Campus Report 2003

関 伸彦 to Sloan School of Management, Massachusett Institute of Technology(全28回)

MBAホルダーへの道

Vol.28 私にとってのMBA留学の意義 (最終回)

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この体験記は大阪にて書いています。東京で引越しの準備などをしながら、長らく会っていなかった人達と会い、今のマンションには数日前に引越してきました。それにしても大阪は暑い!最高気温が常に東京よりも2~3度高い感じなのですが、体感ではそれ以上の差もあるようにも感じられます。

私は経営コンサルティングという業界を選んだ際に「3年後には留学しよう」と漠然と考えていたため、入社数年後に結婚した際でも家具・家電に関して特に大きな買い物をしなかったのですが、それがここに来て響いています。そうです、現在はこの暑い大阪で冷蔵庫・クーラー無しの生活を強いられているのです...。今更ながらに冷蔵庫・クーラーの偉大さを思い知っています。

さて、早いもので体験記を始めてからほぼ2年が過ぎ、今回で最終回を迎えることになりました。明日からは新しい職場での仕事が始まるため、ちょうど今日が2年間の留学生活の最終日と言えるかもしれません。最終回では、卒業式の様子と帰国時のトラブルを最初に紹介し、そして最後に2年間のMBA留学を自分なりに振り返ってみようと思います。

卒業式

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隣にあるように、皆さんがイメージするような例のガウンをレンタルし、6/3(金)に卒業式(Commencementと言います)に臨みました。この写真を見せると最初に必ず聞かれるのが「帽子投げたの?」という質問です。答えは「投げません」なのですが、この帽子を投げると非常に危険なんですよね...。この上の四角い部分はかなり固い素材で型が作ってあり、投げた帽子が回転して誰かの頭に当たると刺さってしまいそうなぐらいの強度なのです。この帽子を手にするとそれが自然と分かるためか、実際にMITの卒業式でも誰も投げる人はいませんでした。

学部ではColumbiaを卒業したSimonから聞いた話によると、Columbiaなどでは帽子の代わりに学部ごとに何か投げても危険でないものを選び、それを最後に全員で投げるようです。ちなみに彼は工学部だったため、フロッピーディスクを投げたそうです。当時ビジネススクールはお金だったとか...。

上で「MITの卒業式」と書きましたが、MITでは学部生も含め全学部の卒業生が一同に介して卒業式を行います。場所は上の写真にもある、MITで一番有名な建物であるドームの前の広場で行います。当日は朝10時から式が始まり、数名のスピーチ(今年はQualcommのCEOのスピーチもあり)の後に卒業生全員の名前が順番に読み上げられていき、卒業生は全員が壇上に上がって本物の卒業証書を受け取るのです。そして14時ごろに終了となります。

10時開始、14時終了と聞くとそんなに悪くない気もしますが、実際には式を滞りなく終了させるため、卒業生は7時半に集合し、その後開始までずうっと立ちっぱなしなので、計6時間半ぐらいの長丁場となるのです。また、家族も大変です。卒業生1人につき4枚の卒業式用チケットが割り当てられるのですが、このチケットを持っているからといって席が確保されているわけではない(アメリカ的!)ので、特に良い席を確保するためには同じく朝早くから場所取りをしなければならないのです。

それでも、このチケットがなければそもそも会場にも入れないため、4人以上の家族を呼ぶ生徒は友人などを利用して追加のチケットを入手する必要があります。卒業式直前にはダフ屋のように余ったチケットを安価で買取り、必要な人に高値で売るというビジネスも登場するようです。一説では最終的には$50ぐらいにもなったとか...。私は妻しか参加しなかったので3枚ほど余ったのですが、そのうちの2枚を友人に上げました。すると「いらない」と言ったのですが、お礼を兼ねてお寿司をご馳走になりました。ラッキー?

卒業式の終了後はSloanビルの近くでSloanの学生とその家族向けに飲み物と簡単な食事が振舞われ、小規模なパーティーが催されました。ここで皆と最後のお別れ...などと考えていたのですが、多くの友人達は家族と一緒にいて話し込める感じではなく、また何名かは既に家族と一緒に場を離れてしまっており、ちょっと拍子抜けしてしまいました。ただ、我々も朝からの式で非常に疲れていたため、結局少し滞在した後にその場を離れました。最後はこんな感じになってしまい、ちょっと体力的にも厳しいとは感じましたが、やはりアメリカの大学の卒業式に参加するというのは非常に面白い体験でした。

