Campus Report 2003

菊澤 桂 to NYU Stern School of Business(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.20 誰もヒューマンライツと言わない

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プロフェッショナルリスポンシビリティーというクラスがある。いわゆる道徳のクラスだ。エンロン、ワールドコム以降どこのビジネススクールでも、今後間違いのないように、ということで~何しろ間違った決断を下す役職に着きそうな可能性のある人たちの集まりだから、ここを押さえておけば間違いの起きる確率はいくらか減るかもしれない~どこの学校も作っていると思われる。それに自分の学校の卒業生が間違いを犯すと、将来の学校の名声にもかかわってきてしまうので。

ここNYUでもプロフェッショナルリスポンシビリティーは必修科目になっている。ただし専門の教授が用意されているわけではなく、その辺の教授―主にファイナンスの教授の何人かが担当する。ビジネススクールで学ぶ道徳と言えば、Corporate Governanceに根ざしたものがほとんどであるので、ファイナンスの教授が教えることになんら疑問は感じない。全員が、私の親友の言葉を借りれば、"Some how pretentious"(どこか不自然に無理をして)教えている、ということを除いては。

私たちのクラスの教授は、コミュニケーションの教授ということになっているが、この道徳のクラス以外では見かけたことがない。唯一、このクラスのためにいる教授と言えるかも知れない。彼は今年度以降この授業をどのように行っていくかを検討する任務を担っているらしく、私たちのクラスはエクスペリメンタルクラスということになっている(今年は彼が教えている3クラスのうち、一つだけを実験クラスに割り当てている)。

授業外であまり意味のないその教授主催の道徳イベントに参加させられたり、その感想文を書かされたり、ゲストスピーカーがいなかったり、テキストが無いかわり、授業前日の夜に翌日のリーディングマテリアルが送られてきて困ったり、ちょっと損したな、という気になるけれど、まあとりたてて騒ぐほどのことでもない。

しかしクラスでのディスカッションには何というか、呆然としてしまうことが多い。今日の議題はアンゴラの石油採掘会社。アメリカ資本の国際会社だ。この会社にていかにアンゴラ人とアメリカ人の従業員が異なる待遇を受けているか、というもの。

たとえば、アメリカ人が作業中に指を切り落とす怪我をした場合、ルアンダまでヘリコプターで運ばれ、指を元に戻す手術を施されるが、アンゴラ人の場合、その場で指を切り落とす処置をされる。その他、社員食堂が別 々で、出されるものがまったく違う等、不平等のエトセトラ、エトセトラ。ここで教授はさてどう思う、と問う。私がおかしいな、と思うのは、誰もヒューマンライツという言葉すら持ち出さないことだ。代表的な意見は、アンゴラ人とアメリカ人の医療に対する期待値が違うから当然だ、企業は営利団体であるから、従業員とそれ以外、国境、どこかで保障の内容に線を引かなければいけない、スキルの差だから当然だ、というもの。

そこで教授が持ち出したのが、「Rights」だ。「HumanRightsとPoliticalRights」。ポリティカルライツはその国から授けられるもの。どれだけの執行力を持つかはその国がどれだけ力を持っているかということにかかっている。逆にヒューマンライツは誰に授けられるものでもない。当たり前だ。ここに「RightsArbitrage」 が成立する、と言う。そのコンセプトはわかるが、それだけで済ませていいものだろうか。

それに、経済活動のArbitrageでは誰も傷つかない。さらに教授は一枚のハンドアウトをひらり、と取り出す。国連のリポート、Global & US Stats in 2000である。人口、GDP、等の情報だ。彼のポイントは、日本とアメリカのGDPはあわせて全世界の40%であるから、世界がどれだけ不公平であるか、ということ(このメジャーにGDPを使うことの是非は問わない)。また、どれだけPoliticalRightsが強い国に偏っているか。それはともかく、これらの世界の基本情報を今まで見たことのないアメリカ人の学生の多さに驚かされる。少なくとも日本人は小学校でも中学校でも目にしている。外国からの学生のほとんどがあきれている。

今までは、何てレベルの低い授業だろう、どうしてMBAまで来てこんな授業を取らなければいけないのだろう、と思っていたけれど、全学生の6割強がこの状況では、せめてもこの授業を必須にしなければいけないのだろう。たとえ残り4割のインターナショナルがあきれかえってしまったとしても。この6割がグローバル企業のGMクラスになり、将来PoliticalRightsの低い国における事業の決断を下す可能性は、まあ、高いほうなのだから。

けれども、学校はヒューマンライツとポリティカルライツのArbitrageを正しく見極められるかということより先に、世界中で通 用するヒューマンライツの定義を自分の中に持てるように教えるべきではないだろうか?それとも私たちがファイナンススクールだからなにもかも"Arbitrage"で済ましてしまっているのだろうか?

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