三谷宏治の学びの源泉

[第6回] マスター・オブ・ライフへの道(中編)

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#公道 時速300kmの人生観

自らの人生観を左右するほどの「言葉」に出会うことは、そう多くはない。しかし、SFの章で紹介した「幼年期の終わり」や「上弦の月を喰べる獅子」には、そういう言葉やメッセージが幾つもあった。楠みちはるの「湾岸ミッドナイト」(1~31巻、刊行中)もそういった稀少な本のひとつと言える(私にとっては)。

もともと自らのスポーツ性行を鑑みるに、静かな暴走系と言える。スキーで言えばコブ斜面 をモーグル流に駆け抜けるのではなく、フラットな急斜面を限界スビードの高速ターン3本で滑り降りるタイプだ。かつ、その途中に多少のコブがあれば躊躇無くそれを使ってジャンプする。飛距離15m以上。爽快である。

もちろん自分と他者の安全を確保するために、滑っている最中も、スピードという熱情の中で極めて高速な情報処理と冷静な判断をし続けている。

時速数十キロで迫る斜面のうねりの一つ一つ、視界の中の数十人のスキーヤー・ボーダーの運動方向・スピードとその軌跡の予測、耳を切る風の中に混じる様々な音、特に近づきつつある者の滑走音・悲鳴。

それら全てを見・聞き・考えつつ、心はスピードの恐怖と緊張に浸っている。暴れるスキー板を押さえて力ずくで曲がっていくことも快感なら、押さえ切れぬものを瞬時に解放して、逆のターンに切り替えていくことも快感だ。そこに計算はない。反射と感性だけがある。

松本大洋の「ピンポン」(窪塚洋介主演で映画化もされた。バックに流れる「スーパーカー」のFree Your Soulが秀逸)で言えば、「反応、反射、音速、光速」だ。

そういう極限的な主観と客観、アクセルとブレーキの二重性にこそ私の「力(フォース?)」の源がある。

「湾岸ミッドナイト」も首都高 湾岸線、環状線(C1)を時速300km超で走る者たちの物語だ。

悪魔のZと呼ばれる初代フェアレディZを駆る主人公アキオを中心に、様々な人生と車達が交錯していく。敵役の湾岸の帝王ブラックバード(ポルシェ911、黒色)は現役の大学病院医師、主人公を見守るレイナ(スカイラインGT-R 32型、600馬力)は19才の超人気モデル、等々。

皆分かっている。公道300km/h、それが如何に愚かな行為かということを。

#地獄のチューナー 北見 淳
この本では乗り手以上に作り手、つまりチューナー達が大きな役割を果たしている。ボディーワークの天才 高木、セットアップの鬼 富永、そして、11年前、自ら悪魔のZを作り上げた地獄のチューナー北見。彼は1000基以上の高性能エンジンを組み上げ、その力を操りきれなかった数十人もの人生を狂わせてきた。


彼がレイナを前に語る。
「ブラックバード・・・奴ははっきりとわかっている人間だ」
「公道300km/hオーバー」「どう考えたって反社会的で狂った行為だ」
「りっぱな犯罪者だ」「自分自身がそれを一番よくわかっている」
「わかっていながらやめられない」「大事なコトだ」

彼にとって大事なコトとは何だったのか。Zや911を追う時速250kmの車中、レイナに若さを自慢され、彼は答える。
「うらやましい・・?」「ぜんぜん」
「だってオレにも19の時はあったんだぜ」「それもとびきりの19が・・」
「21年前、19の時にオレはあのZにあったのョ」「オレはいっぱつで魅せられた」
「19の時も そして 40になった今でも、オレはずっととびきりの時を過ごしている」
「工場はつぶしたし・・家族も去っていった」
「でもオレが一番幸せだッ」「19の時からずうっと」「オレはスピードにとりつかれている」
「これ以上の 幸せが どこにあるッ」

これほどの言葉を、言い切れるか。その強さこそが自らの人生の価値を決める。

#第6段階目の欲求「士は己を知る者のために死す」

富永は言う。
「人ってホラ ただ 生きているだけじゃ ツライだろ」「意味と ゆーか・・ そーゆうの」
「それぞれ 求めるモノ あるだろ 人って」
「で オレは 何かなって 考えたとき―――」
「わかって ほしいって コトかな・・と」
「チューニングという 行為を介して」「オレという人間を わかってほしい――――――と」
「それも」「ただ 誰でもって ワケじゃない」
「誰に わかって ほしいのか」「それが 大事だとこの年でやっと 気づいたんだ」

......以下の続きは本でお読み下さい。

マンガリスト
  • MASTERキートン/勝鹿北星・浦沢直樹/小学館
  • PLUTO/浦沢直樹・手塚真/小学館(原作 手塚治虫「鉄腕アトム 地上最大のロボット」)
  • Magical Super Asia 深く美しきアジア/鄭問/講談社
  • 東周英雄伝/鄭問/講談社
  • バガボンド/井上雄彦/講談社(原作 吉川英治「宮本武蔵」より)
  • 寄生獣/岩明均/講談社
  • ヒストリエ/岩明均/講談社
  • ヘウレーカ/岩明均/白泉社
  • 蒼天航路/李學仁・王欣太/講談社

  • 陰陽師/岡野玲子・夢枕獏/白泉社
  • 風の大地/坂田信弘・かざま鋭二/小学館

  • 湾岸MIDNIGHT/楠みちはる/講談社
  • 11人いる/萩尾望都/小学館
  • 東の地平 西の永遠/萩尾望都/小学館
  • 百億の昼と千億の夜/萩尾望都/小学館(原作 光瀬龍「百億の昼と千億の夜」より)
  • 風の谷のナウシカ/宮崎駿/徳間書店
  • ブルーシティ/星野之宣/MF文庫
  • 巨人たちの伝説/星野之宣/MF文庫
  • プラネテス/幸村 誠/モーニングKC
  • 攻殻機動隊/士郎 正宗/講談社
  • ピンポン/松本大洋/小学館
  • ぼのぼの/いがらしみきお/竹書房

  • よつばと/あずまきよひこ/メディアワークス
  • 動物のお医者さん/佐々木倫子/白泉社
  • おたんこナース/佐々木倫子/小学館
  • Heaven?/佐々木倫子/小学館

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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