帰国時のトラブル

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大阪への引越しを控えていたため、6/3(金)に卒業式を終えた後、すぐに6/7(火)に帰国する予定にしていました。我々のフライトは朝6時という非常に早い便だったにも拘らず、Simonが車で送ってくれるというのでそれに甘え、朝3時半にスーツケース2個とダンボール2箱という大荷物で空港に向いました。

ところが、空港に到着してDelta航空のカウンターでチェックインしようとすると「(乗り換え地である)Atlanta行きの便はキャンセルされました。」とのこと。更に「あなたの格安チケットでは他のフライトに振り替えることはできないので、明日の同じ便を既に手配しました」ときました。DeltaのAtlanta - 東京は1日1便しか無く、Boston - Atlantaの便がキャンセルになった時点で結局はどうしようもなかったので、幾つか質問をした後に引き下がる事にしました。

それにしても、こういうことは日本の航空会社では決してありえないことだと思うのですが、本当に最後までアメリカのサービスにはやられてしまいました。ただ、こんな状況ではあったのですが、Simonが優しく家まで送ってくれ、「明日も同じ時間に送る」と言ってくれたので我々はかなり救われたのでした...。

実は、我々が生活していた部屋も家具を含めて次の1年生に引継ぎ、鍵も東京で渡すために私が持っていたので、幾つか不便な点はあったものの、なんとか快適に生活することができたのは不幸中の幸いでした。アメリカの公共系のサービスの質の低さに悩まされ続けた2年間を象徴するような出来事に最後の最後で遭遇してしまったのには、怒りを通り越して笑いが出るほどでした。

次の日も依然として不安だったのですが、この日はさすがに全く問題なく飛行機が運航され、無事日本に帰ってくることができました。一度拍子抜けに終わったSimonとのお別れも今度はすることができ、結果的にはなかなか思い出深いBoston最終日となりました。

私にとってのMBA留学の意義

さて、最後にこの2年間のMBA留学の意義についてですが、これはこれまでこの体験記の中で少しずつ書いてきたことと大きく変わりはありません。下記にそのまとめを記します。

海外在住経験・英語上達に関しては十分満足できるもの

留学前には「MBA留学しても大して英語は上達しない」ということを耳にしました。しかし、これらはあまりにも高い理想(映画を字幕無しで100%理解できるようになる等)を描きすぎていたためにこういった感想になったのではないかと思います。アメリカでは英語を上達させる機会が周囲に転がっているわけですから、Nativeと積極的に遊ぶ・飲むというのもいいですし、Language Exchangeをしたり、格安の地域の英語学校に通うというのもありだと思います。

ただ、重要なのは、どのビジネススクールにも日本人が沢山いるため、意図的に英語を上達させる意識を保っておかないとあっという間に時間は過ぎてしまうということです。Native並みになる、というのは無理だと思いますが、仕事のレベルであればNativeと対等に交渉できるというレベルまで持っていくのは可能だと思います。現実的な目標を置き、それに対して日々努力するということを怠らなければ、英語だけでも2年間の投資額に見合った結果 が出るのではないかと思います。特に、英語(特に会話)にコンプレックスを持ち続けていた私にとって、今後これをあまり持たなくても良いというのは非常に大きな成果 なのです。

また、海外在住経験ですが、日々の生活で公共サービスの質の差、アメリカ人の友人との考え方・行動パターンの差などを肌感覚で知ることは、今後アメリカ人相手に仕事をする際や、日本の独自性・優位性を考える際に非常に役に立つと思います。また、日本がいかに均質(同じ考え方、同じ質)な人々の集団だったのかということとそれに付随するアドバンテージ・ディスアドバンテージなどは留学しなければ体感できなかったことだと思います。

授業はそんなに素晴らしくは無いが、新しい分野を学ぶには良い機会

これは行く前に想像していた通りだったのですが、経営コンサルティングの現場で即活用可能な考え方・スキルというものはMBAの授業では教わりません。もし経営関連の知識・スキルの向上をメインに考えるのであれば、経営コンサルティング業界で2年も働いた方が、MBAの授業よりも実践的なスキルが身につくと思います。

但し、経営コンサルティングの現場で体系的には学べないのが会計とファイナンスであったりするのですが、この2つは逆にMBAプログラムが教えるのが特に得意な科目だったりします。戦略やマーケティングなどの授業は実践的だとは全く思いませんでしたが、この2つの分野であれば、特に私のように工学部出身で会計やファイナンスの知識が不足していた人間は、比較的多くのものを学ぶことができると思います。

