Campus Report 2004

藤本 崇 to Stanford University Graduate School of Business(全21回)

MBAホルダーへの道

Vol.20 2年生春学期のクラス

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二年生の冬学期を終了した時点で卒業するのに必要な単位は残り8単位 となった。つまり最後の春学期は4単位のクラスを二つ取るだけで卒業できるということなのだが、いろいろ事情もあり結局みっちりと16単位 4クラスを取ることになった。

既に払ってしまっている 高額の学費の元を取ろうという事もあるが、卒業後の進路としてプライベート・エクイティ・ファームへの就職が決まった為、ファイナンス系の知識及び経験が乏しい自分としては就職前にできるだけそちら方面 の授業を取り、理解だけでも深めておきたい、という事情もある。

というわけでMBA最後の学期もゴルフやパーティ三昧というわけには行かなくなってしまった。と嘆きつつも取っているクラスがどれも個人的に興味があるものばかりなので、決して退屈はしていない。私の取っているクラスは以下の通 りである。

Financial Statement Analysis

コース・タイトル通りの内容で、Financial Statementから得られる情報を元に企業のパフォーマンスを分析し、将来の予測を立て、企業価値を推測する。基本的なValuationだが、ファイナンスというよりは会計にフォーカスを当てたクラスだ。いわゆる証券アナリストと呼ばれる人達が企業価値を割り出す時のアプローチを研究し、GAAPベースのFinancial Statementから企業のFinancial Healthを判断する時の注意点等を議論する。

上場企業が市場でどういう風に評価されているかを学ぶには非常に役に立つし、卒業後に私がファンドのスタッフとして働く上で、上場企業を買収する際の「市場で支払うべき対価」を考えるプロセスの練習になるのではないかと思う。同時にincome statementやbalance sheetを読んでキーポイントを見つけ出すというプロセスの練習にもなる筈だ。

Corporate Valuation & Governance

このクラスも同じくValuationのクラスだが、Financial Statement Analysisが会計ベースのアプローチであるのに対して、この授業は主にファイナンスの理論から企業価値を考える。基本はDiscounted Cash Flowとその応用(Free cash flow, flow-to-equity)とMultiplesベースのValuationのニュアンスの違いや、Debtを増やしたときのインパクト、signaling effectが評価にもたらす影響、等だ。

これは非上場企業の企業価値を推定する場合や、企業のIntrinsic valueを見極める時の思考プロセスには参考になるので、プライベート・エクイティには多少なりとも役に立つのではないかと思っている。

The Deals

このクラスは Law Schoolの教授が 今学期初めてビジネススクール向けに教えだしたクラスで、Contractに対するアプローチを勉強する。一口にContractと言っても、スポーツ選手の年俸契約、企業M&Aに関する契約書、技術ライセンシングの契約等、種類とアプリケーションは様々だ。

ビジネスで契約を結ぶ際のリスク、更にそのリスクを最小限に抑える為に契約書に盛り込む条件をの定義の仕方、契約条件でリスクをコントロールすることによって左右される契約内容の価値の評価、等を実際の契約書をケーススタディとして扱いながら分析する。非常に面 白いし、また企業M&Aが本職となるPrivate Equityの仕事にも非常に役に立つにでは無いかと思う。

Interpersonal Dynamics (a.k.a. Touchy Feely)

このクラスはスタンフォードGSBで一番人気のあるソフト系の授業である。卒業生が振り返ってみて取って役に立ったクラスとして定評があることでも有名である。「Tグループ」という12人のグループに入り、お互いのコミュニケーション・スタイルや態度、人間性について議論する。

コミュニケーションとは言葉のExchangeだけではなく発せられた言葉を相手が受け止め、理解をして初めて成り立つものだが、時に人は自分から言葉を発しただけで理解が成立したという誤解をしがちだ。更に言った後に確認の為相手にフィードバックを求める際にも、元々自分が意図したこととは違った解釈がされているということを発見し、納得できないという事も少なくない。

情報提示→解釈→理解→納得というプロセスにおいて、先入観、感情、価値観等によって形成された個人の「リアリティー」というものが一番影響を及ぼすのだが、そのリアリティが個人によって違うものであり、その違いの存在自体を、体験をもって理解するということがこの授業の意図するところだ。

コンセプトとしては面白いが、実はこのクラスは時間的にも精神的にもハードワークを要求される。何しろ普段他人には言わないようないわゆる直球トークを12人で週に5時間もやらされる。このTグループにはリーダーはおろかルールも議題も無い。ビジネススクールのクラスなのでメンバーは必然的にクラスメートではあるが、親しい友人と同じグループになるのは避けるよう勧められるので、メンバーは顔見知りだがあまり親しく無いという関係の人が多いのだが、話す内容はパーソナルになってくるので必然的にグループの中で自分達で守秘義務を設ける。

直球で全てフィードバックを受けるので、自分のコミュニケーション・スタイルだけでなく、自分が他人からどう見られているのかを全て学ぶことができ、このクラスを取った人は良くも悪くも己を知ることになる。他のクラスメート同様、私もこのクラスに現在一番時間を取られている。

授業の他の生活であるが、卒業後日本に帰ることが決定してからはカリフォルニアの最後の日々を満喫しようと、隙があれば外に出るようにしている。水曜日の朝はSanta Cruzにサーフィンに行き、木曜日の夕方はゴルフのレッスンを取り、週末にはゴルフコースに出る。スケジューリングしていかないと2ヶ月なんてあっという間に過ぎていきそうだ。

スタンフォードで知り合った人にも日本人以外は当分もう会えないのと思うとクラスメートや教授とのディナー・イベントにも積極的に参加し、内容は勉強では無いが、予定の数だけで見ると毎日かなり多忙なスケジュールで動いている。そうかと思うと卒業後のムービング・セール、引越し、旅行等も待っているのでこれからますます忙しくなりそうである。

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