Vol.17　冬休み

最現在一ヶ月近くある冬休みの最中である。一年生の冬休みは3週間位 しかなかったが、二年生になると選択科目で教授によっては期末試験の代わりにレポートやプレゼンテーションを提出次第修了になるクラスが多い為（というかほとんどのクラスがそうである）、実際には二年生は学校が提示している学期末の時期よりも一、二週間程早く授業を終えることができる。

ではMBAの２年生はこの長い冬休みを使って何をしているのか。帰省、旅行、就職活動、中には四週間という短期間にも関わらずインターンシップを入れ込む奴もいれば、どこへも行かずに家族にフォーカスし、出産や子育てに励む人もいる。私の例で行くと、一週間は一人で日本へ就職活動の為一時帰国、一週間は妻とサンディエゴへ小旅行、一週間はこちらへ来る両親とBay Area近辺で一緒に過ごし、最後の一週間は来学期の予習と、ベンチャー企業とやる予定になっているプロジェクトの準備、といった具合だ。現在はその２週目を終えたところだ。

私としてはかなり詰まったスケジュールだと思っているのだが、他のクラスメートを見ていると、私のスケジュールなんかは可愛い方で中には三週間で五カ国を渡り歩く等、休暇の筈なのにビジネス・トリップ並みに密度の濃いスケジュールをこなしている者までいる。MBAの学生は忙しそうで実は暇、単に自分で自分を忙しくしているだけではないか、等とよく言われるが、周りを見渡すとこのStatementはあながち大げさとも言えないと思う。

さて就職活動についてだが、今回の帰国では自分は五日間だけのショートステイで四社を周った。一社は事業会社、後の四社はいわゆるプライベートエクイティと呼ばれる投資ファンドの会社。アメリカでプライベートエクイティの仕事に何度か応募して、Buy Sideの経験もSell Sideの経験も無いのでお断りですと門前払いを食らった経験が何回かあり、この業界への転身は自分のバックグランドではMBAを取得しただけでは無理なのでは、と感じていたのだが、日本では最近ファンドのパフォーマンスが好調でファンドサイズの拡大につき人材募集に積極的という噂を耳にし、これならチャンスはアメリカよりあるだろうと無理は承知でトライしてみる事にした。

一社につき平均七、八人と面接をセットされ、毎日分刻みのスケジュールで動かねばならず、かなり忙しい日々となった。こんなに沢山の面 接を立て続けにこなしたのは人生でも初めてだろう。朝から夕方まで面 接漬けで、夜は旧知の友人と夕飯を共にしながら近況報告及び情報交換をする。実家に泊まっていたのだが、帰った後も時差ぼけの為寝つけず、最初の数日は面 接の為の準備などをして夜を明けてしまう感じだった。結局五日間ほとんど寝ないで飛び回っていたような気がする。緊張し続けていた為かそれでも面 接中には一度も眠くなりはしなかった。

面接というものは不思議なもので、同じ会社の人でも面接する相手と自分との相性によって会話のノリというか空気がまったく違ってくる。こちらが話すネタというのは大体もう決まっていて、職務経歴、志望動機、人生経験の中での成功談、失敗談、MBAで今一番情熱を注いでいること等々だが、回を重ねていくと、それらのネタを組み合わせてなんとなく自分のストーリーというかプレゼンテーションが出来上がってくる。ただこのプレゼンを自分の持つ人間性を全て出し切って行うには相手との会話のリズムがそれが出来る雰囲気へと展開しなければならい。これはそう仕向けようとしてもこちら側だけの努力ではどうにもならないことが多い。

例えば同じ内容を話しても、それに興味を持ってくれる人、くれない（様に見える）人、その経験を応募している職種に適応するスキルだと認めてくれる人、くれない人、人によって反応は様々。五日間で三十人以上面 接したことになるが、自分が思うように自分を表現できて、相手に好印象を与えたという実感が持てた打率は、良く見積もって五分五分といったところだろうか。

幸いにも既に数社からオファーを貰っていたので日本での就職活動には多少余裕を持って臨めたが、それでも今回感じたのは自己表現というスキルにおいて、自分に向上の余地はかなりあるということ。自分はこういう人です、と胸を張ってアピールするというのはなかなか簡単そうで奥が深い。と言っても私のもう就職活動も年明けで終わりそうなので今回のLearningが役に立つのがいつになるのか分からないのだが、とにかく全てが終わりホッとして冬休みを過ごしているところなので後は結果 を待つのみなのである。