三谷宏治の学びの源泉

[第39回] クレームすることで何を学ぶのか

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 #ハーレーにクレーム

 最初にお断りしておくが、私はいわゆるクレーマーではない。嫌な目にあったら「黙って立ち去って二度と使わない」という典型的日本人でもある。ただ、かなり嫌な目に会うと、ちょっと好奇心がもたげてくる。これを、この会社はどう思っているのだろう?もしクレームをつけたら、どう対応するのだろう?
 そういう私の好奇心から発したクレームと、その顛末を幾つか。

 昨年買った新車のハーレー。初期不良が幾つか出た。それ自体は、まあ困ったことではあるけれど、ディーラーさんも真剣に対応してくれたし「仕方ないなあ」くらいだった。
 ただ、メーカーとしての情報や意見が聞きたくて、問い合わせ窓口に電話した。その一つは、マフラーの熱の話。
 「マフラーにヒートカバーが付いてますよね。だけど、足が触ると火傷するくらい熱いんですけど、おかしくないですか?」
 若い担当者の返答は「私も乗ってますけど、足、触りましたっけ?」
 私「触りますよ」担当者「そうですか~」
 いろいろ問答の挙げ句、最後に担当者は「うちはメーカーじゃないんで・・・」
 確かにハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)はメーカーじゃない。でも、ハーレーダビッドソンの100%子会社で、日本の販売とマーケティングの全権を握っている。そこが「メーカーじゃない」って言っちゃったらお終いじゃない。
 ここで、私の好奇心が発火。早速、HDJの社長である奥井俊史さんにお手紙を出す。彼はトヨタ自動車から転職してHDJを立て直し、縮小するマーケットの中、増収増益を重ねてきた立志伝中のヒト。さてさて・・・

 その反応は素早く、広報始め専門の方々にきちんと対応して頂いた。不具合に関しても「メーカーとしての」エンジニアがきっちり試乗してフォロー。ふむふむ、流石だね。合格。
 その後、色々な会合に呼んで頂いたりしてすっかりHDJに取り込まれた(?)私であった。

 #保険会社S社にクレーム

 これもバイクネタで最近のもの。そう、先日の転倒事故の折の話である。
 相手方の保険会社がS社。業界でも高い顧客満足度を誇る。もちろん私はS社の顧客ではないが。
 事故後に様々な連絡ごとや交渉が始まる。物損に関しては、何を幾らで補償するかということ。人身に関しても同じ。但しこちらは怪我が治ってから確定される。
 ところがS社の担当者の話を聞いても、全体像がちっとも分からない。交通事故なんて、大抵の当事者(被害者も加害者も)は「素人」である。そんなことに経験豊富なヒトは居ない。
 それに対してプロである(べき)損害保険会社側の担当者は、とっても受動的。こちらが聞いたことに答えるだけで、補償の対象範囲であるとか、今後何が起きるかという時間軸の話が全く見えない。
 物損事故から人身事故の切り替え手続きにしても「警察に届けてください」と言うだけ。
 いざ世田谷署に電話すると「被害者と加害者が、同時に来て下さい。受付時間は9時から12時まで。必要な書類は・・・」と盛り沢山。なんで私が、加害者のアポ取りから書類の確認までしなくてはならないの。そもそも加害者に私から電話して良いのかね。
 保険会社にその確認を入れる。「直接電話して良いんですか?」
 担当者は「あ、そうですね。ではわたくしからお電話入れて確認させて頂きます」と呑気かつ敬語もがたがた。
 この辺りでまたまた好奇心が発火。
 顧客満足度トップクラスで高名なS社もこんなもの?それとももっとちゃんとした(少なくとも敬語がちゃんと使える)担当者は居るのであろうか?
 S社の「顧客」である加害者の方を通じて、ズバリお願いをする。「担当者を替えて下さい」

 すぐに返事はなく、2~3日後にようやくレスポンスあり。ちょっと遅いねえ。
 但し、その対応はかなり良く、その後はきちんとしたベテラン担当者にフォローして頂いた。こちらがよほど勉強しないと、ダメなことも分かったが、こういった担当者が相手であれば、こちらもビジネスパーソンとして、普通にしっかりしていればなんとかなりそう。

