Campus Report 2004

岩瀬 大輔 to Harvard Business School(全16回)

MBAホルダーへの道

Vol.8 Class of 2007登場

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長い長い冬が明け、すっかり春らしい陽射しが眩しい4月半ばのある週末、"Admitted Students' Weekend"なるイベントに参加すべく、今秋に入学予定のClass of 2007の学生(まだ社会人だが)とその家族が数百名、HBSのキャンパスに集まった。昨年のちょうどこの時期、僕も仕事を休んでボストンを訪れたことを思い出す。新しい生活に胸を躍らせながら、各種プレゼンテーションに出席し、出会いの握手を次々と交わし、3軒ほど借家を歩き回った。あれからもう1年が経ってしまったのかと思うと、感慨深い。これまで過ごしてきた8ヶ月間、1年前の自分がみたら、どのように感じるだろうか?

日本からの合格者は、これまで確定している人たちで15名。このうち12名がHBSに入学の意思を表明している(2名が他校へ、1名がMBA留学を取りやめ)。日本人の在校生は僕らのClass of 2006が9名、Class of 2005が13名なので、人数でいえばここ数年で最大になる可能性が高い。日々、HBSにおける日本のプレゼンス向上を願う立場からは、嬉しい限りだ。このMBA日記を読まれている皆さんも、ぜひチャレンジして頂きたい。ちなみに、彼らの出身母体の内訳は、以下の通 り:
・ 総合商社:5名
・ メーカー:3名
・ 政府系金融機関:2名
・ コンサルティング:1名
・ 医師:1名

今回はボストンにやってきた6名を我が家に招き、在校生とともに大宴会を行なった。明るくエネルギッシュで、チャーミングな人材が揃っていることに、さすがにHBSのアドミッションもよく選んでいるなぁと感心するとともに、商社勢の芸達者ぶりには改めて日本人として誇らしく思えた。彼らと秋からここボストンの地でともに過ごすのが、今から楽しみになってきた。あとは、ラウンド3で面 接を受けている後輩が2名ほどいる。彼らが合格通知を手にすることができることを、祈るばかりだ。

日本に行こう ~ ジャパン・トリップ

例年、多くのビジネススクールで在校生を日本に連れていく視察旅行、いわゆるジャパン・トリップが行なわれている。我々も、5月21日から30日のスケジュールで、史上最大の145名による旅行を企画している。1年生900名のうち90名、約1割が参加することになっている。滞在中は東京の名所探検に始まり、小泉首相の表敬訪問、ソニー出井会長・セブンイレブン鈴木会長による講演、箱根での温泉と浴衣での宴会体験、トヨタの工場見学、京都・広島観光などを予定している。これらに加えて、相撲や屋形船、深夜の歌舞伎町探索など、日本らしさをみてもらおうと、色々考えている。

準備もいよいよ大詰めを迎えており、先日、寿司とビールを振舞った盛大なキックオフパーティを行ない、旅程やオプショナルツアーの説明、日本でのマナーの実演(ハリセンも活用)、さらに和式の宴会芸の披露と、順調なスタートを切った。気がつけば、去年の7月に日本を発って以来の帰国となる。大きなグループの引率のため、ほとんど個人で動く時間はなさそうだが、それでも久々に東京に戻り、友人らに会えるかと思うと、今から楽しみだ。

HBSはインターナショナルか?

HBSのMBAプログラムは1学年900名と、世界のビジネススクールのなかでも最大級。このうち35%が米国外の国籍を持つ、いわゆるインターナショナル・スチューデントとされている。例えば、僕が所属するセクションJ、90名のインターナショナル・スチューデントの国籍分布を見てみると、以下の通 り:
・ アジア:インド×7名、香港×2名、中国、日本、韓国、マレーシア、インドネシア、オーストラリア
・ 欧州:イギリス、アイルランド、スペイン×2名、チェコ、ブルガリア、ウクライナ、トルコ
・ 米州:メキシコ、アルゼンチン、ペルー、チリ、ブラジル、カナダ×4名

インターナショナルといっても、ほとんどの学生が英語圏で生活をしたことがある。セクションJで英語がさほど上手でないのは、南米勢と韓国・中国人くらいか。中国勢はここ数年、米国政府のヴィザ政策が厳しくなったことを受けて、減っているようだが、インド出身の学生の多さには驚かされる。この7名に加えて、アメリカ国籍を持つインド系の学生が2名。90名のクラスの1割がインド出身ということになる。大国として浮上しつつある同国には、今後も目が話せないということだろうか。

最近のBGIEのケースでは、NAFTAやWTOなどの貿易問題から、メキシコやマレーシアを題材とした資本規制の問題など、様々なイシューを取り上げ、各国出身者によって熱く議論が交わされている。京都議定書を中心に温暖化問題を取り扱ったケースでは、南部出身者がブッシュの立場を擁護し、本議定書は削減目標が非現実的であることと、インドと中国に除外規定が認められている点など、署名するに値しないと非難した。すると、インドと中国出身の学生は猛反発。気心知れた者同士なので、あとくされなく激しい議論をできるのが、1年間を同じメンバーで過ごすセクション方式のメリットだ。

