Campus Report 2004

岩瀬 大輔 to Harvard Business School(全16回)

MBAホルダーへの道

Vol.1 ボストン入りして早10日

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Settling in

ボストン入りしてから早や10日が過ぎました。成田を発った7月20日、関東一帯は記録的な猛暑に見舞われ、出国に際しては日本を離れる寂しさよりも、襲いかかる蒸し暑さから解放される安堵感に包まれたことを記憶しています。しかし、いざこちらに来てみると、空気は乾燥しているものの予想以上に陽射しが強く、気温が30度を越える日も少なくなく、結局日本とさほど変わらない「夏」を感じさせられる毎日を送っています。

これから2年間の学生生活を過ごすこととなる新居は、学校から南西に徒歩15分、ハーヴァード・スクエアからチャールズ川を越えて南に走る North Harvard Streetから少しなかに入った、Allston市の閑静な住宅街にあります。縦半分で二戸に分けられた3階建ての白い家は、学校から近すぎず遠すぎない適度な距離、3BRのふんだんなスペース、ピアノを気兼ねなく弾ける環境、そして前庭にそびえ立つ大きな木が気に入り、今年の夏に卒業したHBSの学生一家から引き継いで入居しました。

最初の1週間は、家財道具を一から揃えるため、慣れない左ハンドルのレンタカーで近所のショッピングモールに出かけ、トランクいっぱいに買い物をして戻っては、足りないものに気がついて再び店へ向かう、という日々が続きましたが、ようやく生活用品もひと通 り揃い、落ち着いて新しい生活を送り始めています。数週間後に日本に帰国予定の大学教授から自動車を買い受ける約束をし、美味しいお刺身が買える魚屋にも足を運び、チャイナタウンで飲茶を堪能もしまし、近くの小さな図書館のお姉さんたちもすっかり顔見知りになりました。

今週はボストン市内で今年の大統領選挙に向けた民主党の全国党大会が開催されていたため、市内は厳戒態勢が敷かれ、メディアは連日党大会の様子を報じています。ここマサチューセッツ州はケリーの地元であることもあって、街を歩くビジネスマン、レストランの女主人からべーグルショップのアルバイト店員まで、誰もが仕事そっちのけで選挙の趨勢を熱く議論している姿が見られます。その党大会は、一昨日ケリーの大方の期待を裏切る見事な受託演説によって幕を下ろし、秋の選挙に向けて本格的な火ぶたが切られました。

うちの近所では、そんな都心の喧騒に煩わされることはなく、時間がゆったりと流れているように感じます。路上駐車された住民の車が狭い一方通 行の道をふさぎ、簡素で大きな家が立ち並ぶこの住宅街は、さまざまな階層や人種の家族の生活の場となっているようです。平日の昼下がりに近所をどことなく散歩していると、玄関脇に構えたテラスで日向ぼっこをする人たちが、ぶっきらぼうな表情で私たちに目をやっては、再び手元の本に視線を戻します。これから2年後、この街並みは私の目にどのように映るのでしょうか。

Six Samurai

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この夏、Class of 2006としてともに入学する日本人学生は総勢10名。出身母体は総合商社が4名、官庁が2名、プライベート・エクイティ・ファンド2名、そして証券会社と外資系ラグジャリーブランドメーカーがそれぞれ1名ずつです。年齢は下が26歳から上が33歳で、10名のうち女性は3名。合格発表以来、頻繁なメイルのやり取りと幾たびもの夜の会合を通 じてすっかり意気投合したこの仲間は、一人一人が知性と機知、愛嬌と人間的な魅力にあふれた人材で、彼らと出会えただけでもHBSに来てよかったと、早くも感じています。

到着した夜、11時過ぎにもかかわらず温かくホームパーティで迎えてくれたのは、一足先に始まるPre-MBAのコースに参加するためにボストン入りしていた6人でした。成田から直行便が出ていないボストンへは、ニューヨークかシカゴを経由して14~5時間の長旅となります。コロナの小瓶を飲み干したのちに、最後の食事から時間が空いたお腹を膨らせるべく、少し冷めてしまったデリバリーの中華料理に箸を伸ばし、夜更けまで先陣部隊のこれまでの体験談に耳を傾けたのでした。

