我が校Ross School of Businessでは、他校に比べ長い夏休みが与えられます。他校が12-14週間程度夏休みに充てるのに対し、私たちは18週間もの間授業がありません。ただ年間の授業期間が短いのかというとそういうわけでもなく、単に冬休みや試験期間が短くなっているだけのようです(夏休み中にドイツのWHUという提携ビジネススクールでサマーコースを履修することもできます。私は残念ながら3箇所でインターンシップをするというハードスケジュールを選んだため、このサマーコースは体験することができませんでした) 。
18週間の休暇中17週間働きづめの夏・・・今回はその体験をお伝えします。自らのバックグラウンドであるマーケティングをより深めたい、そう思いマーケティング職を中心に就職活動をしてきましたが、一言でマーケティングといっても業界によって求められるスキルは大きく異なるはず。自分の特性がより活かせるのはどのような環境なのか?まずはそれを体験してみたいと思いました。
インターンシップをすることとなったのは米系航空会社、米系製薬会社、そして米系消費財メーカーです。それぞれ全く異なる業界ですが、全てマーケティング職でのインターンです。幸運にもスケジュール調整において当方の希望を聞き入れてくださった3社でお世話になることとなりました。
■米系航空会社(8週間)
MAP終了後、即開始したのがこのUSでのインターンシップです。過去に日本国外での就労経験がない私としては、周囲と対等に働けるコミュニケーション能力があるかどうか少々心配だったのですが、実際にインターンを開始してみるとそのような心配は杞憂に終わりました。やはりグローバルな舞台でビジネスを繰り広げる業界は、社員も皆国際感覚に優れており、大変居心地良く働くことができました。
私が取り組んでいたのは、オフシーズン中の収益低下予測に基づきキャンセル便を提案するプロジェクトなのですが、キャンセル便によって発生する損失をOpportunity CostやRecapture Revenueをもとに算出しどの程度の収益を保持したいかという前提次第で其々の便をキャンセルするべきか否かという結論が出てくるプログラムを作成していました。
その中で細かい計算方法など説明に苦労することも度々でしたが、周囲はいつも理解できるまで私の意見に耳を傾けてくれ、説明の上手下手に関わらず正論は通るという環境でした。社員のバックグラウンドが単に多国籍だというだけではなく、皆が異なる意見や文化にオープンであるという点において、グローバルな会社で働く楽しさを実感できたインターンシップだったと思います。
■米系製薬会社(7週間)
1つめのインターンが終了し週末を使い帰国、時差ボケを解消する間もなくすぐに2つめのインターンを開始しました。ここで私に与えられた課題は、既に発売されているある製品に関するマーケティング戦略・実施方法・結果を検証し、今後の改善案を提示するというものでした。ドクターやMRへのインタビュー、ROI分析を経てプログラムの収益率向上のために組織構造の見直し、コミュニケーション方法の改善、目標設定の変更を提案するといったプロジェクトです。
ここでのインターンシップは最後にトップ・マネジメントを前にしてのプレゼンテーションの機会が頂け、内容次第では会社に大きなインパクトを与えることが可能です。他業種のバックグラウンドを持つインターン生のストレートな意見に対するマネジメントからの期待は大変大きく、インタビューや学会出席のための出張やオンラインでの調査などプロジェクトを進める上でプラスとなるものには会社側は惜しみなく最大限のサポートをしてくれます。
私も7週間中6回も出張に出、製品に関する見識を深めたり、現場の意見を伺いに実際に医療機関を訪れるなど、多くの経験をさせて頂きました。インターンの学生同士の交流も盛んでお互いに最終プレゼンテーションのリハーサルをし合ったり、良い関係を築くことができました。また、幸運にも理想的な直属上司に恵まれ、プロジェクト終盤においては週末も電話ミーティングをし、私にとっては大きな支えでした。過去未経験の製薬マーケティングでしたが、まさに周囲のサポートのおかげで良い結果を出すことができたと思っています。
■米系消費財メーカー(2週間)
最後に迎えたのは2週間完結の短期インターンです。当初2週間でできることなんて知れているのでは?との思いもあったのですが実際にインターンを開始してみると、かなり挑戦しがいのある課題を頂くことができ期待以上の充実感がありました。初日に与えられた課題はある新商品に関する長期マーケティング戦略で、その戦略を前提とした2010年までのSales Forecastを立てるというもの。
私にとっては2週間の中でのタイムマネジメントが何よりもの課題でした。MAPやそれまでのインターンシップが約2ヶ月のタイムスパンを基本としていたことと比較すると、2週間で満足のいくレベルの結論へ到達するには1日が4日分の重みを持つと認識して動かなくてはなりません。出来る限り早く戦略立案へ移れるよう、まずは商品のバックグラウンドや競合他社の情報を吸収し、過去のトレンドなどを分析、仮説を立てては直属のマネジャーとのディスカッションの機会を通じ頻繁に意見交換を行いました。
与えられた期間が限られているがゆえに、仮説検証の方向性が本題からずれ時間のロスをするといったことは避けたいと考えていたため、毎日周囲との意見交換を経て軌道修正をこまめに行う努力をしました。最終的には、例え2週間のインターンといえども存在価値のある結果を出したい、会社に意義のある貢献がしたい、という思いがあったため、"2週間なりの"結果に落ち着くことがないよう自分に対する甘えをなくそうと心がけました。
どんなに短期間のプロジェクトであっても、最後は自分の存在価値をどこまでだせるか、会社に意義ある提案ができるかどうか、に尽きます。また、他業界と比較し流れの速い消費財の世界ではいかに迅速に思考を進めていくことができるかが重要です。そのスピード感を楽しむことができたのは私自身の性格にそれが向いていたからなのではないかと思います。
MAPと3社でのサマーインターンシップを合わせると計半年もの間授業を受けず働いているということになるのですが、ほぼ2ヶ月ごとに環境を変え異なるプロジェクトに取り組む中で、自分に足りないものや更に学ぶ必要のある分野が改めてクリアーに見えてきました。インターンづくめの夏を経て、次は新しい課題とともに2年生の授業のスタート。モチベーションも充分です!