フォンテーニュブローでの愛車と友人と
ブルージュにて高校時代からの友人と
5月末から6月初めにかけて、高校時代からの親友が訪ねて来てくれ、オランダ~ベルギー~フランスを旅しました。オランダの広大な国立公園で童心に返ってサイクリングしたり、美術館や博物館で心を打たれたりしながら、来年春を予定している眼科医院の開業準備に奮闘中の友人と、あまりゆっくり話すことができなかったここ2年間の出来事や互いの心境の変化や、今後の夢や目標について、久しぶりに二人でゆっくり語り合いました。また、6月末には、同じく訪ねてきてくれたWhartonの友人達と三人で南仏を旅行し、雄大で美しい景色を眺めたり、小さな古い街並みを歩きながら、これから始まる新しい生活について、互いの抱負を語り合いました。
南仏にてWhartonの友人と
我が家の裏庭にてWhartonの友人と
2年間に渡って書かせて頂いたレポートの最終回となる今回は、交換留学先のINSEADでの6月の出来事と、MBA Programとして主にWhartonで過ごしたこの2年間を振り返って今想うこと・・・についてレポートさせて頂きます。
<Interview for the team project of Family Firm>
Family Firmのコースでは、3人で一つのチームを作り、学期を通じたチーム・プロジェクトとして、実際にチーム・メンバーが抱えるfamily businessに関する問題の分析やコンサルティングを行いました。私のチームでは、チーム・メンバーが抱えるfamily businessの承継問題~ご両親がアイルランド、ダブリン近郊で33年前に起こされ、特にここ10年間で著しく成長を遂げたfamily businessの承継を、INSEAD卒業後の進路とするか否か~について、分析・提言することをテーマとしました。
これは、INSEAD卒業後に3代目の経営者としてfamily businessを継ぐべく故郷へ帰ることを決めているもう一人のチーム・メイトと、父親が約40年に渡って続けてきている小さな会社を継がないことをほぼ決めている私にとっても、現実問題として大変興味深いテーマでした。
6月上旬の週末に息子さんを訪ねてアイルランドからフォンテーニュ・ブローへいらっしゃったご両親を、運良く3時間に渡ってインタビューさせて頂くことができ、起業家として、仕事上のパートナーとして、また、人生のパートナーとしてお二人が共に歩んでこられた30年間について、合わせて、二人の息子さんを育ててこられた教育方針や価値観について、大変貴重なお話をお聞かせ頂くことができました。これまでの半生を振り返られ、時に言葉をつまらせたり、涙ぐまれながらご両親が語って下さったお話に、我々は深く感銘し、多くを学ばせて頂きました。中でも特に強く印象に残った3点は下記です。
(1)お二人に起業家となられた動機をお聞きした際、お二人は全く同時に、"自分達の人生・運命を自分でコントロールし、自分で決断して生きたいと考えたから"とお答えになられました。"特に決まったアイデアがあったわけではないけれども、自らの人生を自らの決断で生きるために、自分達で何らかの事業をしたいと先に決意して貯蓄を始めていた"こと、そして、"偶然にビジネスの機会に恵まれた際に、リスクをとり、熱心に工夫をしながら仕事をしてきたからこそ成功することができた"ことをお聞かせ頂きました。
(2)"起業当初しばらくは、お父様がビジネス・パートナーと共に事業に取り組まれ、お母様はシステム・コンサルタントとしての外でのお勤めを続けることでリスクをうまく分散されていたこと"、"事業が様々な問題にぶつかりながらも成長してくる過程においてお母様も外での仕事を退職され、お二人共に事業に専念されるようになったこと"、"製造と営業に長けたお父様と、経営戦略・管理に長けたお母様は、職責を完全に分離して互いの能力を信頼し合い、互いの職責に干渉し過ぎないでうまくビジネスを成長させてこられたこと"、"よほどのことがない限り、ビジネスの問題を家庭に持ち込まないこと"等のルールを持って、これまで、事業と家庭生活を共に成功に導いてこられたそうです。
そして、私が一番感銘を受けたのは、"これは正に私が理想とする人生です。私は、ビジネスを共に行い、人生を共に過ごすことで、人生の多くの時間をパートナーと共に過ごしたいと思っています。"という、お父様のお言葉でした。
(3)ご両親はお二人の息子さんを育てられる際に、広い視野を持って自由に~ご両親やfamily businessに縛られることなく~生き、ご両親を超えた存在になって欲しいと願ってこられたそうです。"世界は常に変化しているので、我々親にとって良いこと・良かったことが、これからを生きる息子達にとって必ずしも良いとは限らないから"と。