Pre-MBAコースは、本コースのいわばウォームアップとして非英語圏の学生を対象に行なわれるもので、私は外資系企業で働いていたためか、受講の対象外となりました。日本のほかには韓国や中国、ロシア、南米、東欧などの国から40名を越える学生が参加しているそうです。このなかで日本チームは早くもリーダーシップを発揮し、コース開始の前夜に全員に飲み会の号令をかけていました。彼ら「六人の侍」がクラスメイトたちに送ったメイルには、以下の通 りのウィットに富んだ、インパクトある紹介が含まれていました

"Here is a brief introduction of the Seven, no, I mean the Six Samurais:

"EIJI": Don't worry; tomorrow's party is on Japanese tax payers!?
"GOKI": Don't mess up with him. He is a black belt, and always carries a sword.
"KIMI": The ALL NIGHTER. Be careful, he is unstoppable once he starts drinking.
"NORI": I bet you haven't seen a Sumo Wrestler yet. Well, you are about to meet one tomorrow.
"TA-KE": The finance guy that least knows about "Finance". But a Nobel Prize Winner in customer entertainment "Financing". Definitely not a CFO guy, but a natural born CEO, the Chief Entertainment Officer.
"YU-SKE": Nori's twin brother, the other "YOKOZUNA", the Sumo Master."

会合には木刀や力士の着ぐるみを持参しHBSに来たばかりで緊張しているクラスメイトたちを圧倒し、「六人の侍」はすっかり人気者となったようです。ある同級生には、「悪かった、日本人は皆シャイで静かだと誤解していた」と言われたそうです。

The Warm Up

Pre-MBAの受講者の一人は始まる前に「選ばれし者たちが、毎晩新しい仲間と深夜まで飲み明かし、翌日も二日酔いに負けずに元気にクラスで手を反復上げ下げすることを訓練をする講習」と冗談をいっていました。しかし、いざ始まってみると講義内容は「本番」とほとんど変わらず、毎日8時から5時まで4週間、約40のケーススタディをこなすカリキュラムで、最初からフル回転のようです。予習復習やスタディーグループに追われ、すでに睡眠3~4時間のハードスケジュールとのこと。内容は期待以上に充実しているようで、昨日も一人の侍から充実感あふれたとのメイルがありました

"昨日は日産のTURNAROUNDのケースをやりました。Prof Piperの最後のコメントに大感動。
1. リーダーシップとは、WACCの計算、戦略立案ではない。苦境での戦略のImplementation, Executionだ。

2. リーダーシップとは、金を稼ぐことではなく、世の中をよりよいところにする為に、人を助け、会社を助け、社会に貢献することだ。優秀な金持ちをさらに超金持ちにする為に俺は教えているのではない。大志をもってがんばってほしい。

3. リーダーシップとは、人を使うことではない。人をひきつけ、人にビジョンを伝え、希望を与えることだ。

PreMBAがこんなにえぐいとは思っていなかったし、こんなに多くを学び、こんなに充実感を得られるとは思いませんでした。クラスメート全員が同じことを言っています。毎日睡眠時間3~4時間の毎日ですが最高。

これがホンチャンになったらどうなるのだろうと思うとワクワク、ゾクゾクします。"

引越し前は1ヶ月以上旅行などをしてすっかり「平和ぼけ」していた私も、このメイルを読んで、身が引き締まる思いでした。明日からは約200名の学生を対象にした、会計・財務を2週間でおさらいするAnalytics Courseが始まるそうです。こちらも私は対象外となっているため、ついのんびりしてしまいそうなのですが、最近触っていなかったリーディングの課題図書を、引越しの箱の底から引っ張り出してきて、そろそろきちんと準備を始める必要がありそうです。

Getting Ready...for What?

