前回アメリカの実例を使い、スピンオフを紹介してきました。今回は日本の実例を使い、Corporate Governance投資を紹介します。
近年Steel Partnersのおかげで、日本国内にもCorporate Governanceに関する議論が盛んになりました。しかし、残念ながら、やはりアメリカと比べ、まだまだといわざるを得ません。現に、私が興味を持ち、リサーチしたい会社にいざ連絡しますと、なんらかの形でやんわりと断れたことが多いのはやはり日本の株式市場が未熟である証拠と言えるかと思います。
まぁ、とは言っても、Steel Partnersショック後、真剣に株主価値が何であるのかを考えるようになる会社が増えたというのも事実です。日本株式会社は今までどちらか言えば、Stake holderの利益を最大化というのを良い口実に、実はStock holderをないがしろにしてきた事実があります。その中で、少しずつではありますが、Stock holderのことを気にし始めるような会社がポツポツと出始めました。以下で紹介した投資提案はそれをメインテーマとした投資アナリシスです。
投資候補は日本の典型的な中小企業で、時価総額はおおよそ700億円前後です。同社に関心をもつようになったのはおよそ半年前です。なぜ関心をもったかと一言で言いますと、高収益の成長ビジネスを持つ株主価値を理解する会社の株を合理的な株価で買えるからです。以下でそれぞれのポイントを詳しく説明します。
高収益ビジネス:同社は主に3つの事業を展開しています: a) 駐車事業 b) 時間/情報管理事業 c) 環境事業。やはり、独自の強みがあり、それぞれの分野においては、常にトップの座を維持しています。駐車ビジネスに関しては約6割のシェアを持ち、情報・時間管理も4,5割のシェアを有しています。残りの事業に関しても、おおむね3割ぐらいのシェアを持っています。そのため、Pricing Powerが強く、高収益につながります。
利益率が高い:情報・時間管理事業の粗利率が約70%強で、駐車事業の粗利率は約30%強となっています。一方、税引き前の投下資本利益率が約20%前後で、日本の低金利を考えると、非常に高い収益率と言えましょう。
成長性:駐車事業及び時間管理事業ともに、成長事業として目されています。新しい道路法や労働基準適用の強化により、以前より駐車事業及び情報・時間管理事業にビジネスが増えるからです。
株主価値重視:定量的な目安ではないのですが、IR担当者が非常にプロフェッショナルです。前も話したかと思いますが、日本の中小上場企業の株主対応はおおむねお粗末としかいいようがありません。何回電話をかけても、担当者がでなかったり、明らかに居留守を使ったり、こちらの質問をまともに答えず、逃げたりして上場廃止すべき会社がザラにあります。その中、同社の対応は非常に良いのです。よくIR担当がここまで分かっているなと感心させられるほどです。何か株主として質問しているというよりも、学生として先生から業界知識を学んでいるという感じです。勿論、IR Trapというのがありますが、やはり実績も残している会社だけに、その重みが違います。
Reasonableな株価:やはりSmall Capのせいなのか、同社の株価が不思議なほど割安に放置されています。LBO評価、Multiple評価、清算評価などを使うと、成長を評価しなくても、同社の内在価値が1400円になるはずだと私が思います。しかし、当初目をつけた時には、株価が僅か900円台の後半で、適正価格とは4割以上の差もあります。
以上の要素を総合しますと、私はPMに買いと強く勧めました。しかし、PMがMargin of safety を固執するがゆえに、もう少し下がらないと買わないと言い、ずっと同社をWatching listに入れたままです。皮肉にも、同社の株価はその後順調に上がり続け、今は既に1300円台に突入しました。今考えれば、当時私は強く勧めるだけではなく、恐らくPounding the tableをやらねばならなかったのでしょう。いずれにしても、悔やまれる銘柄です。
この投資のポイントは勿論、会社の素晴らしさもありますが、やはり株主に対する姿勢だと思います。株主軽視の風潮が依然として強い中、同社の姿勢がいかに新鮮に映るかは言うまでもありません。少し極論になりますが、同社の業績もさることながら、やはり株主対応のよさが投資推薦の決め手と言っても過言ではありません。外国人投資家に分かりにくいところだと思いますが、日本はいまだに投資後進国です。何のために上場したのかさっぱり分からないような会社が多いのが事実です。その中で、株主重視をする会社がいるだけでも重宝されるべきではないのかと思っています。今後もそういった会社がより多く増えてくることを期待したいと思っています。