私の指導教官でもある東出浩教助教授の「リスクファイナンス」はWBSの中でも有数の難関講義といわれている。東出先生ご自身は非常にフェアなお人柄で、むやみに無理難題をおっしゃる方ではないのだが、まずテキストが非常に分厚く、しかもその大半が英語なのだ。指導教官ということもあり必ず履修しようと思っていたが、テキストを受け取った瞬間、激しい後悔に襲われたのも事実だ。講義は月曜1限だったが、予習をするだけで土日がつぶれる勢いだった。
このクラスでは、ベンチャーキャピタル側、またベンチャーキャピタルから資金を受ける側になった場合の実際のビジネスを学ぶ。そこにはエージェンシーセオリー(プリンシパル(依頼人)がエージェント(代理人)の行動を監視できない状況下で、エージェントに約束を実行させる最適な契約形態を明らかにすることを目的とする理論)や、未公開企業の株価算出法なども含まれる。
そしてこのクラスは期末に各グループごとにビジネスプランを発表する。これは東出助教授をベンチャーキャピタリストと見立てて、出資してもらうことを目的にするもので、当然早期にIPOすることを視野に入れてビジネスプランを作らなければいけない。また希望者はAsia Moot Competition というアジアのMBA学生を対象にしたビジネスプランコンテストの学内選考に参加することも可能だ。
私たちのグループはMOOTの選考参加を希望し、グローバルに受け入れられ、かつ資金の大量 注入を得られそうなビジネスプランを描くため、2004年の10月ごろから週1回のミーティングを重ね、最終的にはコンテンツビジネスに事業ドメインを定めてビジネスプランを作った。MOOTの選考は英語で行われるため、つたない英語を必死で操り、リスクファイナンスで学んださまざまなファイナンスの知識を総動員して選考の日を迎えた。
選考日の前日は全員徹夜で、MSNメッセンジャーをつないで、チャットしながら最後の最後までスライドを作り続けた。しかし選考の場では英語での質疑応答に四苦八苦、残念ながら選考には漏れた。後日、教授にうかがったところ、最後の最後まで残ったそうだが、オペレーションのプランが甘く、選考に漏れたそうだ。反省しきりである。
とはいえ、この経験は非常に有益なものだった。チーム全員のキャリアを生かし、世界中のデータをかき集め、ビジネスプランを組み立てていく過程はエキサイティングだった。そしてまた懲りもせず、来年ももう一度挑戦しようと誓い合っている。