とはいえ、授業が始まる8月23日まで、まだ3週間あります。この時間を使って、アメリカという国をもう少し知っていくとともに、改めてこれまでの自分の歩みを振り返り、今後2年間をどのように過ごしていくか、ゆっくりと考えていきたいと思っています。自宅の3階に構えた勉強部屋のカウチに横になり、今後2年間で何を得ようとするか、考えをめぐらせてみました。

思うに、ビジネススクールは大人のための学びの場です。ある程度カリキュラムが決められているとはいえ、学部までのように、何か決められた内容を受動的に学習するだけの場ではないはずです。2年間で何を学べるか、どれだけ多くのことを吸収できるかは、ひとえに個々人の「学ぶ力」に依っていると思います。

昨年の冬に留学の意思を周囲の人に告げた際、多くの人から「今さらMBAで多くのことを学べるのか」と言われました。また、とある著名なHBSの卒業生が、「私はHBSで何も学ばなかった」と言っていました。これらの声は、「学ぶ力」という視点が欠けているように思えます。

HBSでは、学ぶためのリソースに際限はないはずです。世界中から集まった優秀なクラスメイトたち、経営学の研究をリードする一流の教授陣、年数をかけて練られてきた教材のケース、著名なビジネスパーソンを招いた各種セミナー、その他多岐にわたる課外活動。これらの中で一人一人の学生はこれまでの経験に基づいて築いてきた、マネジメントやリーダーシップに関する自分なりの価値観や問題意識をぶつけ、全力で考え抜くことによって、通 常の業務の中でオン・ザ・ジョブで身につけていくよりもはるかに速いスピードで、幅広いbusiness disciplineを学んでいくことができるのだ、と期待しています。

より具体的には、以下の項目をこれから2年間で達成したいと考えています

・ これまでのキャリアで経験を積んできたファイナンスや戦略論だけでなく、マーケティング、オペレーション、テクノロジー、組織、リーダーシップ、政府とビジネスのあり方など、幅広いbusiness disciplineを学び、これまで自分なりに築いてきた「マネジメント観」を再整理し、将来の仕事のなかで実際に適用できるよう、確固たるものにする。

・ アメリカが圧倒的に進んでいる分野であるentrepreneurshipとsocial enterprise(政府・教育・医療など非営利団体へのbusiness disciplineの応用)について、将来日本へどのような形で持ち帰ることができるかも視野に入れながら学び、議論し、実際に体験することで理解を深める。

・ 世界中から集まったHBSの学生、さらにロースクールやケネディスクールなど他の大学院の学生たちとも交流し、一生の友をたくさん作る。

・ 自分が将来どのようなキャリアとライフスタイルを送って生きたいのか、改めて考え抜く。当面 は卒業後の20年をどのような仕事をして、どの国で過ごしていくのかを固めることか。

・ 最後に、これは一番チャレンジングだろうが、「日本が将来どういう国になるべきか」という問いに対して、自分なりの答えを見つける。

授業が始まってしまえば毎日のケースをこなすだけで手一杯になり、あっという間に2年間が過ぎ去ってしまうように思えます。だからこそ、ふと立ち止まってこれらの目標を振り返り、軌道修正をしながら、充実した学生生活を送っていきたいと考えています。

A Truly Global Leader

明日は8月1日の日曜日。こちらに来てから初めての遠出となりますが、ボストンから西へドライブすること3時間、避暑地であるバークシャーで行なわれるタングルウッドの音楽祭に出かけ、小沢征爾を聴きに行く予定です。

思い出せば、何年か前に初めて小沢征爾をニューヨークはカーネギーホールで聴いたとき、聴衆を総立ちにさせる「世界のオザワ」の姿に身震いがしたものです。彼は世界の人々に尊敬され、愛されている数少ない日本人なのではないでしょうか。翌朝のボストン行きのシャトル便でも偶然一緒になり、前夜のパンフレットをもって声をかけたら、とても丁寧に応じてくれたのが、今となってはよい思い出です。

これから世界で通用するリーダーとしての教育をHBSで受けようとしている矢先に、ボストンに拠点をおいて世界の人々に影響を与えてきたオザワの音楽を聴きに行くのは何だか縁起がいいような気がしてきました。そう考えると、渋滞も予想される3時間のドライブも、まったく苦にならなそうです。

2年後に卒業するタイミングで、この日記を読み返すのが今から楽しみになってきました。次回を書く頃は授業も始まっており、こんなに悠長に文章を書くのも当分はできなくなりそうですが。

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