2004年10月から、2005年2月初旬までの秋学期を振り返ると長沢伸也教授の「新商品開発」、私の指導教官でもある東出浩教助教授の「リスクファイナンス」の2つが私の生活の中心だった。ともにグループワークで時間の拘束が長く、負担感が非常に強いものであったが、履修を終えた今となっては、非常に有益なクラスだったと思うので、その概要を紹介しよう。今回は特に長沢伸也教授の「新商品開発」についてお話する。
まず長沢伸也教授の「新商品開発」は、金曜日の講義ということもあり、MBAの学生だけでなくMOTの学生も多いクラスだった。このクラスでは既に市場で実績がある新規事業・新商品開発のためのマーケティングの手法を実際に演習し、最終的には新商品の形にしてプレゼンを行った。
ここで扱うマーケティングの手法とは従来のグループインタビュー、アンケート調査から、ポジショニング分析、コンジョイント分析といった多変量 解析まで幅広く、文系の私にはなじみの薄いものであったけれども、修士論文でquantitative researchを行うことを視野に入れていることもあって、得るものが多かった。
具体的には、私たちのチーム「まろ茶」チームが開発を行ったのは歯磨き粉の新商品で、アンケート調査や、解析の結果 、新商品の特性案として下記の7点が浮かび上がった。
1)サプリメント(ビタミン、ミネラル入り)
2)安眠効果
3)ムース状
4)ポンプ式容器(詰め替え可)
5)お茶味(茶カテキン)
6)漢方(漢方エキス配合)
7)価格は200-380円以内
これらすべての特性を内包する新商品がベストだろうが、コストの関係もありそれは難しい。そこでこの7点について最適な組み合わせを知ろうとすると各項目のシンメトリー、2の7乗=128通 りの商品案について調べなくては いけなくなり、回答者も何がなんだか分からなる。そこで用いるのがコンジョイント分析だった。
コンジョイント分析とは...
私たちが何かの商品を購入をするとき、単に価格や性能といった単独の特性によって評価するケースは稀で、「価格」+「性能」+「スタイル」に、「メーカー」のイメージなどを総合して、最終的に製品の評価として購入するか判断をしているものだ。それと同じように、コンジョイント分析はいくつかの特性を分解し各々相対的に評価してもらうことにより、最適な特性の組み合わせを見つけるものである。 具体的には、特性を組み合わせて作った商品案10個を、買いたい順位 に並び替えていただいて、そのデータを解析した。
その結果、
(1)最も選好に影響があるのは、安眠効果の有無で、安眠効果 がある方が好まれている。(安眠効果の効用値0.434) ⇒「安眠効果あり」を採用 |
(2)次に影響が大きいのは漢方あり/なしの属性であり、漢方ありの属性が好まれている。(漢方の効用値0.171) ⇒「漢方あり」を採用 |
(3)第三に影響が大きいのはムース状/ペースト状の属性であり、ペースト上の属性が好まれている。この結果は、新規性が高いムース状はあまり好まれなかったという点で興味深い。(ムース状/ペースト状の効用値0.132) ⇒「ペースト状」を採用 |
(4)次に影響が大きいのは、パッケージがポンプ式/チューブ式の属性であり、ポンプ式の方が好まれている。(ポンプ式/チューブ式の効用値0.118) ⇒「ポンプ式」を採用 |
(5)価格は380円より200円の方が好まれている。(380円/200円の効用値0.092) ⇒「200円」を採用 |
(6)次に影響が大きいには、お茶味/ミント味の属性であり、お茶味の方が好まれている。(お茶味/ミント味の効用値0.053) ⇒「お茶味」を採用 |
(7)サプリメント(ビタミン・ミネラル)の配合の有無はほとんど選好に影響を与えていない。(サプリメントあり/なしの効用値0.000) ⇒サプリメントは影響がないため「サプリメントなし」を採用 |
となり、私たちの新商品は
パッケージ:ポンプ式(詰め替え可)
中身:ペースト状
味:お茶味
効用:漢方配合
効果:安眠効果あり
価格:200円(実勢価格)
という歯磨き粉「オリエンタルグリーン」となった。
マスコミ時代のコネでプロのイラストレーターに依頼してパッケージのイメージイラストや、CM案も作り、挙句には動画CMまで作成してプレゼンは大変盛り上がった。
この演習で学んだ手法や考え方は、大学院修了後、またマスコミに戻って新媒体の開発に携わりたいと考えている私には、すぐに使える実践的なものであり、それは同じく履修した他の学生も同じ意見だった。まさビジネススクールらしいクラスの一つだったと、非常に満足している。
次回はリスクファイナンスについてお話しよう。