予定変更になりますが、年に1度のThe Anderson School Cabaret(アンダーセン・キャバレー)をご紹介させていただければと思います。アンダーセンといえば、アントレとエンターテインメントが有名なのですが、このイベントは学生が持っている才能を活かしてパフォーマンスを魅せる場です。一見普通に見えるクラスメートですが、皆の経歴はかなりユニークです。
親友のポーランド人Bは10年間歌と踊りで国民的子供スター(マイケルジャクソン?)として自分の才能を開花させた後、オックスフォードで統計学の修士号を取得し、ロンドンの某投資銀行からアンダーソンへ。元NBA スターもいれば、元ミュージカルスター、元映画製作経営者、元キャスターもいます。
来週が期末試験という誰もが忙しいこの時期ですが、work hard, play hard をモットーとするアンダーセンです。機械オンチの私もステージマスターとして音響効果などを担当しました。LAのビジネススクールらしく、何とハリウッドにあるEl Rey Theatreを借り切っての開催です。夕方4時からリハーサルを開始、夜7時開場、8時開演で深夜1時まで様々なパフォーマンスが繰り広げられました。
始まりはきらびやかなインドの現代民族舞踊でした。ジーンズ姿しか知らなかった同級生もマハラジャとして登場して、びっくりしました。スキットや間奏をはさみながら、卒業を控えた二年生の学生生活、アンダーセン・ファッションショー、MBAの授業、ジョブインタビューなどをパロディにしたナイト・ライブショー。スムースな語りには圧倒されました。
そんな中で、この一大イベントにおいて最も注目を浴びたのが日本人1年生で結成したKi-shi-danでした。原宿のカリスマだという話ですが、テレビをあまり見ていなかった私は話をそのまま信じるのみです。当初は一年生の間でも様々な議論があったのですが、「現代日本のイメージ改善」という本気なのかどうかわからないゴールへ向かって一同団結。某商社の宴会担当同級生をリーダーとして、睡眠時間を削りながら、深夜の公園でホームレスを横目に練習を日々重ねた後、昨秋のイベントで華々しくデビュー。
東大出身者の多いアンダーセン日本人学生は何事もまじめです。ビデオカメラや幼児の助けまで借りながら、ハイテク面でもかなり高いレベルを達成。本番では、まるで映画Shall we dance?のMBA版を見ているような錯覚に陥りました。今回はあまりに好評であったため、アンコールにこたえての再登場です。
"Finally, we are back."にはじまり、"Ki-shi-dan!"コールをAが煽ると会場からは割れんばかりの"Ki-shi-dan, Ki-shi-dan, Ki-shi-dan..."コール。テンションが最高潮に達したところで、舞台は暗転。見事なリーゼント&学ランとビジネススーツに身を包んだ6人の姿 がうっすらと浮かび上がると、One Night Canivalのオープニングが大音響でEl Rey Theatreに響きました。さすが、日本人チームだけあって、細かいところまで息の合ったダンスにオリンピックで健闘するシンクロナイズドスイミング日本チームの姿が重なります。特に、脚のカニ動きはポリネシアンダンサーも真っ青のレベルです。
再び舞台が暗転し、彼らが退場した後も、しばらく会場内からはKi-shi-danコールが鳴り止みませんでした。GMATの点数は高いのに本当は馬鹿なのか頭が良いのかわからないとのルームメートのつぶやきには、「馬鹿に見えるのは日本の美徳の謙虚さによるものである」と説明し納得してもらいました。まさに、Work hard, play hardの真骨頂。
そして、アンダーソンにおける日本人のプレゼンスを決定的に確立させたのが、Aによるギター弾き語り。氣志團の興奮も冷めやらぬ中、幾つかのパフォーマンスに続いて、学ラン姿のまま、Aが再び舞台に登場。その際、司会の女性が「わたし、Aってよく知らないんだけど、少なくともファンがいるみたいね。それで、face book(全学生の写真付きプロフィールが本になったもの)でチェックしたら、彼ってI touch you(某大手商社)って会社から来ているのね。I touch youって、一体どんな会社?私はどこ触ればいいのかしら?」と紹介したのがヒットでした。
壇上に上がったAは「今宵はラブソングを歌います。ただ、悲しいお知らせと良いお知らせの2つがあります。」と切り出し、「悲しいお知らせとは、この歌は 日本語なので君たちには歌詞が理解できないこと。良いお知らせは、僕の友人が英語に訳してくれたので、それを後ろのスクリーンに映すことができることです」と続けます。音響担当の私は当初とちってしまいましたが、その後は日本語の歌詞をキューに息の合ったパフォーマンス。
歌は尾崎豊のI love you. ギターは基本コードを押さえるのみだったものの、商社時代にカラオケで鍛えた歌唱力は素晴らしいレベル。その真剣な歌いっぷりに、はじめ観客は誰もが先の氣志團のお口直しかと思い、静かに聴き入りました。ところが、スクリーンに映し出される歌詞は全くラブソングとは関係のない、アンダーソンでのMBA生活をパロった内容。作り込まれたスライドに展開されるユーモアと、あくまで真剣に尾崎のI love youを歌い続けるAのコントラストに観客は大ウケ。最後はスタンディングオベーションの嵐。素晴らしかったです。
今後二週間で、期末試験、送別会、引越し、サマーインターン開始です。アンダーセン・スピリットで乗り切っていきたいと思います。それでは皆さん、また来月も宜しくお願い申し上げます。