Campus Report 2003

王 夏亮 to Columbia Business School, Columbia University(全22回)

MBAホルダーへの道

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先月はイベントドリブン系の中でも最もポピュラーなM&A裁定取引に焦点を当てて紹介しましたが、今回はその他の取引手法について実例を交えながら紹介しようと思っています。あらかじめお断りしますが、その実例の中でいくつかは私自身が提案したり、ないしヘッジファンドの友達がやったりしている実際のディールなので、具体名を伏せてご紹介したいと思います

M&A裁定取引を除いて、他のポピュラーな取引手段としては a) スピン・オフ b) ディストレス投資 c) Chapter 7/11後があります。また、ファンドによって異なりますが、広義なイベントドリブン取引としては、最近注目を浴びるようになってきたのは a) Capital Structure Arbitrage b) Corporate Governanceなどがあります。

ディストレス投資や破産後浮上投資(Out of Chapter 7/11 investment)はとある意味では、素人がやるべき投資ではないと思っています。というのは、通 常投資に要求される知識、例えば、業界に関する知識や価値の算定以外には、特別 に法律に関する知識が要求されます。勿論、仕事をやりながら、所謂OJTを通 じて、ある一定の知識を得ることができますが、厄介なことに、各国のリーガル体系がそれぞれ異なる上に、膨大な専門知識が要求されますので、別 の意味でM&A裁定取引と同じように、苦労するわりには、得るものが少ない投資手法とはいえるかと思います。しかし、一方で、その故に、競争は割りと少なく(しかし、現在は必ずしもそうとは言えなくなってきた)、投資及びリーガル両方の知識をある程度を持っているのであれば、美味しいニッチ世界だと思います。

上述した理由で私はオーソドックスなイベントドリブン系の中で、とりわけスピンオフに注目し、よく見ています。色んな意味で、私はできれば、日本をメインにして、アメリカを含む他のマーケットを補助的に捉えたいと考えていましたが、残念ながら、世界の経済大国でありながら、日本は依然として、Corporate Actionが少ないので、日本投資は後で述べるCorporate Governance投資という手法以外は他のイベントドリブン系は殆ど使っていません。

少しばかり余談になりますが、こちらのマーケットで多少でもやると、本当にアメリカ資本市場の懐の深さにひきつけられます。いいかどうかは議論が分かれるところですが、マーケットで儲けるのが至上命令である投資家にとっては、この上ない最高のマーケットといえましょう。そういう訳で、スピンオフ投資に関しては、やはりCorporate Actionの一番多いアメリカマーケットに注目しています。

さて、ここで私が以前推薦した提案について簡単に紹介します。

背景:アメリカ有数の消費財会社(主に製紙関連)が昨年に社内のペーパー部門をスピンオフしました。スピンオフされ、新たに独立した新会社(仮にNew Corpと言いましょう)は主に3つの事業を行ってきています: a) 高品質ペーペー b) テクニカルペーパー(一般紙と理解すれば良い)c) 紙の原料となるパルプ。その中で高品質ペーパーは非常に利益率の高いビジネスで(税引き前の投下資本利益率が50%前後)テクニカルペーパーは高品質ペーパーと比べ、やや利益率が落ちますが、それでもROICが30%前後を維持しています。それと比べ、パルプビジネスが非常に不採算なビジネスとなります。利益を出すどころか、近年に至って、連年損失を計上している有様です。

基本的には、スピンオフされた会社の株が割安に放置されがちです。なぜなら、元親会社の株を持っている株主が色んな非経済的な理由でスピンオフされた会社の株を手放さなければならないからです。例えば、スピンオフされる会社はおおむね規模が小さいので、インデックスには組み入れられないケースが多々あります。そのため、インデックスファンドのパッシブ投資家はインデックスに入っていないとの理由でその会社の良し悪し一切関係なく、売るしかありません。

また、同様な理由でLarge Fundに投資した投資家がスピンオフされた会社の株を貰っても、ファンドのMandateを反するとの理由でやむを得ずスピンオフされた会社の株を売らねばならないケースもあります。

