた。華やかといっても別 にイヴニングドレスを着てパーティに、なんて分不相応なことを願っていたのではなく、単に親しい人と美味しい料理を前に楽しい時間を過ごしたいだけだった。
しかしそんなささやかな願いすら、3つのレポートと2つのグループワークの前に見事に打ち砕かれた。昨年末の私のスケジュールは、働いていたとき以上の過密スケジュールで、次々と襲い掛かる締め切りをひたすらこなしていく日々が続いた。ようやく一息ついたのは12月30日の朝、大晦日締め切りのレポートを郵便局から速達で発送した瞬間――という、何とも情けない有様で、例年通 りあわただしい年の瀬を過ごす羽目になった。
こうして考えてみると、「学生は気楽な身分」というのはビジネススクールには当てはまらないのではないかという考えにいきつく。しばしば会社員時代の先輩や同僚から「学生で毎日楽しいでしょう」と言われるが、とんでもない! 働いていたときとそんなに変わらないほど多忙な毎日で、毎月のお給料がない上に高額の授業料を支払うのだから。
さて新年を迎えて、今年は修士論文が生活の中心になりそうだが、それ以外にもいくつか目標を定めた。ここで書いてしまうと例年通 り「有限不実行」になってしまうので詳細は伏せておくが、ともかく修士論文の準備や引き続きの勉強以外に、やはり学生の今しかできないことをしようと考えている。
周囲を見渡していると既に起業した同期、起業に向けて準備に勤しむグループ、希望する業界の一企業でインターン中の友人など、さまざまな形で学生の今しかできないことに取り組んでいる。毎日の授業をこなすだけで精一杯というわが身を省みて、反省することしきりである。
会社員からビジネススクールに入学する人が大半だと思うが、入学前は業務の引継ぎで多忙を極めることに加えて、ビジネススクールでの勉強に対する不安や期待が大きいため、在学中にやりたいことをじっくり考える時間がない人が多いのではないだろうか。かくいう私もその一人で、勉強はもちろんのこと、在学中の二年間に学生時代にしかできないことを何か一つ、という思いはありながら、入学前はそれをじっくり考える時間はなく、入学してから考えればいいと思っていた。
しかし実際入学してみると、慣れない学生生活に加えて学部時代とは全く異なる量 と質を求められるビジネススクールの講義についていくのが精一杯。そんなことをゆっくり考える余裕は、会社員時代よりもはるかに少なかった。
そろそろ入学試験の結果も出揃い、4月からのビジネススクール進学に向けて業務の整理や予習を始めている方も多いと思う。もし「学生時代にしかできないことを何かしたい」と思っているならば、今からその準備を始めることをお薦めしたい。日々の課題に追われて早くも院生生活10ヶ月が過ぎてしまったことを心底残念に思う、私の実感だ。