また、金融出身の同級生がオペレーションのクラスなどを非常に評価していたことを考えると、「MBAプログラムでは、持っている知識をさらに深めることは難しいが、知らない領域を学ぶという目的であれば十分に役に立つ」とまとめられるのだと思います。

国際的な人的ネットワークの広がりは他の機会では獲得しがたいもの

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これが英語に問題を抱えない人々(Native含む)にとっては最大かつほぼ唯一のMBAのメリットとなるでしょう。同じように自分のキャリアを発展させて行きたいという考え方を持ち、これまでの職場でもよい仕事をしてきたであろう優秀な人たちと、仕事上の付き合いで出会ったのとは異なる親密な関係を築くことができる、というのは本当に素晴らしいことだと思います。昨日も早速香港で仕事を始めた友人から、彼らが立ち上げる予定のビジネスに関連する日本の法規制に関しての質問を受けたのですが、もし今度私が困った時には彼は気軽に助けてくれるに違いありません。

また外国人だけでなく、日本人とも2年間一緒に厳しい環境を乗り切ったという戦友のような感覚ができるため、これも仕事上の関係とは異なり、例えるなら大学時代の友人のような感覚で、仕事上で困った時でも気軽に相談できるような付き合いを続けることが出来そうです。

もちろん、これらの関係が実際に自分の仕事に関係してくるかは分かりませんし、むしろこれらの関係のうち大半は全く仕事上で使われることはないという気もします。ただ、海外旅行に行った際に各地に会う友人がいる、という状況だけでもMBA留学をする前とは雲泥の差ですし、個人的には、これだけだったとしても自分の世界の広がりを感じることができて非常に満足です。

インターン

その他、比較的直接的なメリットとしては、インターンシップの機会を得ることができる、というものが挙げられます。数年の勤務経験を経た後に、まるで学部生かのように合法的に、ある意味他人の会社・業界を実体験を通じて覗くことができる、というのは非常に貴重なことだと思います(受け入れてくれている企業には本当に頭が下がります)。

このインターンは転職の意思決定の参考にしたり、また転職はしなくとも自分の会社とは違う会社を知るという意味でも非常に良い経験ができます(実際に私がそうでした)。実践的、という意味では2年間の中で最も意味ある体験といえるでしょう。

この意味で考えると、1年制のプログラムというのはこの機会が得にくいという意味で不利かもしれません。個人的には2年間は長すぎるという考えには同意するのですが...。

金銭面

以上のようなことを考えると、実はMBAプログラムは金銭的にはペイしにくいというのが私の考えです。英語が上達したといっても卒業後に英語を使う仕事をするとも限りませんし、ファイナンスを学んだといってもそれを実際に仕事で使う人は限られるでしょう。コンサルや投資銀行に行けば確かに金銭的には問題ないと思うのですが、借金を返すためにこれらの業界を選ぶということだと、逆に自分の選択の幅を狭めてしまっていて本末転倒な気もします(この業界が好きで選択した場合は良いのですが)。

ですので、MBA留学は短期的なリターンに固執せず、「半分趣味」と割り切れる方が行くのが良いのだろうと考えています。例えば、これまで留学したことがなく、どうしても一度留学したいとか、世界中の面白い人とネットワークを作りたいとか...。逆に周囲のMBA留学をした人に「どれぐらいかかるの?」という質問を最初にしてしまう人にはあまりお勧めしません。アウトプットは非常に目に見えにくいもので、個人の感覚によって評価が分かれるものなので、無理して留学しても「やはり意味がなかった」ということになりかねないからです。

それで、私の全体の感想がどうだったかというと...、それはもう「大満足」です。2年間の留学をせずにあのまま国内に留まっていたかと思うとゾッとします。私個人のケースでも金銭的にペイするかどうかはやはり怪しい(笑)のですが、イメージしている自分に近づけたという自己満足的な意味では本当に良かったと思います。

さて、最後になりましたが、この体験記を2年間読んで頂いた方、本当にどうもありがとうございました。また、私の体験記執筆をサポートして下さったキャリアインキュベーション社の皆様には心より感謝いたします。この体験記が何らかの刺激・助けとなり、1人でも多くの人がMBA留学を志し、留学を成功させることを心より願っています。

関 伸彦

P.S. MBA留学やMIT Sloanに関して何かご質問などがありましたら、気軽にこちらまでメールを下さい。返事が遅れるかもしれませんが、できるだけ対応させて頂きます。

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