Campus Report 2003

王 夏亮 to Columbia Business School, Columbia University(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.2 ブラックアウトから始まった苦労の連続

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史上最悪なブラックアウトに遭遇

8月14日、木曜日、小雨。なんだかすっきりとしない天気。見送りに来た家族や友達に手を振って妻と出国ロビーに入った。あぁ、これで夢の国であるアメリカに行けるのだなぁとちょっと感無量 。13時間のフライトを映画やコメディを見て過ごしたら、あっという間にNYのJFK空港に着いた。

5年ぶりのNYなので、多少の感慨があったものの、これからの新しい生活に不安を感じ始めた。まぁ、何とかなるのだろうと無理やり自分自身に言い聞かせて、入国手続きをするための列の最後に並んだ。すると突然、廊下やロビーなどの電気が消え、一瞬非常灯のみの明かりとなった。突然の事態に驚きとざわめきの声で一瞬何が起こったのかと不安になった。

暫く後に明かりが戻り、停電によるものだったことが分かった。すぐに緊急用の電気で空港内は明かりが戻っていたので、その時はまさかそれがNY有史来最大な停電とは夢にも思わなかった。停電の影響からかコンピューターが作動せず、列がなかなか進まない。妻のみならず、私までイライラしてきた。

ようやく、私達の番になったがI-20の原本を見せるように言われた。コピーならいくらでもすぐに見せられるが、原本はトランクの中。しかもどのトランクに入っているのか忘れてしまった。妻を入国審査カウンターの中に一人残し、トランクを取りに向かうが、大停電の中で荷物ベルトが止まっていて荷物が出てこない。下手をすると今日は入国審査で足止めに会うのかと一瞬不安が脳裏をよぎった。幸いなことに、空港職員がベルトの代わりに荷物を運び出してくれたので、何とか荷物を受け取りI-20を探し出し、無事入国手続きを済ませることが出来た。

入国できたのはいいが、大停電で交通を含めたNYのインフラが麻痺しているとの事。幸いなことに、その日妻の友達が車で迎えに来てくれていて、彼らの家に泊まることになっていた。宿は確保できているが、大停電で信号は全て止まり、街中の電灯も全て消えている。周りが真っ暗であっちこっち蝋燭が点られ、なんだか中世に戻ったような気がする。反対に町中が真っ暗であったために今までに見たことがない程の美しい星空を見ることが出来た。

後で分かったことだったが、電力会社の設備の問題でイリノイ州のとある場所の電線から問題が発生し、その後雪達磨的にアメリカの中西部及び東北部に伝染した。天災などを除けば、設備問題で東京を含め、日本の大都市が総停電になるのは日本人の感覚からいくと、全く理解できないことだが、大雑把なアメリカだから、まぁそんなものかなと妙に一人で納得した。NYに到着した早々、NY史上最大な停電に遭遇するのはアンラッキーだけど、改めて日本とは違う国だと実感した。

文化の違いに戸惑う

異なる国なので、文化が異なってくるのは当然だと思っているが、それにしても、日米文化の違いには最初非常に戸惑った。例えば、スーパーに行ったら、店員がだるそうに"Next!!"と言っているのを聞いて驚いた。仕舞いには、お金をレジ台の上に置いたら、店員が手を出して待っている。お金を手の上に乗せろ、と言っているのだ。"お客様は神様"のサービス大国日本では、コンビニだろうと何処だろうとそんな態度は有り得ない。

最初はスーパーだからかと思ったが、どこに行っても同じような対応なので、そういうものなのだと諦めがついた。最初は結構戸惑いも感じるが、慣れてくると、ある意味では楽である。外国人として日本を見てきて、長年住んで感じていたのは日本人が非常に細かく、理解が出来ないことも多々あった。アメリカは非常に大雑把なので、あまり細かいところに気にしない私にとっては最適かもしれない。

もう一つ強く感じた事ははアメリカは意外にドメスティックであること。渡米前に想像したNYは、非常にインターナショナルでさまざまな人種の人や文化が交わりあった世界であった。NYが人種の坩堝であることには変わりがないが、アメリカ人の意識が非常にドメスティックである事に驚いた。しかし、考え方を変えれば私にとって良い面 もある。ドメスティックであることは強制的に自分自身をその文化圏に溶け込ませることになる。

正直なところ、最初の一ヶ月は私にとっては苦痛の一ヶ月であった。学生達が非常に早口である上に、彼らの会話の中に俗語などがたくさん入っているので、当初は何を言っているのか全く分からなかった。学生の親睦を図るため、学校が頻繁に"Happy Hour"を設けてくれたが、行ってみれば、皆楽しそうに会談しているが、全くその会話に入り込めず、一人でたじたじしていることがよくあった。友達にそれが"Happy Hour"ではなく、"Exhaustive Hour"だと言ったら、えらく受けた記憶がある。

一ヶ月経ってから状況が徐々に変わってきて、少しずつではあるが、周りとコミュニケーションが取れるようになってきた。言葉の壁を少しずつ乗り越え、時間をかけてアメリカの文化や生活に溶け込む事が出来れば、この国や人々をより理解する事ができ、また自分自身の可能性も広がることになるに違いない。

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