三谷宏治の学びの源泉

[第47回] ヒマと貧乏とお手伝い:お手伝い編

転職のご相談・お問い合わせ

経験豊富な
エージェントに転職相談(無料)してみませんか?

1分で完了無料登録・転職相談

 #お手伝いは就職に、学力に、正義感に効く!

 「ヒマと貧乏とお手伝い」と題して、講演をしている。対象は、子どもの親たち。先週は福井県鯖江市のK小学校で約1時間お話しした。
 日本有数の共働き地域、平日にも拘わらず、多くの保護者(お母さん中心)が出席。全家庭の4割くらいか。
 「発想力や決める力を養わないと、社会人になってから困ります」「そのためには子どもたちに『ヒマと貧乏とお手伝い』を与えなくては、いけません」
 一言で言えばそんなお話しを、いろいろな事例や調査結果を交えて語っていく。
 例えばお手伝い。
 ・お手伝い経験の少ない・無い者は、段取りが悪い、気が利かない(某社人事部長)
 ・お手伝いをよくする子どもの正義感・道徳観は「非常に強い」。逆に、ほとんどしない子どもでは「まったくない」「あまりない」が6割を占める(文科省調査)
 ・身の回りのことを自分でしている子の学力は高い。問題解決能力ではしている子の正答率が66%に対し、しない子では44%(東京都調査)
 つまり、子どもたちの将来のためだけでなく、今の学力や性格の形成においても、お手伝いは重要なのだ。
 面白いのは、こういった学力や正義感・道徳観といったものと、他の生活習慣(TVを見る、ゲームをする、スポーツクラブに入る等)との相関があまりないことだ。
 TVを見ても見なくても、それだけでその子どもの学力や正義感・道徳観は変わらない。でもお手伝いをする子の学力は高く、正義感は強い。

 #なぜ親は子どもにお手伝いをさせないのか

 なのに、今の親たちは(自分たちがさんざんお手伝いをさせられてきたにも拘わらず)、子どもたちに家事や家業の手伝いをさせることに、それほど熱心ではない。
 「家の手伝い」をふだん「よくやる」と答えた子どもの比率は、小学生でわずか31.5%、3人に1人弱だ。しかも中学生では17.9%、高校生では13.8%と激減する。(ベネッセ調査)
 親側に聞いても「子どもに家事をやらせているか」に対して「かなり心がけている」は12.1%、「あまり・まったく心がけていない」が43.4%となる。(長岡市調査)
 なぜだろうか。それは「面倒」だからだ。
 親たちは、お手伝いの効用に気がついていないわけではない。我が身を振り返り「子どもの頃のお手伝い経験が、今の自分に生きている」と感じる親は多い。「お手伝いが嫌だったから、どう素早くやるかいろいろ工夫をした」という人もいる。
 でも、我が子にお手伝いをさせることには積極的になれない。
 K小学校でのアンケートコメントから拾ってみよう。こんな声がいっぱい出てくる。
 「子どもが勉強や部活で忙しすぎる」
 「自分でやってしまった方が早い」
 「子どもがやるのを見守るのは手間がかかる」
 「子どもに文句を言われるのがイヤ」
 子どもの忙しさ、自分の忙しさ、そこからくる余裕のなさが、お手伝いという人生修行の場を、子どもから奪ってしまっている。
 だから、前提は親子の「時間の余裕」「心の余裕」ではある。これが無くてはお手伝い重視は貫けない。
 ただ、それだけでも足りない。
 必要なのは「多少の学力より、習い事より、将来役に立つのはお手伝い経験だ」「だから、例え今、子どもに嫌われようとお手伝いをさせる」という強い意思だ。
 「お手伝いが先。マンガやゲームはもちろん、宿題も後」と言えるのか。「お手伝いが終わっていないなら、学校に行かなくて良い・行かせない」と言えるのか。

 #『お手伝い至上主義』実現の前提は・・・

 品川区A地区の小学校PTA役員研修にお邪魔した。そのときのメインテーマは「決める力」
 『サバイバル』などのケースディスカッションを通じて、決める力の大事さや、ワザを体感しようとする内容だ。1時間以上にわたり、熱いディスカッションを繰り広げて頂いた。
 それに絡めて、お手伝い至上主義についても語った。我が家での実践事例も含めて。
 「他の家は関係ない。区外に通う高校生と言えど、携帯電話も無条件では認めない。お手伝いが出来ていなければ(携帯所持の)申請は門前払い」云々。
 研修の最後に、参加者からの質問がいくつか。その一つが、
 「奥様との馴れ初めは?」
 ん???なぜにそんな質問が、と思ったが、よく聞いてみると要はこういうことだったようだ。
 「子どもに相当無茶をやっているが、お父さんの暴走ではないか」
 「お母さんはちゃんと納得してやっているのか」
 「結局、お母さんが現場で苦しんでいるのではないか」
 もちろん女性陣からの質問だったのだが、それに答えつつ思った。
 「父親の育児参画、か・・・」
 父親が参画すればうまく行く、というわけでは決してない。でも、母親だけで難しいことも、両親の共同戦線であれば可能になるかもしれない。
 夫唱婦随、でも、婦唱夫随でも構わない。夫婦だけでなく、その親(ジジババ)たちとの共同戦線もあり得るだろう。
 戦線を拡げず、一点突破を図ろう。その一点は「お手伝い」
 子どもたちに家事・家業のお手伝いを、ファーストプライオリティとしてやらせることは「親のやっていることが一番大事」と伝えることでもある。そこから自然と、親への感謝・尊敬も生まれていくのだろう。

 お手伝い至上主義の実現。その一点に、お父さん方、どう貢献しますか。


参考:長岡市「家庭で子どもに手伝いをさせよう運動」

読まれてのご意見ご感想、ご質問はこちらへ。筆者が直接お答えします。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

初めての方へ 私たちキャリアインキュベーションについて

転職のご相談・お問い合わせ 業界の専門分野で10年以上の
経験を持つエージェントに
転職相談(無料)
してみませんか?

あなたのキャリアに関する相談相手として、現在の状況に耳を傾け、これまでのご経験や今後のポテンシャル、
将来の展望を整理し、よりふさわしいキャリアをご提案します。

1分で完了 無料登録・転職相談

現在約6000人以上が登録中!
転職活動にすぐに役立つ
メールマガジン(無料)もございます。

メールマガジン登録(無料)