予定を変更して今月はアンダーセン恒例のWarren Buffet氏訪問についてご紹介したいと思います。主催者はAnderson Student Asset Management (ASAM)です。彼については、世界で二番目にリッチな投資家として金融業界に長く君臨する資産運用のスペシャリストとご紹介すればよいのでしょうか。かなり高齢のはずですが、いまだ現役で活躍し、証券理論( Benjamin Graham)を忠実に実践する彼の投資スタイルは極めて保守的なバイアンドホールド。非常に堅実なライフスタイルは有名で、いまだにフォードのぼろぼろのピックアップトラックをご自分で運転されています。
毎年、トップスクールのファイナンス専攻のMBAはOmaha(彼の経営するBerkshire Hathaway 本社所在地)を訪問し、ざっくばらんなQ&Aミーティング(90分程度)を行います。シカゴのような学校とは違い、ロスからOmahaまでは遠く、2日がかりの自費の旅行となりますが20名程度の生徒が参加しました。彼とのミーティングのほかにも、彼の経営するグループ会社、Nebraska Furniture なども含まれましたが、これについては割愛させていただきたいと思います。
ミーティングはBuffet氏がふらりと会議室に登場して、スタート。飲み物はBerkshire Hathawayが大株主となっているCoca-Colaもしくはミネラルウォーター。Pepsiは置いていません。Q&Aでは様々なトピックをカバーしました。以下要約。
・キャリアアドバイス:
自分が情熱的になれる仕事でなければだめ。また、上司は自分が最も尊敬できる人を探しなさい。給料については過度に心配する必要はない。MBA時代、Buffet氏は彼がもっとも敬愛するBenjamin Graham教授にただでもよいから彼の下で働かせてほしいと申し出たものの、「ただでも高すぎる」と断られたそうです。
・過去の失敗から学んだこと:
ブランドの価値と経営陣の質は投資収益を決定する大きなファクター。
・クレジットマーケット:
世界的な低金利。スプレッドはタイト。いずれ調整されるべき。
・米国市場における不安要因:
核爆弾関連の災害、巨額の貿易赤字。米国の貿易赤字は豊かな大農場を毎日ほんの少しずつ切り売りしているようなもので、長期的には持続できない。ただし、このようなマーケットのディスロケーションは投資家に対しては裁定取引の大きなチャンス。
・今後の投資機会:
明確な答えはありませんでしたが、要約すればオルタナティブ投資。過去を振り返れば1999-2000年のREIT(不動産投資法人)市場や、2002年の韓国株式市場などいつでもどこかに投資機会はあるとのこと。
・中国市場:
中国は米国が215年前に辿った資本主義を築きはじめつつあり、高い経済成長率は本物で持続可能。中国については、特定の投資対象としてではなく、巨大な消費者の存在の方が大きなファクターと考えていらっしゃる模様。2002年のペトロチャイナへの巨額投資は、絶対価格水準が割安と思われたから行っただけであり、「中国で」事業を行っているということは彼の投資判断のファクターとはならなかったとの事です。
全体的にこのレベルの人になる物事を見る視点が「違う」というのが印象的でした。彼を見習って、投資の基本には忠実にありながらも新しい視点を常に維持できるようにがんばりたいと思います。では皆さん、また来月。