Campus Report 2004

藤本 崇 to Stanford University Graduate School of Business(全21回)

MBAホルダーへの道

Vol.11 1年生終了と夏季インターンシップ

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今私はニューヨークのホテルでこのレポートを書いている。先週の金曜日に最後の期末試験が終わり、ラスベガスへの小旅行、2日間の掃除と荷造り、アパートのサブレットの引き継ぎ等忙しい1週間を経て、やっと昨日、無事サンフランシスコを経つことができた。

ラスベガスでは、3日かけて結局22ドルしか儲からず、つくづく自分のギャンブル運の無さを思い知らされた。最後にラスベガスに行ったのは5年以上前で100ドル位 損したのだが、今回は MBA で学んだ統計学を元に確率を計算しながら賭けていけば勝算はあるだろうと勝つ気まんまんだったのだが、所詮個人が3日でプレーできる回数で統計的な予測と一致した結果 が出るはずも無く、やはりギャンブルは統計学より運が大事という結論に落ち着いた(それか私が単にギャンブルに向いていないかのどちらかなのだが)。

ベガスといえば、私はMBAに来るまではカジノなんて裏でマフィアが操っているいかがわしい商売なのではないかと思っていたのだが、MBAのケーススタディなどで勉強してカジノ大手は、S&P500の一部にも入れられている立派な上場企業で、MBAの就職先としてもかなりポピュラーだということも知った。改めてビジネスという切り口で見ると、なかなかよく考えられて経営されていると思う。

冬学期にマーケティングの授業で、Harrah's がカジノ業界で最初にReward's Programを導入してポイントカードから客のギャンブル嗜好を分析し、マーティングに役立て、シェア拡大に成功を収めたというケースを取り上げたのだが、今回行ってみると既にどこのカジノでも似たようなメンバーズカードらしきプログラムを導入しており、カジノ業界におけるビジネスの動きの速さが感じられた。

ゲーミング業界はM&Aもさかんで、新聞でHarrah's と Caesar's Palace による合併によるラスベガス最大のカジノ会社の誕生について Nevada Gaming Commission がAnti Trustを懸念して OK を出す出さないというのが取り上げられているのも非常に興味深いところだ。

ちなみにMBAではいろいろプラクティカルなビジネスの手法を学ぶので、どこに行っても学んだスキルを使ってみたくなるのだが、ラスベガスでも、秋学期の取ったData&Decisionというクラスで学んだ確率ベースのDecision-Making Toolを使ってカジノをしてみた。

詳しく説明すると、Tropicanaというカジノのポイントカードの特典に、「スロットマシーンで90分間プレーすればマジックショーの優待券二枚が貰える」というプロモーションがあったのだが、これが実際ペイオフするのかどうかを、Data&Decisionsというクラスで学んだ確率をベースにしたフレームワークを元に計算してみた。

マジックショーは2枚で40ドル、スロットの掛け金は50セントである。特典の注意書きには1分に6回プレーした場合と書いてある。このレートだと90分で540回。540回後の掛け金損失が40ドル以下であればBreakevenである。スロットの平均的なペイオフ(掛け金に対して幾ら当たりで出るように設定されているか)は分からないが、例えそれがややカジノ側に有利になるように設計されてたとしても、賭け金が50セントのスロットで40ドル以上損するには最低80回連続負けなければいけない。5540回の後そんなペイオフになる確率は相当低いだろうという結論に落ち着いた。

実際やった結果だが、予想通り損得はプラス・マイナス7ドルを越えることは無く、最終的にはマイナス3ドルの損失でめでたくマジックショーのタダ券をゲットすることができた。MBAは、少なくともギャンブルには役に立つのである(キャリアにも同じように役に立ってくれると尚良いのだが)。

ラスベガスから帰ってきて4日間でアパートを整理すると、すぐニューヨークへ飛んだ。これからここで1週間、インターンシップの為のトレーニングがある。私がこの夏働く証券会社のインベストメントバンキング(投資銀行)部門はニューヨークに本拠地を置き、トレーニングも一括してニューヨークで行っている。インターンシッププログラムでも、「グローバル・トレーニング」と言ってアメリカ、アジア、ヨーロッパの各オフィスでこの夏インターンをすることになるMBAの学生を全員集めて合同でトレーニングをするので、他のビジネススクールの学生と交流を深めれることができるのあが魅力だ。

昨日早速到着早々、会社が主催するウェルカム・パーティなるものがあり、カクテルグラスを傾けながら100人以上集まったインターン達と交流を深めることができた。今日もベースボールゲームやハドソン・リバーでのディナークルーズなど、イベントが盛り沢山で、一見会社がインターンを遊ばしているようにも見えるが、よく考えてみると、ネットワーキングも研修の成果 物の一つで、リレーションシップ・ビルディングという行為がいかに投資銀行という職種において重要かということの表れではないかと思う。

スタンフォードでは他のビジネススクーといえば近くにあるバークレーMBAの日本人くらいしか交流がなかったので、東海岸や中西部のビジネススクールの学生と触れ合う機会というのがあまりなく、違った環境の中で勉強している100人の生徒と1度に交わるというのはかなり貴重な体験だった。他校の社内ネットワークについて情報交換やビジネススクールの話題で盛り上がった。

学校別ではWharton、Chicago、Kellogg、Tuck、Columbiaからの学生が多く、西海岸からは私を含めてスタンフォードGSBから2名と、UCLAのAndersonから1名だけという顔ぶれだった。面 白かったのは、他校の学生と話してみると、一口にMBAと言ってもカリキュラムの組み方や学生の興味分野は学校によって全然違うことが分かる。

例えばシカゴやコロンビアはファイナンスに強いというイメージを私は聞いていたのだが、話してみるとやはり金融系のキャリアを志望するクラスメートが多いと言っていた。学生主催のクラブも、インベストメントバンキング、トレーディング、インベストメントマネージメント等、細分化された興味分野別 にあり、ファイナンス系の就職活動に特化したネットワークやリソースもスタンフォードに比べて整っている印象を受けた。

スタンフォードはジェネラルマネージメント重視のせいかあまりここら辺は層が厚くないような気がする。こうやって改めてスタンフォードGSBを他校と学生の目を通 して比較してみるとやはり全体的な傾向として金融よりEntrepreneurshipやテクノロジーマネージメントのカラーが強いという印象が裏付けられる。こういう一歩外に出てみて得られるPerspectiveというのは大切である

これから1週間の研修が終わると東京に飛び、いよいよ投資銀行でのインターンシップが始まる。久しぶりの仕事。インターンとは言え、当たり前だが学校のケース・スタディで議論するのとは違う。携わる問題は実際にビジネスで起こる問題だ。自分が9ヶ月の学業で実際にスキルアップしているのか試す良い機会だ。楽しみである。

10週間の後は2週間休みを取り、その後パロアルトに戻って来て二つ目のインターンシップを1ヶ月程する予定だ。こちらは Web Analytics(インターネットのウェブ上でのクリックによる Activity をモニター、分析するツール)の会社で、仕事内容は主にマーケットリサーチだ。

投資銀行でのような大企業へのExposureは無いが、小さな会社がテクノロジーとアイディアをベースにどうやって顧客を開拓して日々戦略を実行していくのかを見れるのは貴重な体験になる。インターンシップをする夏はクラスに座って勉強する3学期と同じかそれ以上に重要な学期なのではないかと思う。ではまた。

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