Johnson School of Managementでは、Half Semester制を採用している。10月12日、8月29日から始まった最初のHalf Semesterが終了した。
最初のHalf Semesterでは、ほとんどの1年生はコア3科目(Financial Accounting、Microeconomics、Marketing)を受講することとなっている。しかしながら、これらコア科目は基本概念の理解にフォーカスしているため、バックグラウンドがある学生には物足りない内容であるのは確かだ。そういう学生は、Exemptionという制度を活用することで受講を免除することできる。受講が始まる前に各科目のテストを受け、一定以上の点数を取った学生はそのコア科目が免除され、他科目を受講できるという制度だ。また、CPAを持っている学生はAccountingをExemptionしなければいけないことになっている。
私の場合、MarketingはExemptionの試験を受け免除することも可能ではないかと考えたが、このMarketing、特にチームワークに比重を置いており、これこそまさにJohnson MBAの醍醐味であると感じ、Exemptionは受けずにそのまま全コア3科目を受講することにした。
これらコア各科目はそれぞれ75分の授業が週3回、計7週間(1科目21講座)受講することとなる。本日は、これら各クラスの特徴について紹介していきたいと思う。
Financial Accounting
会計士としての実務経験を持ち、昨年度までHarvard Business Schoolで教えていた教官が我々のAccounting担当だった。この講義では、彼が作成したプレゼン資料を活用した講義と、講義に関連したケース演習を行う。ちなみに活用するケースはHBSのものではなく、習った内容に直結する新聞や雑誌記事を題材としたケースで、問題は彼自身が作成したものだ。
具体的な講義とケースを一例、紹介したいと思う。6回目の授業では、Revenue Recognitionに関する講義だった。この講義ではRevenue Recognitionの基本概念の説明とともに、MicrosoftのRevenue Recognitionに関するケースの紹介と演習が行われた。Microsoftが1998年におけるWindows98の売り上げのうち35%をUnearned Revenueとし、向こう2年間でそれぞれ17.5%ずつRevenueとして計上した点に関して、SEC(Securities and Exchange Commission)が問題視しているというケースである。
講義では、具体的にSECがどのようにJourney Entryするように推奨しているかについて詳しい解説が行われる。また、もしSECの指摘どおりに修正した場合、1998年、1999年のBalance Sheet、Income Statementはどのように変更されるかに関して具体的な演習問題を通 して学んでいくという流れだ。
これらバランスの取れた講義とケースを通して、Accountingというルールのみを学ぶのみならず、より実務に近い考え方も学んでいく。
参考程度に、21回の講義でのカバー内容を明記しておく。
・ Investing/Financing Decisions and the Balance Sheet
・ Income Measurement - Expense Recognition, Revenue Recognition
・ Reporting and Analyzing Cash Flows
・ Financial Statement Analysis - Current Assets, Inventory, Long-lived Assets
・ Present Value and Bonds
・ Leases, Deferred Taxes
・ Shareholders' Equity
・ Active Intercorporate Investments
Marketing
Marketingの授業(レクチャー13回、ケースディスカッション8回)は、13回のレクチャーで学んだことを、8本のケーススタディを通 して実ビジネス上で考えていくという非常に講義とケースのバランスが取れた授業内容であったと思う。
各レクチャーでは、Marketingで必須のMarketing Math及び3C(Customer, Company, Competitor)、S-T-P(Segmentation, Targeting, Positioning)、4P(Place, Price, Product, Promotion)に代表されるフレームワーク及びマーケティング戦略の理解に重きを置いた講義が提供される。
ケーススタディにおいては、それぞれのレクチャーにおいて学んだフレームワーク及びMarketing Mathをどのように活用し、意思決定に生かしていくかに関して、各学生の発言を通 して学んでいく。教官はというと、必要に応じて新たな視点/考え方を提供し全体のディスカッションを結論へ導いていくというのが一般 的な流れだ。
ご存知の方も多いと思うが、ケースにはこういう流れで意思決定を行っていくべきといった正しい解答/プロセスは存在しない。また、ケースは過去の実例であるため、具体的に登場人物がどのように意思決定・行動をし、結果 どうなったのかという事実はあるものの、そのプロセスが別に正しいとか間違っていると結論付けているわけではない。各学生の発言を自分の考えに照らし合わせ、新たな思考パターンの構築をし、将来の意思決定の際に必要な視点を身につけていくというのがこのケーススタディの目的だ。したがって、授業中での自分の視点・考え方の主張が各学生に求められる。
ケース8本のうち4本は、Half Semesterでアサインされた4~5名のチームでレポートを作成する。これら4本のケースに関する作業内容・レポート内容を簡単に紹介したいと思う。
1. South Delaware Coors:
South Delaware Coorsというビール会社が市場に新たなビールを投入するか否かを判断するために、どのレポートを入手し意思決定するべきか、それらレポートを入手して分析した結果 、どんな意思決定になったか、についてチームレポートを作成
2. Callaway Golf:
ゴルフクラブメーカーであるCallawayの現状の問題点整理、シェア拡大のためのマーケティング施策についてチームで検討しレポートを作成
3. Biopure:
牛の血液から開発された人間用血液製剤をペット市場へ導入した場合の市場可能性、人間用血液製剤の売り上げへのインパクト、導入可否判断に関してチームで検討し、プレゼンテーション形式で発表
4. Vistakon:
Johnson & Johnsonがコンタクトレンズ市場に新たに1Day Acuvueを導入した場合の市場シェア予測、カニバリゼーション(新規製品が既存自社製品のシェアを奪う現象)によるインパクト分析についてチームレポートを作成
私のチームはアメリカ人2名、インド人1名、イスラエル人1名と非常にバラエティに富んだチーム構成だった。このチーム内で、ケース内で与えられている非常に限られたデータを分析し、仮説の設定、方向性の決定、分析の実施を行っていく。
自己主張の強い多種多様なバックグラウンドを持ち合わせたメンバー同士が共同作業を行うため、時には議論が紛糾し、数時間かけたミーティングで結局何の結論も得られない状態に陥ることが何度かあった。確かに非常にフラストレーションの溜まる作業であったと思うが、限られた期限の中で、お互いの強み弱みを生かし作業を進めていくというプロセスは、最適なチームワークのイメージを構築し、今後のキャリアにおいて生かしていくという意味において非常に貴重な経験であったと思う。
Microeconomics
このMicroeconomicsは、New York TimesやBusiness Weekにおいて度々記事を投稿し、また、Microeconomics and Behavior, Fifth Editionを執筆しているRobert H. Frankによるレクチャーである。
一見すると学術的な見方に偏りがちなMicroeconomics理論を、具体的な事象に落とし込んで説明することにより、身近な事象をMicroeconomics的な考え方で見ることが出来るようになるという点で彼の講義は非常にお勧めだと思う。
具体的なカバー範囲は以下の通り
1. Competition and the Invisible Hand
2. Market Imperfections
3. Economics of Public Policy
以上が今回のレポートでの紹介となる。今回は講義内容にフォーカスしたレポートだったが、次回は、Johnson School of Managementの特徴について紹介していきたいと思う。