そして、ストラテジーの最終ケースではビジネスとしてのHBSを取り上げ、ビジネススクール業界の競争環境から、HBSのグローバル戦略を議論した。例えばWhartonはINSEADと提携して、フィラデルフィアとフランス・シンガポールのキャンパスを行き来できるよう、国際化というテーマに積極的に取り組んでいる。それでは、HBSはどうか?このままでいいのか?僕は、HBSは国際化という点からは、動きが遅いと感じている。クラスの3分の1が外国人だが、ほとんどは米系のコンサルティング会社か投資銀行出身者。米国外の企業ケースもぱらぱらとあるものの、本腰を入れて国際化というテーマに取り組んでいるとは思えない。

これ以上海外のケースをやりたいと思う?そんな挑発的な発言をするアメリカ人がいたので、言い返してみた。僕はHBSがインターナショナルな学校であるとは、まったく思わない。あくまで、アメリカ人によるアメリカ人のための教育機関であり、それに我々外国人が参加させてもらっている、そういう気がする。このままでいいのか?考えるためには、少し長期でイメージしてみる必要がある。

例えば、30~50年後に、今のようなアメリカ企業によるドミナンスが崩れ、欧州や中国・インドなど、アジア勢が世界で重要な役割を占めるようになったとする。これらの企業の経営幹部がINSEAD出身者で占められていて、HBSは取り残されている、それでもいいのか?もちろん、戦略にはトレードオフがつきものであり、HBSはあくまで米国出身、そういう割り切るのも一つの選択。しかし、今の米国勢の覇権が無条件に続く、そう考えるのは、我々がこれまでのケースで非難してきた、多くの企業と同じcomplacencyに他ならないのではないか?

アントレプレナーシップを養う

2月半ばから始まったEntrepreneurship Managerの授業も、残すところあと数回となった。HBSの卒業生の調査によると、卒業5年後には約3分の1がオーナーであるか、事業の大株主となっており、卒業10年後になるとこの数は50%以上に上がるそうだ。僕自身はといえば、卒業したらいっちょ起業でもするか、そんな野心をもって渡米したのだが、ここのところはすっかりそんな熱も冷めてしまっている。しかし、このコースを受けて、アントレプレナーシップはビジネスの進め方を指すのであり、必ずしも「起業」が必要条件であるわけではない、そんなことを学んでいる。それぞれのキャリアのなかで、アントレプレナー精神を発揮しながら仕事をすることは、可能なのだ。シュンペーターの「創造的破壊」の概念を引き合いに出すまでもなく、アントレプレナーシップは一部のベンチャー企業に限られたものではなく、日々のビジネスのなかでも必要とされているものなのだ。

HBSではアントレプレナーシップを、(起業のような)経済的な機能や、個人の特性ではなく、マネジメントの一方法である、と位 置づけたうえで、以下のように定義している:
"Entrepreneurship is the relentless pursuit of opportunity, beyond resources currently controlled"
つまり、手元にある(人的・物的・経済的)資源にこだわることなく、発見した事業機会に向かって飽くなき追求を行なう、という営みであると定義しているわけだ。そして、アントレプレナーをとりまく環境として、高い不確実性、急成長、劇的な環境の変化、そして限られた資源、といった特徴を掲げている。

そして、授業で取り扱った内容も多岐に渡り、極めて実践的なものとなった。例えば、対象とした企業はバイオテクノロジーやソフトウェアのベンチャー企業だけでなく、ゴルフクラブ、シャンプー、コーヒーメーカー、ボードゲーム、レンタカー、ラーメン屋、洗車機、育児雑誌、ひいてはインドの眼科病院チェーンまで。起業もしていないビジネスプランの段階の企業から、IPOや売却寸前の企業、成熟企業のLBO、大企業内における新規事業なども取り扱った。いずれの状況にも共通 するのは、高い不確実性と環境変化、そして限られた資源、そういった環境下で、いかに企業を成長させていくか、といったことだ。

実務的な内容としては、退職した企業と結んだ秘密保持契約や競合避止義務の契約書、株式会社とLLCの違い、VCと交渉するタームシートといったテクニカルな内容から、ビジネスモデルの評価の仕方、ビジネスプランの書き方、資金調達の実務、成長途上のベンチャーが直面 するオペレーション・組織上の課題、そしてエグジットの仕方など。自分の今後のキャリアにも、役立てられるとよいのだが。5~10年後、クラスメイトのなかから大きなアントレプレナーが輩出されるか、今から楽しみだ。

サマーインターンシップ

ところで、前月の日記を書いたときにはまだ決まっていなかったサマーインターンの予定。結局、ニューヨークに本拠を構える大手ヘッジファンドで行なうこととなった。8週間をニューヨークで、最後の2週間を香港で過ごす予定。アパートの契約も済ませて、あとは6月半ばのスタートを待つのみ。同じ投資といえども、これまでやってきたプライベート・エクイティとは異なるので、不安がないといえば嘘になるが、今こちらでもっともエキサイティングといわれる業界を垣間見ることができる、この上ない機会なので、思い切り楽しもうと考えている。

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