 #保険会社M社にクレーム・・・

 こちらは私が入っていた保険会社、M社。基本的に今回の事故は10対0で相手側過失となったので、M社に出番はない。
 なのにここに登場したのは、M社の自爆行為によるもの。バイク保険の満期に伴う継続依頼のDMが来たので、それを見ながら私はコールセンターに電話。
 今度の新車にはABSが付くのでDMでの見積もり(20,070円)より安くなることを期待。

 電話口で暫く待たされて
 担当者「3万円です」
 私「あれ?1月23日のDMでは20,070円だが?」

 暫く待たされて
 担「1月20日に事故を起こしているので3万円になります」
 私「いや、DMには『事故 ノーカウント 1件』ってありますよ」

 暫く待たされて
 担「DMでは1月20日の事故で等級が3等級になることを入れてないのでやっぱり3万円です」
 私「だからDMには『事故 ノーカウント 1件』ってありますって・・・」

 またまた暫く待たされて
 担「こちらではM社と三谷様との『話し合い』がされていることになってまして、それが終わるまでは3等級として計算します。保険を使われないことになれば7等級になりますが」
 私「『話し合い』ってなんでしょう?私はM社の誰とも話し合ってなんていませんよ。見舞金は出るらしいですけれど、それは完治してから申請しろと言われている。物損(自損)保険にはそもそも入ってないし」

 担「物損(対物)には入ってますよね」
 私「(対物はもちろん。でも)今回は相手方の車は傷ついていない。物損に関しては相手の保険会社が全額払っている。M社の対物は関係ない」

 担「しばらくお待ち下さい」
 私「いや、これ以上、待ちたくないから、かけ直して下さい」

 #待たせて待たせて、話がコロコロ変わって、そのオチは・・・

 暫くして電話があり、
 担「やはり、『話し合い』が終わってないことになっています。相手が非を認めたと言っても、どうなるかわかりませんから、M社と相手保険会社との『話し合い』が続いています」
 私(あれっ?M社と私との『話し合い』じゃなかったのか!?と思いつつ)「それが終わらないと、3等級のままだということですね。ではそれは、いつ終わるのか?」
 担「わかりません」
 私(わからないってなんだよ!?と思いつつ)「いずれにせよ、物損に関してはもう示談も成立していて、お金も振り込まれている。それで、一体全体、M社が相手保険会社と何の『話し合い』をしなくてはいけないのか全く分からない」

 またもや暫く待たされて・・・
 担「そういうことでしたら、三谷様から安心センターにご連絡頂いて、示談が成立したことをお伝え下さい。そうすれば、7等級になると思います」
 私「そんな連絡を私からしなくてはならないと、誰にも言われていないが?」
 担「それは安心センター側の連絡ミス・・・(以下省略)」

 流石にこれだけ話がコロコロ変わると、こっちもフォローするのが大変。論理対非論理の戦いだ。でもちょっと楽しいから続けてしまった。
 これも、終わってからM社の窓口に上記をそのまま書いてクレーム。「この対応は、おかしい」

 その日の内に電話があり、フォロー。その素早さはマル。でもその内容はお粗末。「当方の入力ミスでした。7等級です」「スミマセン」
 う~ん、これは不合格かなあ。入力ミスは論外だが、それは私の問いに答えていない。
 なぜ、こんな対応になったのか?なぜ顧客(私)でなく、自分たちに問題があるかもと考えないのか?なぜ散々待たせて(上司と相談しまくって)この程度の対応しかできないのか?云々。

 時々、こういったことをやってみるのも、悪くない。あくまで冷静に、論理的に。怒るにしてもちゃんと考えて。
 時間も手間も掛かるし、失望して終わる確率も高い。でも、その企業について、そういった顧客対応業務の難しさについて、学ぶのには一つの方法・・・かな。

iNNO by Microsoftで「伝説のプレゼンターを目指せ!」も連載中。

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プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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