US Newsでのコーネル大学の全米大学総合ランキングは、1980年代には大体TOP5~10にランクされ、TOP10スクールというのが一般的な印象でした。ところが、2000年代に入ると軒並みTOP10ランキングから外れることが多くなり、2004年のランキングでは14位。プログラムや研究設備、研究成果などで世界トップクラスの評価を得ているにも関わらず、このようにスクールのランキングが落ち続けていることに対してアラムナイや学生の間で問題視する動きが出始めました。
そこで2004年、コーネル大学ジョンソンスクールのマクロエコノミクスの教授であるRobert Frankが中心となりランキング向上検討委員会を設置、問題点の洗い出しと対応策の検討が数ヶ月かけて行われました。田舎にキャンパスがあることによるアクセスの悪さ、明確なイメージの欠如、アラムナイによるアピール不足などといった数多くの問題点が明確になる中で、特に注目されたのが、"コーネル大学ブランド"に対する認識の低さでした。
ブランド認知度調査を行ったところ、コーネルというとIVYリーグの1校と認知されているものの、学校の印象をより明確に表すスクールカラー、ロゴ、マスコットといったブランドイメージに対する認知度が非常に低いという結果がでました。そこで、明確にコーネル大学のイメージ示し、ブランド再構築を実現するためのコーネル大学ブランド再構築プランが2005年よりスタートしました。
まずはロゴの見直しから始まりました。2005年時まで活用していたコーネル大学のロゴは大変不評でした。赤い正方形に"Cornell"とだけ書かれたロゴは、旧ロシアの共産主義を彷彿させ、また一見すると洋服店のJC Pennyと見間違えるようなデザインで、IVYリーグとしての伝統や気品を全く感じさせないものでした
以前のロゴ
JP Pennyのロゴ
ジョンソンスクールに至っては独自のロゴを作成し、校舎であるSage Hallをモチーフにしたものを活用していました。コーネル大学内にありながらジョンソンスクールが個別ロゴを活用していることは以前より問題視されていました。
Sage Hall
ジョンソンスクールのロゴ
そこで2005年、このロゴデザインを抜本的に見直し、盾と開いた本を真ん中に配置した、歴史と伝統を感じさせるデザインに変更されました。歴史と伝統を強調するため、ロゴの中には大学の創設年数が記載されています。また、スクールカラーである赤を基調としつつも状況に応じて使い分けができるよう、カラー、赤字白抜きのロゴ3種類がデザインされました。
カラー
赤字ロゴ
白抜きロゴ
各スクールについても独自のロゴを廃止し、コーネル大学のロゴを活用することで、全校で統一感のあるイメージの構築を推し進めています。
ジョンソンスクールロゴ
ホテルスクールロゴ
エンジニアリングスクールロゴ
このロゴにとどまらず、ブランド構築へ向けて大学グッズについても大幅な見直しがなされました。以前よりあったTシャツ、パーカー、帽子、文房具用品、スクールリングは新たなロゴで生まれ変わり、スクールフラッグ、時計、カフス、ゴルフグッズ、ジャージなどといった多種多様なコーネルグッズも商品ラインアップに加わりました。これらコーネルグッズはコーネルショップと呼ばれる学校の売店で主に販売されています。年に数回20%程度の割引セールも開かれ、大学生/院生、教授だけでなく、家族やキャンパス訪問者も購入して行きます。
キャンパスを歩いていると、新たなコーネルグッツを身にまとった学生を至るところで見受けられるようになりました。また、コーネル大学を紹介した雑誌や書籍でも、この新たなロゴが使われ、ブランド再構築の第一歩は着実に浸透しつつあるようです。
ちなみに、2007年のUS Newsにおけるコーネル大学の全米総合ランキングはというと・・・・12位。確かにイメージ向上策としてのロゴ見直しはうまくいったように見受けられますが、コーネル大学のランキングの向上とまでは至っていないようです。近い将来このコーネル大学のアラムナイの一員となるものとして、ロゴの見直しだけでなく、さらに踏み込んだ抜本的なイメージの改善とランキングの向上を期待したいところです。