Campus Report 2004

藤本 崇 to Stanford University Graduate School of Business(全21回)

MBAホルダーへの道

Vol.15 アントレプレナーシップとボランティア

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最近Entrepreneurshipについて考えさせられる。スタンフォードGSBのカルチャーがそうさせるのか、シリコンバレーの環境がそうさせるのか、よくは分からないが、最近自分は将来起業するのであろうかということについて考えてしまう。

ビジネススクールで身に着けたスキルを100%生かすにはやはり自分でビジネスをやるべきではないのか。自分が事業を興すとしたら何をやるのか。どういう戦略でやっていくのか。実際成功する確率はどれくらいなのか。就職活動をする傍らこういった考えが頭を過ぎる。周りを見渡しても同じようなことを考えているクラスメートは多い。

リクルーティングのシーズンだというのに、会話に出てくるのは、就職情報では無く、ビジネスモデルのアイデア、マーケットのサイズ、ファイナンシングの仕方、などなど、アントレ系の話題がもっぱらである。クラスの影響も否めない。2年生の秋学期に取っている授業で出てくるケーススタディはほとんどが卒業生が自分で立ち上げた、或いはベンチャーキャピタリストとして投資したビジネスについてである。

「Formation of New Ventures」というクラスがある。このクラスでは事業を立ち上げる際にアントレプレナーが直面 する問題を取り上げて議論するもので、90%HBSのケースを使っていた1年生のときのコアコースとは対照的に、教材は全てスタンフォードで書かれたケースを使用する。しかもそのほとんどが卒業生が興したビジネスについてである。

面白いのが、毎回授業で議論し終わった後にケーススタディで登場するアントレプレナー本人がゲストで登場し、当時を振り返りケースに出て切る問題に対して実際にどのように考え、最終的な行動を取ったのかを語ってくれる。まさにアントレのシミュレーションである。

例えば先週は2年前にFitness Anywhereというポータブル・エクササイズ器具を販売する会社を立ち上げた卒業生のケース。元Navy Seal(海軍のエリート特殊部隊)だった彼は、Navyのトレーニング中に自分が考えついたエクササイズ器具を製造・販売する事業を一人で興すのだが、家族・知人からの投資によって得た資本金が早くも底をつき、協力してくれていた友人も去っていってしまう。

こういう状況におかれたアントレプレナーはどうするべきなのか。大口の売り上げを確保するべくDistributorを回るべきか、それとも一旦ビジネスを保留にしてまず戦略を立て直すのに時間を費やすべきか。或いは経営陣チームを結成するべくリクルーティングに集中するべきか、はたまたFundraisingをして資金を集めるのが先決なのではないか。

答えは一つではないが、クラスメートは夢中になってああでもないこうでもないと議論を展開する。議論しつくした後に当のアントレプレナーが出てきて、実際に自身の取ったアクションとビジネスのその後の展開を説明する。成功したケースもあれば失敗したケースもある。

また、Private Equity Seminarというクラスでは、卒業生が自分の立ち上げたプライベートエクイティ・ファンドでの投資活動についてのケーススタディをやる。自分が投資家としてビジネスを品定めし、デューディリジェンス、バリュエーションから買収後のテコ入れまでを考え、議論する。ゲストに来る卒業生はKKR、Texas Pacific Group、SPO Partners等名立たるファンドのマネージャーばかりである。忙しい中、ゲストレクチャーをする為にスタンフォードに立ち寄ってくれる。

投資家として成功している彼らのほとんどは当然の事ながらミリオネアで、中には自家用ジェットで来る人までいる。こういう授業が終わると学生達は外に出てため息を吐き、自分達も早く何かを始めなければと語り合う。時々私は自分達はただシリコンバレーのベンチャーカルチャーに洗脳されて夢を見ているだけなのではないかと自分に言い聞かせることがある。

今週もクラスメートの一人が在学中に始めたベンチャーに本腰を入れる為、GSBを中退するという決断を下した。こういう話を聞くとますます焦ってくる自分がいる。私は今人生で一番やりたいことをやっているのか。卒業までには答えを出したいと思う。

違った話題では、最近私はボランティアを始めた。十年程前にスタンフォードGSBの学生によって立ち上げられた「I Have a Dream」というプログラムで家庭教師をしている。このプログラムは、平均所得と教育レベルの低いEast Palo Altoの青少年達に、高校卒業まで家庭教師及びメンターを派遣して、大学進学率を上げることができるかというという試みだ。

East Palo Altoという町は、Palo Altoと隣接し、元はスタンフォードの学生が安く住めるような居住地域として開発されたのにも関わらず、80年代には低所得者層が追いやられる治安の悪い町へと変化し、90年代には犯罪発生率で全米ワースト3に入るようにまでなる。現在は地域のコミュニティとビジネスとの協力で少しづつ良くなってきているものの、教育水準は依然として低く、高校生徒の6割しか卒業にたどり着けないというのが現状だ。

私はこのプログラムで毎週水曜日にロマリオ君というサッカー好きの小学五年生の男の子をメンターすることになった。ロマリオは、頭が良い割に勉強が嫌いである。私はメンターとして彼の成績を向上させる義務があるのでかなり厳しくしているつもりなのだが、要領の言い彼は、勉強の時間もなんとか宿題をやらないで済むように巧みに私をサッカーの話題へと導こうとする。

また、隣に男子生徒がいると必ずちょっかいをけしかけるので、見ていないとすぐに喧嘩になってしまう。毎週ハプニングの連続だが、時間をかけて信頼関係を築いていくということは非常にやりがいがあると思う。

来月は就職活動について詳しくレポートしていくつもりです。

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