Campus Report 2003

菊澤 桂 to NYU Stern School of Business(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.8 ポーター嫌い(Generic Strategy VS QCDDM Evaluation)

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私はストラテジーが好きである。ストラテジーとは何ぞや、とか、何のためのストラテジーか、ということになると話はややこしくなるし、はっきり答えられる自信もまだ無いけれども、一言でいえば戦略である。作るだけではなくて、詳細とステップを考えることも、補正することも、遂行すること、反省(?)まで含めて好きだと思っている。

MBAに来れば、10年後、15年後、自分がマネージャーとなった際にも適用出来るストラテジーの知識が学べると思っていたふしもある。出来れば、ストラテジーを専攻の一つに、とも考えていた(もう一つはファイナンスと決めている)ところがNYUはストラテジーが弱い。

今学期は、「Business Strategy」、「Advanced Strategy Analysis」の二つのコースを取っている。弱いと言っても、教授の数が少ないとか、授業の数が極端に少ないとか、使えるお金が少ないとか、そういうことではない。

まず、マテリアルが古く、ケーススタディが国内(US)に偏っている。何故ファイナンスの授業は皆、国際経営学のNYUの名に相応しく国際的にバランスの取れた内容となっているのに、さらにそうあるべきなストラテジーは国内市場と国内企業に偏っているのか?インターナショナル学生の多くがことあるごとに不満を申し立てているのだが、一向に改善される気配がない。

また、教授の平均年齢が高いこともおおいに不満である。私は別にお年寄りに偏見を持っているわけではないので、授業中に手が震えていても、カツラで教壇に立とう(実際は椅子に座りっぱなし)とも、質の高い授業が受けられれば文句はない。

何が気に入らないかというと、年寄り教授たちは自分たちが時代の風潮に遅れを取っていないことを証明したいあまり、皆ハイテク企業ばかり題材にするのだ。インテルしかり、Apple、マイクロソフト、デル。もしくは、ファイナンス系の生徒の受けを狙ってか、NY近辺で投資先として話題に登ることの多い製薬かテレコム。それが悪いとは言わない。時代の風潮にあっていると思うし、次世代を担うであろう企業にはそれなりの戦略が息づいている。

しかし、世の中の全ての企業に戦略が存在し、それが皆未来を見据えているとしたら、ある分野に特化することによって見落とすものはあまりにも大きい。例えばデル、コンピューターという小さな枠組みの中で見ればその成功は大きく、素晴らしいもののように見える。

しかし、産業全体という横軸を通して見たときに、JustInTimeはトヨタや自動車業界がDellとは比較にならないほど全世界に散らばった生産拠点においてMakeToOrderのレベルまでひっぱりあげつつあるものであるし、それをまだまだ規制の緩いコンピューター業界で成し遂げたと言われてもそれほど感心しない。SupplyChainManagement だって、自動車よりはるかに部品点数が少なくしかも小さいコンピューター部品においてサプライヤーを20社にしたと聞いても驚かない。

むしろ、これからどんどん業界が成熟して、輸出入や環境に対する規制もどんどん厳しくなるなかで、どのように発展していくのか見ものだな、と思いを馳せてしまう。まだまだ余地はたくさんあるように見える。それに、私の少ない知識の中でも取り上げて欲しい企業はほかにたくさん、たくさんあるのだ。

たとえば、斬新なHRM改革やCSRの模索を行っているBP、国営から民営に切り替わり世界に翼を広げているDHL(必ずしも成功しているとは言えないが)、中国で高級化粧品(SKII)の販売に成功しているナイストライなP&G、自動車会社が必ず直面 する環境と車社会の共存に世界に先駆けてチャレンジしているMCA等々。

そして、かなり批判的になってしまうが、時代の風潮に同調していてどうするのだ、とも言いたい。ビジネスにおいてアカデミアが成り立つのは、常に時代に先駆けて新しい戦略を研究する時間と頭とお金があるからだと私は思っている。同調するのではなくて先を行かなくてはその存在意識を失くしてしまうし、時代に先駆ける心意気が無くしては、トップ中のトップビジネススクールになることはいつまでたっても出来ないだろう。

ただ、一つだけことわっておきたいのは、ストラテジーが弱いからといって、NYUの卒業生が経営者やコンサルタントになれないかと言うと、決してそんなことはない。

NYU出身の有名なVPやCEOは日本にもアメリカにもたくさんいらっしゃるし、コンサルタントとして活躍されている方々も多い。ビジネスセンスと結果 に執着する心意気があって、ファイナンスに強いとあれば(NYUのファイナンスは本当に素晴らしい。最近あがってきているマーケティングもこれからは楽しみだ)、成功のチャンスはゴロゴロ転がっている(??? I hope....)のかもしれない。

ストラテジーの授業中、どうしてもカチンときたり、引っ掛かりを感じるのがポーターである。教授たちは皆彼がとっても好きなようなのだが、私は彼とは相性が悪いらしく、彼のフレームワークや、理論、大げさな身振りにはどことなく馴染めない。


80年代から90年代初頭にかけて彼がコンサルティングをした会社の幾つかが潰れたり、経営困難に陥ったり吸収合併されてしまっているという事実には目をつぶるとして、どうしても馴染めないのが、Generic Strategyである(下図)。

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これは企業をその特化する(Cost、もしくはDifferentiation)戦略によって分類し、競争力を分析するためのフレームワークで、私たちはこれにほかのフレームワーク、例えばSevenSources(CompetitiveAdvantageの詳細評価)、FiveForces(産業(マーケット)全体分析)を組み合わせて分析を行うように教わった。

これはこれで、とても簡単でわかりやすい(Nice&Easy)分類だとは思うのだが、例えばDellではないが、バイヤーが絶大なバーゲニングパワーを誇り、製品がコモディティーに近い場合、バイヤーはサプライヤーに対して、QCDDM(下図)のすべての側面 において優れていることを求めるであろう。

さらにバイヤーは全ての可能性があるサプライヤーに対して同様のQCDDM品質、さらにそれを維持向上させることを求めるはずだ。この場合、企業のとるべき戦略は、GenericStrategy上で分析することは不可能だ。その産業にとって一番均衡の取れる一点にすべての企業が集中してしまう。

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バイヤーにとってコストがとても重要なサプライヤー決定要因であることには違いないはずであるが、コストとその他をひとからげにした二軸では、とてもその企業と長期に渡る関係を築こうというときに、評価しきれないだろう。

企業側も、今後の長期戦略を立てるとき、自社の強みを把握し、発展させていこうというときに、この二軸で評価はしないであろう。そしてこの構図が適用される産業は、B2B、バイヤーのバーゲニングパワー大、コモディティーということであれば、無視出来ない程度には多いはずである。

さてポーターさん、どうすればいいでしょうか?と聞いてみたいところだが、ポーターももうおじいさんである。米国MBAストラテジー界(そんなものがあるとすれば)も彼にばかり頼ってはいられないだろう。NYUもそこのところを自覚して未来に適用出来るストラテジーを研究・伝授して欲しいものだ。

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