Campus Report 2003

王 夏亮 to Columbia Business School, Columbia University(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.19 課外活動(上)

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去年の秋学期より、機会があって、NYのとあるヘッジファンドでパートタイムジョブを得ることが出来ました。コロンビアの一つのメリットだと思いますが、学校に行きながら、学校で得た知識をそのまま現場で使えるチャンスがあります。私だけではなく、コロンビアの同期たちも結構そういった形でなんらかのパートタイムをやっています。その範囲は金融やコンサルまで幅が広いのですが、やはりニューヨークという立地もあり、金融でのパートタイムジョブが結構多いのです。

ヘッジファンドと言っても、色んな種類があり、扱い商品からいきますと、株式、債券、為替も含むコモディティなどがありますが、取引する手法からいきますと、ロング・ショート、マクロ、裁定取引、ショートのみ、イベントドリブンなど、それこそ多種多様です。

私が手伝うこととなったところは預かり資産が約1500億円前後でのイベントドリブン(event driven)系のところです。1500億円の預かり資産と聞けば、途轍もなく巨大なような気がしなくもないのですが、確かに、一昔だと、1000億円程度のヘッジファンドが数えられるほどしかなかったと思います。しかし、最近の金余りを反映したのか、巨大なヘッジファンドがポコポコと出来上がり、規模の大きいところだと、1兆円以上もあります。なので、1500億円の預かり資産であっても、勿論小さくはないのですが、巨大というところでもありません。まぁ、中規模といった感じでしょうか。

しかし、やはり運用のプロと言うべきでしょうか、フロントサイド、つまり運用に携わる人間はポートフォリオマネジャー、トレーダやアナリストを含めて、僅か10数人しかいません。アナリストはそれぞれが持ちうける担当が決まり、それぞれ良いアイデアがあれば、ポートフォリオマネジャーに持ちかけて、良いアイデアであれば、採用してもらい、良い成績が出れば、ポントボーナスが出ると、大雑把に言うと、そんな感じです。

また、イベントドリブンと言うと、ぴんと来ない方がいらっしゃるかもしれませんが、要するに、各種のイベントが起きた際に、それに乗っかって、裁定取引なり、買いや売りなどを行う運用の一種です。イベントドリブンと言っても、その中で色んなサブセクションがありますが、やはり一番典型的なのはM&A裁定取引だと思います。なぜ一番典型的かというと、一番分かりやすいからです。言い方が悪いのですが、小学生でも出来ます。

まぁ、勿論実際はそんな生易しいものではないのですが、他の亜種と比べ、一番取っ付き易いのはやはりM&A裁定取引だと思います。後で詳しく述べますが、私はこの種の取引はあまり好きではありません。苦労する割には、ファンドにとっても、自分自身にとっても、得るものが少ないからです。また、とっつき易いがゆえに、他の亜種と比べ、裁定取引をやるファンドが以前と比べ、だいぶ増えたようです。

これは私の持論ですが、ファンダメンタルに基づき行われている取引手法ではないので、参加する人数が多ければ、多いほど実はそのうまみが薄れます。なぜなら、ファンダメンタルに基づく投資ではないのために、更なる成長、つまり株価の上昇はやはりどうしても見込めません。そのため、限られたパイをより多くの人数で分けるとなると、やはりうまみが薄れるのでしょう。

私はある意味では、コロンビア生らしく、Value投資派です。勿論、投機、つまりディーリングを否定するつもりはありません。ただ、マクロ投資のようなディーリングならまだしも、条件はあらかじめほとんど決まったようなM&A裁定取引の中でディーリングしようというのはほとんど意味のないようなもので、それこそインサイダー情報か業界のことをよほど精通 しないと無理です。

一つの例を挙げましょう。例えば、A社とB社があります。A社の株価は現在20ドルでB社のそれが10ドルとしましょう。そこで、突如、A社がB社を買収し、両者がそれについて合意がなされたとのニュースが流れました。勿論、B社が買われるわけだから、株価が上がります。通 常だと、合意に達した段階でその買収条件を対外的に発表します。仮に、A社1株対B社1.5株という内容となったとしましょう。そうしますと、理論上では、A社株が下がりB社株が上がるはずです。なぜなら、仮にA社株が動かないとしましょう。そうすると、今のB社株を10ドルで買えば、交換期日になると、自動的に2/3のA株と交換できます。

そうすると、仮にA株の株価が動かないとすると、約13.33ドルの価値を得られます。今B株を10ドルで買えば、期日では13.33ドルの価値になりますから、当然B社株を買います。勿論、その計算の前提の一つはA株が動かないことです。つまり、もしA株がその間に下がると、せっかく当初目論んだ利益が消えてしまいます。が、そこで最初から利益を確定するためには、A株を売ればいいのです。そこで、あらかじめ利益(スプレッド)がロックされ、A株とB株との株価がどんどん、というか、ほとんど条件が発表された瞬間、1対1.5に向かいます。勿論、交換期日までに日にちがあるので、その間の金利計算や、ショートを振るさいに、証拠金を積まなければいけないし、配当を戻さないといけないので、ぴったりとその比率となるのはありませんが、大まかにはそんなものでしょう。

先ほど話したように、一見して簡単なディールです。そのため、ほとんどディールの内容が発表された瞬間にもうほぼ予定比率に両社の株が動きます。それでも、すこしだけスプレッドが残っていますが、基本的にはそれは先ほど話した期日までの金利などを反映したものとこのディールが成立するかどうかを市場が感じ取るリスクプレミアムです。ここで若干混乱をもたらしているかもしれませんが、そのリスクプレミアムと言う厄介なものについて詳しく話しましょう。

先ほど紹介したAからBへの買収ですが、成功しない可能性もあります。アメリカというのは実に厄介な市場で、ディールが成立するかどうかはいろんな撹乱要因が含まれています。例えば、独禁法の適用とか、ライバル企業の出現とか、さまざまなケースが想定されます。そのため、最初そのディールに飛びついたのがいいのですが、いつか梯子がはずされ、下りられなくなる可能性もあります。

先の例からいきますと、A株を20ドルから空売りを建て、B株を10ドルから買いを建てたとしましょう。ディールがうまくいけば、少しばかりのスプレッドが稼げますが、万が一ディールがご破談となると、A株が20ドルまで戻り、B株が10ドルまで下がるので(仮にその間他に株価を与える材料が無いとします)、その分の損失はディールがうまくいく時のスプレッドとは比較にならないほど大きいのです。勿論、確率の世界なので、最終的には予想利益が大きければ良いのでしょうが、やはりマーケットが今バブル様相を呈しているだけに、あまりおいしいビジネスではないと思います。

すこし余談になりますが、LTCMがつぶれる直前には、彼らは債券だけではなく、M&A裁定取引にも手をだしました。おりしも、タイミングが悪く、市場全体が下がっているなか、自社株を通 貨としてM&Aというマネーゲームを行ってきた企業は突如自社株が使えなくなり、そのため、M&Aがご破談となりました。そのため、LTCMは所謂ダブルパンチを浴び、債券及び通 貨のみならず、株の方でも一発食らいました。

まぁ、ともかく、特殊なケース(それもほとんどマーケットがフィーバな時だけだと思います)を除いて、M&A裁定取引は苦労する割には、得しない取引手法だと私は見ています。じゃ、そのファンドでバイトをやる意味がなかったのではと言うと、そうではありません。なぜなら、イベントドリブンの中には、実は宝があります。それを次回に譲ります。

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