Campus Report 2004

竹中 重人 to Tuck School of Business at Dartmouth(全20回)

MBAホルダーへの道

Vol.12 モデラー生活、MBA的イヤな奴

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モデラー生活

MBAの2年目。この言葉を聞くとMBA通な日本人ならば「ゴルフ上手くなった?」と反射的に聞いてしまうほど、魅惑的な言葉である。私もすっかり余裕のある生活をするつもりでいたのだが、現在までのところ全く持ってアテが外れている。同級生から顔色が悪いと心配されるほど勉強しているのだ。原因の一つがProfessional Decision Modelingというクラスである。

昨年の授業

昨年の秋に必修科目として履修したDecision Scienceというクラスがあった。これはスプレッドシート上におけるモデリングを用いた定量 的意志決定手法について学ぶ授業であった。こう書くとなんだか大層な感じがするのであるが、要は定量 化出来るパラメーターを全て定量化して、これをスプレッドシートで計算して、最適な意志決定につなげようという話である。

例えばある工場がキャパシティを増やす投資を検討しているとする。どういう投資をするかについてはいくつか選択肢があり、それぞれの費用対効果 がよくわからないとする。ここで、モデリングの登場だ。

既存の工場内の製造プロセスを要素分解して、それぞれの要素で入力・出力がどのようになるか、それらの要素を組み合わせてどうなるのか、デマンドはどのように変動するのか。これらをスプレッドシートでモデル化(数式化)することにより、実際に投資をした後に工場としてのパフォーマンスがどの程度変わるのかを頭で何となく思い描いているよりもしっかりとした形で知ることが出来る。これが定量 分析の典型的な適用例である。

実際にこの意志決定手法を使う際に問題になりそうなのが予測するのが難しいパラメーターの数値化なのだが、ここらへんはモンテカルロ・シミュレーションの考え方を使う。大抵の場合予測するのが難しいと言っても「大体これくらいの範囲かなあ」という大雑把な見込みはあったりするので、それをある範囲内で変動する乱数として取り扱うのである。こういう乱数が現実世界にはたくさんあるのだが、乱数が複数組合わさった時に統計的にどういう結果 となるかを人間の頭で考えるのはなかなか難しい。なのでこのモデリングというやつ、なかなかお役立ちの意志決定ツールなのである。

そして選択科目

そしてこの1年生の時の定量分析のクラスがとても好きだったので、2年生の選択科目で面 白いと評判のProfessional Decision Modelingというクラスを履修した。このクラスで与えられる課題は、定量 分析モデルを用いた実在のある天然ガス田とプラントの企業価値の算出である。毎週の授業で新しい情報が与えられるので、これに基づいて毎週モデルをアップデートさせていく。毎回の授業で、次回の課題に取り組むにあたって役に立ちそうなエクセルの関数やモンテカルロ・シミュレーションのソフトウェアの機能が紹介される。

課題はグループで提出するのだが、これが意外と厄介。2年生ともなると、勉強に取り組む熱意も大分バラツキが出てくるようで、一緒にグループを組んだメンバーの一人があまりモデリングに興味のない様子(では何故この選択科目を取ったのか・・・?)。 4人グループなのだが、結局元エンジニアの僕と元I-Bankerのチームメートの数字大好きコンビで全てのモデルを作成することに。これはこれで楽しいからハッピーなのだが、問題は時間。授業で教えられる関数を使えばモデル作り自体はさほど難しく無いのだが、これまでになくモデルが大きい上、作ってて楽しいので凝り始めるともう止まらない。この他の選択科目も決して楽では無いのが多いので、結果 として毎日寝不足。明らかに1年生の時よりも余裕が無いという、有り得ない展開。ゴルフ三昧など夢のまた夢。

そして、多大な時間を投資して作り上げたモデルはもはや「作品」と呼びたいレベル。先日提出した最後のモデルに対する教授からのフィードバックは「非常にシンプルで美しい」でした。(そりゃそうだよ。本気でやったもん・・・) 久しぶりに自分のgeekな側面 が刺激されて、大変だったけど面白い授業でした。とても学びも多かったし。でも、この授業を教えていた若くてイケメンの教授は、僕なんかより数段上手のsuper geekだったな・・・