創業者として、ビジネスにひとかたならぬ想い入れをお持ちのはずですが、それよりも、"息子達が自分の足で自分の人生を歩んでいくことが何より大切だ"と、"第三者への売却"をも視野に入れて承継問題を考えていらっしゃることや、もしも息子の一人が事業を承継することを決意したとしても、経済的合理性を保つため、兄弟間の公平を図るために、事業を単に"無償で譲る"のではなく、"売却する形で譲る"ことを望んでいらっしゃるという斬新なお考えに、新鮮な驚きを感じました。
<3人のハウスメイト達に感謝!>
フォンテーニュ・ブローで暮らした8週間は、05年12月卒業を予定しているINSEAD生三人と共に小さな村の一軒屋をシェアして過ごしました。曲がりなり?にも全米第5か第6の大都市であるフィラデルフィアでの生活とはうって変わって、フランスののどかな田舎町での生活は、多少不便ではありましたが、レタス畑や森の緑の香りと、小鳥のさえずりに囲まれた、心休まる時間となりました。ハウスメイト達のこれまでの生活に習って、ほぼ毎晩、自宅で4人一緒に料理をしては夕食を共に楽しんで過ごしました。
INSEAD最終週の週末に我が家で開いたBBQにて
アメリカの大学を卒業後、アジアで米系メーカーに勤めていたマレーシア人のハウスメイトは、INSEAD入学前に起こした自らのビジネスを今も続けつつ、卒業後は一旦コンサルティングの職につき、さらにその後自らの事業を大きくしていくことが夢だと語ってくれました。彼の頭の中には常に様々なビジネス・アイデアが駆け巡っていて、"面 白いビジネスを考え付いたんだけど、君はどう考える?"と、目を輝かせてアイデアを語ってくれました。
マドリッドで、それぞれに大手監査法人系のシステムコンサルティングや経営管理の仕事に従事していた二人のスペイン人のハウスメイトは、おもしろい機会があれば、場所や職種にはこだわらずに新しいことに挑戦してみたい、というスタンスで、勉強と就職活動に取り組んでいました。
2年間の一人暮らしを経て経験した4人暮らしはとても新鮮で、一つ屋根の下に共に暮らす人のいる幸せを改めて感じました。フランスでの暮らしの勝手がわからない私に、本当に親切に接してくれ、たくさんの良い思い出をくれたハウスメイト達に、本当に感謝!です。
<この2年間を振り返って>
このレポートを書いている今は、既に2005年8月も終わりを迎えています。6月末にINSEADにて全てのMBA Programを修了した後、友人と共にアフリカや北欧を旅し、さらに上海交通 大学にて中国語の夏期講座に通った後、最終帰国をしてから早くも数週間が過ぎました。そして、9月1日からは、Bain & Companyにて、次の新しいステップが始まろうとしています。2年間に渡って書かせて頂いたレポートの最後に、この2年間の様々な経験を通 じて感じてきたこと、学んできたことをまとめさせて頂きます。
クラス・ディスカッションを通じて知った「現実の厳しさ・・・善悪の議論は別 にして、"ビジネスの世界で勝つためならば or 株主利益を最大化するためならば、手段を選ばない"という考えの人が少なからずいるという現実」を心して、これからの仕事に臨んでいきたいと思います。"自らも手段を選ばない"という意味では決してなく、"人は、必ずしも理想や理念に沿った行動をするとは限らない、というある種の現実をも踏まえた対応ができるビジネス・パーソンを目指したい"という意味です。
友人達との語らいを通じて実感してきた「生まれ育った環境が全く異なっても、人として最後に行き当たる真理は同じであり、共感できることがある幸せ」と、「生まれ育った環境の違いから、同じ物事に対して全く異なる見解や価値感を持ち合わせることがありうるという現実」を踏まえ、常に、"相手の話を聞き理解する努力"と、"自らの考えを語り理解される努力"をしていきたいと思います。
この2年間、自らの能力不足や孤独を痛感して何度となく泣くことがありましたが、Whartonを通 じてこそ出逢うことができた大切な人々、挑戦することができた貴重な経験、それらを通 じて感じ学ぶことができた多くのことに、心から幸せを感じています。
そのような場に私が身を置くことを助け支えてきて下さった友人や家族を初めとする周囲の皆様、この2年間を時々に振り返りながら文章としてまとめ多くの方に読んで頂くことのできる場をご提供下さったキャリア・インキュベーションの荒井社長を初めとする皆様、私の遅れがちなレポートを読み最後までお付き合い下さった読者の皆様には、感謝してもし尽くせない想いでいっぱいです。この場をお借りして、心からの感謝とお礼の気持ちを伝えさせて頂きたいと思います。
2年間本当にありがとうございました。
これからも末永くどうぞ宜しくお願い致します。