長かった夏休みも終わり、いよいよ2年目の秋学期が始まりました。あと9ヶ月、卒業まで長くも短くも感じられますが、大切に過ごしたいと思います。2年目は私の生活環境も大きく変わることになりそうです。というのも、夏にこちらで第一子が産まれ、家族3人になったからです。ケロッグの同期にも、日本人それ以外を問わず子供が産まれた家族が沢山出てきました。このレポートでも、MBA留学で米国で子供を作られるつもりのある方に向けて、出産、育児事情も書いていこうと思います。
さて、授業の面では、秋学期は1年生時と同様に変則した時間割で始まり、最初の1週間が全員必修の「倫理と危機管理」の授業に当てられます。その後通常のカリキュラムに入りますが、必修科目は全て終わっているため今学期は選択科目を4つ取ることにしました。
<Values and Crisis Decision Making>
エンロン、ワールドコムの事件をきっかけとして、MBAでも企業倫理に関する授業の必修化が進んできていますが、ケロッグでは他校に先駆けて当授業を導入しました。
2年生の秋学期の初めに、全員が必修として1週間の集中授業を受けます。倫理といっても「法律破りやウソなど悪いことをしてはいけない」というのはあまりに自明であり、どういう行為が法律違反に該当するのかは競争戦略や会計の授業でも扱ってきますので、この授業ではそういう規律の話よりも、「欠陥発覚」や「環境団体からのバッシング」などの、危機の芽をどのように摘み、発生した場合にどう対処していくかという、いわゆる「危機管理」を中心に学びます。
特にマスコミと各種団体に対する対策に重点が置かれ、彼等が問題を追及する動機や世論を形成していく戦略などを的確に捉えることにより、正しい対応をとっていく方法などが紹介されます。大きなところでは「情報やノウハウを持った環境団体などとは可能なところで協力していくべし」細かいところでは「記者会見では長文を語ってはいけない=都合良く編集され真意が伝わらないので簡潔なメッセージを繰り返せ」というのがありました。
この授業の目玉は実際に危機が起きた事態のシミュレーションで、事件当日を想定しチームで個室に籠もり記者会見の計画と内容を錬るのですが、10分おきに教授が顔を出し「新事実発覚」「マスコミから取材電話あり」など、新しい情報や無理難題が次々と投げられます。事態が混乱する中で、本質的かつ緊急性の高い問題を特定し、正しい対策を決定した上で一貫したコミュニケーション計画を立てるのが以下に難しいかが身に染みてわかりました。
<Financial Decision Making>
略してFinDと呼ばれるケロッグの定番授業の一つです。コアの授業で習ったコーポレートファイナンス理論の応用として、ひたすらケーススタディーをやります。ケースの数は週2本で合計17本と多く、また全てがグループワークで毎回該当企業のCEO、CFOに対するリコメンデーションをまとめレポート形式で書かなければいけないのでワークロードの非常に高い授業です。当然ながらエクセルを駆使したフィナンシャルモデリングも沢山行いますので会計の知識も使い作業量も多いです。
取り扱うトピックとしては、キャッシュ管理、配当政策、資金調達、財務レバレッジ、プロジェクトバリュエーション、M&Aバリュエーション、バイアウト、敵対的買収対策など、企業財務における戦略的意志決定のトピックを幅広く網羅しており。扱う企業もIntel, MCI, Mariott, P&G, Uniliver, Dell, PepsiCoなど有名でかつてニュースになった事案も多く面白かったです。
日本のニュースでも、通信会社の大規模投資に伴う資金調達の話題や、M&A、敵対的買収などの話題が多く取り上げられるようになってきてますが、そのような話題の理解に直結したMBAらしい授業であり、大いに勉強になりました。週数回のミーティングでしたがグループメンバーにも恵まれ、準備も毎回盛り上がり大変充実した思い出に残る授業でした。
事前に受講しているFinance I/IIで理論をきっちり勉強しているので、ケースを読んだ瞬間に「何がイシューなのか」が察知できることも多く、また授業での解説も理論的納得感を持って聞くことができ、ケロッグの「レクチャー+ケース」のバランスのとれたアプローチの良さが実感できる授業でもありました。
<米国での出産事情>
冒頭でお話ししたとおり、この夏に妻がこちらの病院で息子を出産しました。ケロッグ日本人2年生の中では3人目のエバンストンでの出産になりました。就学中に子供を作るカップルは結構な数がいるのですが、就学中に子供を作るメリットとしては、なんと言っても子供に接していられる時間が社会人に比べて多く取れることがあります。コンサル・金融などの典型的なMBA卒の仕事は遅い帰宅が当たり前ですから、父親には貴重な子供と過ごした時間が作れる同時に、母親の負担もいくらか軽減されます。
またアメリカでは学生で世帯収入がない場合は国籍問わず出産関連費用を州が負担してくれるため、金銭的にもなんとかなるようになっています。アメリカは産婦人科の医療レベル・サービスレベルも高く、日本では限られた病院でした提供されない無痛分娩と個室病棟が標準です(ただし出産後3日で退院ですが)。最後に米国は出生地主義をとっているので、子供は日米の二重国籍を取得することが可能です(22歳までにどちらかを要選択)。
エバンストンには、エバンストン・ホスピタルという大病院があり、ケロッグ生の奥さんの殆どがそこで出産します。無料の日本語通訳が毎回自動的についてきました。全米ランキング100位に入るエバンストン・ホスピタルはホテルのような美しい建物で雰囲気も良く、車で10分ぐらいで通える距離にありましたので授業の合間を縫って夫婦で診察に行けたりと大変便利で、高級住宅街に立地するケロッグの地の利を感じることが出来ました。