MBA的イヤな奴

MBAの授業で教わることは、その多くが「単純化の手法」と呼べるものであるかと思う。フレームワークというのはその最たる例で、「こういう枠組み(フレーム)で事象を分類したら、問題を捉えるのがもっと簡単になりますよ」という類のコンセプトである。

ケースの授業の最初によくあるのが「この会社の置かれた状況は?」という質問なのだが、僕は当初この手の大まかな質問にとてもとまどった。大抵ケースにはどっさりと情報があるので、どのように表現して良いのか今一つ判らなかったのだ。しかし、「市場の停滞」とか「競合の参入」とか、とめどなく出る学生の意見を教授が何らかの枠組みに沿って分類していくと、黒板の上には確かに「この会社の置かれた状況」と呼べるものが浮かび上がる。今となっては当たり前だが、当初は結構感心したものだ。

この単純化というのは、とてもパワフル。難しい問題を「難しいこと」として捉えようとすると、ほぼ答えは出ない。これは誰がやっても同じなので、MBA的にはここで単純化を試みる。まず問題を単純化するための枠組みを探す。適切な枠組みを見つけるのはとても難しいが、もし良い枠組みが見つかればしめたもの。もう答えは近い。枠組みに沿って元々の大きな問題をいくつかの小さな問題に分類していく。当初雲を掴むようであった話でも、扱う問題が小さくなるにつれアクションが見えやすくなる。

外資系の経営コンサルティング会社では、このMBA的単純化の手法をとても精緻にやっている。MBAの授業では「まあ大体こんな感じ」で通 るものも、コンサルでは「何でその枠組みなの? その考え方で全ての可能性を網羅出来てるの?」という所で激しい突っ込みに遭う。

MBAとイヤな奴の関係

話の前置きが長くなったが、最近自分がやや「イヤな奴」になっているような気がする。主たる原因は、この単純化の思考に慣れすぎた事だ。MBA1年目の授業とサマーインターンの経験で、物事を要素分解して考える手法は結構自分のものになったのではないかと思う。この事と自分の元からの性格が相まって、多くの物事についてシンプルにとても強い言葉で表現するようになった。例えば何か相談を受けると、こんな調子で返事をしていた。

「その問題って、結局の所AとBとCに分類できるでしょ。BとCは考えても仕方が無い話なんだから、Aだけ考えればいいわけじゃん。ということは、君がやるべき事はxxxって事になるんじゃない?」

相談を受ければ例外なく一生懸命考えて見解を述べているので、その意味では自分は誠実だと思うのだが、特に私的なシチュエーションでは上記のようなコミュニケーションは歓迎されないケースが多い。聞く側としては「理屈としてはわかるけど、こんなに物事を単純に捉えて良い筈がない」という感情的な抵抗感があるように思う。また言い方も率直で遠慮が無いので、傲慢な印象を与える場合もあるようだ。相手も何度かは聞き流してくれるのだが、何を喋ってもこの調子だとさすがに相手もキレる。最近2度ほどこうしたコミュニケーションで失敗をやらかしたので、自分としては大変反省しているのである。

この事を友達に相談すると「ああ、MBAっぽくなってるね~」とのコメント。そう、確かにいわゆるMBAっぽい話である。ついでに言うと、英語でのコミュニケーション力が十分でないので、ビジネススクールで生き抜くためにはシンプルでわかりやすい言葉でコミュニケーションを取らざるを得ないという側面 もある。とにかく、こうした「単純化+言い切り」的なコミュニケーションの傾向が、日本におけるMBAについてのネガティブなイメージの一因となっている可能性はありそうだ。自分も仮にこの先コンサルティング会社に就職などしてしまうと益々「イヤな奴化リスク」を抱える事になるので、今回の一件はしっかりと胸に刻んでおこうと思う。

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