Campus Report 2004

竹中 重人 to Tuck School of Business at Dartmouth(全20回)

MBAホルダーへの道

Vol.19 振り返り(2) MBAの実態

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先日無事卒業し、日本に帰国した。日本はとても蒸し暑いけれど、言葉のストレスが無いのと食べ物が美味しいので、やはり日本の生活はとても快適だ。

今年のDartmouthの卒業式には、名誉博士号の受賞者として日本から猪谷千春氏(現IOC副会長、オリンピックの銀メダリストでダートマスの卒業生)が来ていたり、同じく名誉博士号の受賞者で86年のノーベル平和賞受賞者のエリー・ウィーゼルがスピーチをしてくれたり、素晴らしい式典であった。

さて、振り返り第二回はMBAの実態について、自分の感じたことを報告したいと思う。
学生と授業のレベル、それに就職について述べる。今回は本性を出して、少しだけ辛口でいきたい。

学生のレベル

Tuckの学生のレベルの高さはかなりのものだった。実際には非常に優秀な人からあまり優秀でない人まで比較的広いバラツキがあるのだが、優秀層のレベルの高さと厚みは半端ではない。言葉の壁を完全に無視しても到底敵わないような、今まで殆ど見たことのないようなレベルの知性の持ち主が全体の10%くらいはいたと思う。

国籍別では、アメリカ人同級生は全体的に議論の枠組みを組み立てるのが上手い人が多く、非常に勉強になった。総合的に優秀な人も多くて、この国のエリート層の厚みを実感した(ちなみに噂通り、貧相な内容の議論を見栄えのするスライドやドキュメントに仕立て上げる能力もかなりのものがあった)。留学生ではインド人全般のレベルが特に高かったと思う。良質の経験、自己主張の強さ、流暢な英語力(発音は聞き難い)、論理性と数学的素養の高さなど、米国MBA向きのスキルを持っている人材層が厚い事が主たる理由だと思う。

日本人に関してはサンプル数の関係上、Tuck以外の学校も含めて留学を通じて知り合った人全般について述べたい。各校の海外MBAに来ている日本人も総じて優秀な人が多いと思う。多くはバックグラウンド的にしっかりした人が留学してきているし、そもそも持っているエネルギー量の多い人でないとなかなか海外留学という選択肢を実現する事が出来ないため、個性的で優秀な人たちの比率は非常に高い。

一方で、トップスクールの学生だからといって皆が皆優秀とは限らない。所謂著名校の日本人学生について、クビを傾げたくなるような話を聞いたりする事もある。海外MBA卒と一括りで妙な幻想を抱いたり全面的に否定したりする意見を時々聞くが、どちらも正しくないと思う。平均レベルは高いが、能力は広くばらついているというのが実態だ。

MBAの授業のレベル

「ビジネススクールの授業は基礎レベル」という議論があるが、これは殆どのコア科目については正しい認識だと思う。スピードも量も壮絶だし議論のレベルも高いので授業についていくのは大変だが、コアで取り扱っている内容はやはり殆どが基礎レベルだ。しかし「ビジネススクールの授業は基礎レベルだから大して意味が無い」という話であれば、それは微妙な議論だ。仮にそのような事をMBA出の人が言っているならば、かなり優秀な人か、あまりMBAで学ぶ能力が高くなかった人か、あるいは単に低質な授業しか受けられなかった人だと思われる。

まず一つ言えることは、たとえ基礎レベルの授業であってもそこから経験者だって学べると言うことだ(初学者は言わずもがな)。自分の場合は一応統計やオペレーションに関してはそれなりにわかっていると思っていたけれど、やはり一度は体系立てて学べて良かったと思う。授業で扱う多くの話はわかるのだけれど、実地で覚えた知識にはやはり抜けも多く、授業で聞いて初めて理解する部分も多かった。