ともかくして、投資の世界にも色んな非経済的な動機があるので、それによって、非合理的な(勿論当人にとっても至って合理的ではありますが)投資決定が下されます。しかし、捨てる神あれば、拾う神ありということわざはまさにその通 りです。主にヘッジファンドをはじめとする抜け目の無い連中たちはそこを狙い、一時的な非合理的な理由で下げたスピンオフ株を買い上げるわけです。

以前他のレポートでも紹介したかと思いますが、私の恩師である「Joel Greenblatt」が設立した[Gotham Capital]はスピンオフなどを主に投資しているヘッジファンドです。ファンドは設立して以来ずっとインデックスに勝ち続けてきました。またすごいのはその間の平均リターンが何と50%前後に達していたとのことです。

ちょっと余談になりますが、面白いのは、Joelが独立する前に働いたヘッジファンドは何と私が学校に通 いながら働いていたところの人が独立して作られたファンドです。いわば、Joelと私は一つのサークルに属したわけです。

さて、話しをスピンオフに戻します。上述した理由でスピンオフされた会社はだいだい買いターゲットとなります。今回のケースも例外ではなく、そうといえます。なぜなら、会社のBSの方には1MヘクタールほどのTimberlandを僅か5M$しか計上していません。その森はどう少なく見積もっても、1ヘクタール当たりで200ドルの価値があります。したがって、会社のBSの方には隠された資産(Hidden Assets)は200Mほどあります。それだけでも、一株あたりで13.5ドルの含み益が加算されるべきです。

当時私が同社株を注目した時には、株価が僅か32ドルです。普通で考えれば、32ドルで同社を買えば、同社の利益率の高かった紙ビジネスを僅か17/18ドルで買えます。実はその紙セクターの予想営業利益は05年及び06年においては、それぞれ67Mドルと65Mドルを予想されています。同社には、200M前後の有利子負債を考えれば、だいだい7x EBITでその会社を買収できます。紙セクターの高収益率を考えれば、Cash Cowを入手するには、7x弱のEBITというのはアメリカスタンダードから行くと、安いといえましょう。勿論、会社が負け犬であるパルプビジネスを抱えているので、早急それを売却しなければいけないのでしょうが、少なくとも現時点では更なる調査する価値のある会社だと私が判断しました。

しかし、いざProspectusを読むと、思わず以外な事実を発見しました。何と、同社には、100M超のペンション債務があります。それをValuationに含めると、EV/EBITが一気に8.5xに跳ね上がります。勿論、それは途轍もなく高いというわけではないのですが、Margin of Safetyという観点からは魅力が薄れます。更に、会社のProspectusを読む限りには、パルプビジネスを手放すつもりが無いようです。なぜなら、元親会社との契約があり、最短でも2009年まではパルプを提供し続けなければいけないからです。

更に、業界のエキスパートに聞いたところ、パルプビジネスが非常にサイクリカルなビジネスで最近どうも下落ぎみらしいです。そのため、まともな値段では売れないし、まして同社が抱えている二つのパルプ工場の一つが非常に効率が悪いのです。まぁ、色んな理由で同社は負け犬であるパルプ事業を手放すことができません。最近の環境問題でどこの製紙会社でもそうだと思いますが、かなりの設備投資をやらざるを得ません。同社も例外ではなく、特に汚染恐れの高いパルプ事業には今後毎年40Mから50Mの設備投資を行うとProspectusに記述しています。負け犬である事業セクターに毎年数十Mの設備を突っ込まないといけないというのはいかにもばかばかしいのです。

そういったCapexを含んだCash Flowを計算したところで、同社の内在価値は僅か20ドルまで下がります。そのため、私の最終計論は同社が売りです。いくら高収益率のビジネスセクターを抱えて、Hidden Assetがあっても、負け犬のセクターを売却できない上、毎年莫大な設備投資を行わなければいけないとしたら、Cash burnで会社の内在価値が急速下がるのもおちなのです。やはりその肝心の負け犬を処理しない限りには、見た目のMargin of Safetyも結局ただの誘惑になってしまう恐れがあります。

次回には、日本の実例を用いて、広義のイベントドリブン投資について紹介したいと思います。

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