Campus Report 2003

菊澤 桂 to NYU Stern School of Business(全22回)

MBAホルダーへの道

Vol.16 NYC2012

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アメリカ人も、外国人も含めてNYが大好きな人はとても多い。だからといって、NYにオリンピックを誘致することが必要だという理由にはならないし、オリンピック誘致の正当性を説明できる人もほとんどいない。

2012年のオリンピックへ向け、NYはアメリカ国内の選考プロセスを勝ち上がり、アメリカ代表として最終5カ国に残っている。最終決定は2005年の7月、他の4カ国は、ロンドン、パリ、モスクワとマドリッドである。

スターンのマーケティングの教授との個別研究授業で、ケースライティングというのがある。4~6人のメンバーが一つのテーマについてケースを書き、出来上がったケースの出来次第では来年からマーケティングコアの授業の教材になる、という大変魅力的な授業で今年、私たち6人が選んだテーマは、NYC2012。ニューヨークをオリンピック誘致に向けてどのようにブランディングし、またそのニューヨークブランドをどのように異なる利害関係者(スポーツ選手、IOC、市民、スポンサー企業等々)に売り込んでいくかを取り上げる。

その中には、どちらかというと"世界の"都市であるニューヨークを"アメリカ"の都市としてどのように位 置づけるかということも含まれる。国とその都市がいかに密な協力関係にあるか、というのも大事な最終選考項目の一つである。このプロジェクトは市の組織であるNYC2012委員会とスターンとの産学協同プロジェクトでもある。

このプロジェクト、都市のマーケティングというコンセプトがとても面 白いし、競走の激しい難しいテーマであり、売り込まなければいけない相手も様々であるためブランディングの観点から学ぶところもとても多い。それに、NYC2012委員会のメンバーは皆ニューヨークへのオリンピック誘致に向けてとても情熱的に活動をしており、一緒に仕事をさせて頂くことは楽しく非常に刺激になる。

ただ、日本人一人ふと立ち止まって考えたときに、どうして今、アメリカ、ニューヨークなのだろうと考えてしまう。たしかに、ニューヨークは世界中の大都市の中で数少ない一度もオリンピックを開催したことのない都市であるし、9/11の被害から慰めを必要としている人も多いかもしれない。世界中で一番多くの民族が暮らす街であるから、一番多くの人種を楽しませられるかもしれない。それによって開催国によっては応援者の少ない国からの選手だってたくさんの歓声と喝采を得ることが出来る。

私もNYに暮らし、アメリカはともかくこの街に愛着があるから、ここでオリンピックが開かれれば素敵だろうな、と強く思う。NY市民の78%がオリンピック誘致を歓迎しているし(このパーセンテージは、過去NYで行われたいかなる種類のアンケートの支持率より高い)、アメリカの著名人の多くがこのアイディアに熱狂的である。開催のためのインフラ整備による雇用は7年間で14,000人年にもなるため、各種組合も協力的だ。決して仲が良いとは言えない(ときもある)いくつかの人種が一つの目標に向い、関係を改善させる可能性も高い。それでも、NYは少なくともオリンピックを一番必要としている都市ではない。

学校でこの話をすると、アメリカ人以外の学生の多くが皆、そりゃモスクワだろう、と口を揃える。だって考えてごらん、今その5カ国の都市のどこが一番オリンピックによる精神的な慰めと経済の波及効果 を必要としている?と。皆健全である。

加えて、世界平和と友好のためのイベントであるオリンピックをこのタイミングでアメリカが勝ち取ることにより、とても悲しい、悔しい思いをする人はとてもとても多いに違いない。

現代オリンピックは世界平和と友好のためのツールとして再開された。そうはいっても、IOCとそのメンバーにとって4年に一度のこのイベントはかわいい、かわいい子供のようなものである。いかなる手段を使っても成功させなければいけない。成功が約束されない国へは渡せない。ロシアと近隣の情勢不安、オリンピック予算難はモスクワにとって大きなハードルとなっている。2008年オリンピック開催予定国の北京も2000年の誘致では最終2カ国にまで残ったが、北京での人権違反問題で最後に涙を飲んだ。予備入札でもモスクワは5か国中最下位 であった。

開催国の正当性、妥当性には目をつぶるとして、一般的には五か国中でパリとニューヨークが最有力候補であると言われている。公平に見ると、パリは多くの面 でニューヨークに勝っている。前回に引き続き2度目の立候補であるから、準備万端であるのはもちろんのことだが、フランス中が「パリ~世界愛の都市でのオリンピック」に足並みを揃えているように見受けられる。

ニューヨークが勝っている点は、予算が多い点、パリは現代になってから3回目の開催である点くらいである。ニューヨークはさらに、アメリカの中の都市としてどのようなポジションを取るか、ニューヨーク市民以外の国民にいかにして訴えかけるか、パリが世界愛の都市であるならば、ニューヨークは?などなど、課題が山積みでもある(ロンドンが候補に残っているため、他民族都市、世界の首都などの価値が際立たない)。

私たちの役目は、ニューヨークをブランディングし、様々な困難に立ち向かっていくことではなく、NYC2012委員会の取り組みと、他の4カ国を比較し、ケースを仕上げることである。情熱的なNYC2012委員会のメンバーを尻目に6人全員がNYへの愛をひた隠し、非常に客観的かつ冷静な目で書き進めている。来年の7月どの国が最終的に選ばれるかはわからない。ケースは、オープンエンドである。来年、このケースを使って勉強する新一年生が、スターンのインターナショナルビジネスの名声に恥じない優れた洞察力と世界観でケースを読み解いてくれることを願っている。またその学生たちの教材として相応しいタフなケースになるよう、私たちも日々奮闘している。

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