次に、基礎的な科目ばかりでも、MBAのように科目横断的に学ぶことで組織の中で何かを実現する能力というのは(多分)高まるという事だ。どの領域で見ても専門家と言えるレベルに無くても、やっぱりMBAなりの価値を出せる課題というのは存在すると思う。Tuckの授業はどれもマネージャの視点でどのように分析し、何を決めるのかということにフォーカスしており、各分野の壁を乗り越えて考えるために一定の成果を挙げていたと思う。もちろん実地経験は必要だけれども。

最後に、基礎が適用出来る範囲というのは非常に広く、また基礎の理解さえしっかりしていれば応用はかなり利くということが言える(そのような特性を持っている知識を称して「基礎」と呼ぶとも言える)。逆に基礎がしっかりしていない人は、難しいことを考えることは出来ない。

そういうわけで、たとえ実際に基礎レベルといえるMBAのコア授業であっても、殆どの人にとって(真面目にやれば)十分に意味あるものだ。ただし所詮は基礎という面も当然あるので、生徒側のレベルが高すぎれば授業から多くを学べない事もあるだろう。しかし、一生懸命勉強していなかったような人が「MBAなんて大した事はやってなかった」と吹聴しているケースも往々にある気がするので、そういうレベルの話はまた区別して考えるべきだ。学ぶ側が真剣で無ければ、たとえ良い授業であっても多くを学べないのは当然だ。また選択科目であれば大分レベルも高くなってくる。

逆にMBAの授業をいかにもハイレベルであるかのように語る人にも若干の注意が必要だ。選択科目の話をしているか、単に自分をすごく見せたいか、あるいは基礎レベルの内容を難しい内容であると勘違いしてしまっているだけであると考えられる(コアの授業のトピック自体は、多少の差はあれ大体どこも一緒だ)。

就職活動

英語がネイティブレベルでは無い人がアメリカで米系企業に就職可能かどうか、よく聞かれる。少なくとも我々class of 2006のTuck生であれば、十分可能であったと思う。但しそれは本気でコミットした場合の話で、生半可な心構えだとやはりかなり厳しい。

Tuckの同級生で英語でのコミュニケーションがネイティブ並とは言い難かった同級生達(当然グリーンカードも無い)の大半が、アメリカで就職を決めている。何のコネもなく最終的にかなり良い職を見つけた人も多い。しかし彼らの多くは莫大なエネルギーを就職活動に費やしていたように思う。

皆が羨むような職をなげうって留学し、多額の借金を背負い、就業ビザが無いという逆風の中で1年半もの就職活動の末、卒業を翌月に控えて就職先がまだ決まっていない状況(割とよくある話だ)のストレスなどを想像してほしい。日本人ならば日本に帰る前提で就職活動をすればそれなりの仕事を見つけるのはさほど難しくない。このような状況においても米国就職にコミット出来る人なら、米国での就職は十分可能だと思う。

次に日本での米国MBA学生の就職環境について述べる。今年はジョブ・マーケットが全体的に良かったため、コンサルティング、投資銀行、プライベート・エクイティあたりの業界が結構な数のオファーを出していた。この手の業界への転職を考えている人にとってはかなり美味しい年であったと言えると思う。ただし特定の人にオファーが集中する傾向はやはりあり、誰でも簡単にというわけではなかった。

事業会社に関しては、海外MBAの採用に積極的に評価してくれる日本の事業会社(外資系含む)の数がかなり限られている印象だ。これは個人的にやや失望した部分である。もし日本の事業会社志望でMBA留学を考えている方がいらっしゃったら、志望する業界や会社が大体決まっているのであれば、可能な限り海外MBAの採用状況やポジション・給与レベルなどを調査してから留学自体を検討されると良いのではないかと思う。

以上が学生・授業のレベル、並びに就職の実態について自分の感じたところである。次回はこのレポートの最終回として、就職先のコンサルティング会社で暫く働いてみた経験をふまえての、留学全般についての雑感を述べたいと思う。

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