カリフォルニアに戻ってきて二つ目のインターンシップを始めて三週間が経った。東京での投資銀行のインターンシップは無事終わり、日本を発つ前にめでたくオファーを頂くことができた。私が働いた部署の人は本当に良い人ばかりで、最後の日には、家族共々ディズニーシーでお疲れ様会まで開いて頂いた。
私はインターンシップをする前は人間的に自分が投資銀行という業界に合ってはいないのではないかという思いがあったのだが、この夏接した人々とは気が合い、こういう人となら、また一緒に仕事がしてみたいというポジティブな思いで日本を発った。
そして9月1日にパロアルトに到着し、翌日からすぐに第二のインターン先へ出社。それまでのスーツで夜中までM&Aのプレゼン資料作成に追われるバンカーライフとは、打って変わって同じビジネスの世界のはずなのに何故かジーンズとポロシャツの環境への変化へと突入である。ベンチャーでしかも無給のインターンシップとあって、気持ちの転換は180度おこなって行ったつもりだったのだが、やはり人間のペースというものはそんなにすぐ変えられるものではない。
初日はさすがに疲れた。1ヶ月のインターンにコンピュータなんてくれないだろうと思い自分のノートブックPCを持って行ったら、案の定、PCはおろか机も電話もまったくなく、そうは言っても初日からリサーチを頼まれて、取り合えず休暇中の人のスペースを借りることにした。後から聞いたら会社全体で人数が急に増えた為オフィス自体が定員オーバーしていて、来月に新しいビルに引っ越すまで机の無い人は他にも沢山いるということだった。
勿論研修も何も無く、会社の諸事情や組織形態も分からぬまま、あっさり仕事が振られ、始まった。ボスはかなり忙しい人で初日は15分程しか話す時間が無かった。ただベンチャーの良いところは、組織がこじんまりしているゆえ、1週間もすると大体どこに何があって誰に聞けばよいかということが分かってくる。慣れると実際かなりの自由が与えられているので仕事しやすい環境であるということが分かってきた。
さて仕事もいいが、そろそろ学期の始まりも近づいてきたので2年生の秋学期に私が取るクラスを紹介したいと思う。
●Formation of New Ventures
●Investment Management and Entrepreneurial Finance
●Private Equity Investing Seminar
●Negotiation
の4つ。最初の二つのクラスは、スタンフォードGSBで最も有名な教授の一人でもあるJohn McDonaldというおじいちゃんが教えているクラスで、この先生はベンチャーキャピタリストとして有名なだけでなく、Global Equity Marketにおいては第一人者で、NASDAQ International Advisory CommitteeのChairmanをしていたこともあるということなので、かなり期待をしている。しかも来年からSabbaticalに入ってしまうのでこのクラスを取れるのは今学期が最後。
つくづく出会いとは全てタイミングであると感じる。どこの一流大学の学部もそうだと思うが、スタンフォードGSBには、研究も教え方も素晴らしくその教授の存在だけで生徒が入学を決めてしまうという位 のいわゆる「スター・プロフェッサー」が5、6人いるのだが、私は去年なぜかそういった有名人の授業がなかなか当たらず、悔しい思いをした。
Corporate Finance等はその教授の授業が受けたいというだけの理由で登録したのにもかかわらず、くじ引きでハズレを引いて同じ科目を、そのクラスが初めての受け持ちだという新米教授に当たってしまった。勿論彼も素晴らしい先生だったが(実際彼に教わっていなければ私がこの夏投資銀行の業務内容についていけたかすら疑問ではあるが)、やはりせっかくスタンフォードに来て皆と同じ学費を払っているのだから、スター教授とやらの授業も受けさせて欲しいという願望が常にあったので、今学期最も倍率が高いと言われているMcDonald教授の授業が当たってかなり興奮している。
勿論これは偶然では無く、GSBの選択科目のくじ引きシステムにはちゃんと先学期に選択科目の希望科目が与えられなかった人には次の学期でプライオリティーを高くつけるというロジックが組み込まれているのである。スタンフォードではこの平等ということに非常に熱心で、同じ科目でも登録したクラスと違う時間の教授のセクションに勝手に出たりすると、厳重に注意されたりする らしい。
それでは来月は、実際スター教授の授業がどんなものなのか、詳しく授業の風景をレポートしていきたい。