三谷宏治の学びの源泉

[第48回] 「正しく決める力」出版記念!

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 #なぜ旭山動物園は「大」成功したのか

 1月下旬、約一年ぶりとなる新刊が、ダイヤモンド社から出版される。題は「正しく決める力」、副題は「『大事なコト』から考え、話し、実行する一番シンプルな方法」だ。
 もちろん定量的検証の方法もないので、「一番シンプル」は当社比、であるが。

 この本の目的は「若き社会人たちの意思決定および実行力を上げること」だ。私が経営コンサルタントとして鍛えられ、そして若手たちを指導し、研修を作っていく中で感じたこと。リクルート社に始まり、グロービスやKIT虎ノ門大学院、早稲田大学ビジネススクールなどで、社会人教育に携わる中で分かったこと。そう言った中で、「一番大事なコト」が書いてある。
 それが、『重要思考』『Q&A力』『喜捨法』だ。
 重要なのは絶対的な大きさ(それが議論すべき大事なコト)なのに、ヒトは絶対的な大きさよりも「差」に目が行ってしまう。
 他社より大きい、他社より目立つ、他社より安い・・・。買う人は、値段なんかどうでもいいかもしれないのに、外見なんて気にしないかもしれないのに、そういった差ばかりを追い求め、そればかりを気にする。それが思考の上でも、議論の上でも最大の無駄だ。
 まず気にすべきは、大事なコトかどうか、なのだ。
 そして、その最初の視点は「誰が何をしたか」ではなく「誰にとってどうだったか」だ。
 旭山動物園に殺到した人々は、一体誰なのか。その人たちにとって、大事なコトは何だったのか。その人たちを運んできた企業はどこなのか、その企業たちにとって大事なコトは何だったのか。
 それを考えれば、旭山動物園というヒット商品が「大ヒット」(上野動物園級の集客数)となった理由が分かるはずだ。

 #大事なコトから3段階で考える

 この世の大体のことは、白黒への分類で済むほど単純ではない。かといって複雑に考えすぎると3×3×3の多次元マトリクスみたいになってヒトの大脳がついて行かない。
  論理的な構造としては、3段階が適切ではないかと思う。まずは前提として一番大事なコトを決める。これは感情でも主義主張でも良い。だから論理としてはゼロ段階。
 論理構造が1段階だけなら、もうここから「答え」(方策)を選ぶことになる。2段階なら、その前に「大戦略」(方向性)が入るだろう。これはかなり単純な白黒 二元論(もしくは三者択一)となる。進むのか撤退するのか、右か左か。
 しかし、この世の複雑性を吸収するには、「大戦略」と「方策」の中間が必要となる。それが「効用」(中目標)だ。
 大戦略を実現するには、何を達成しなくてはいけないのか。逆に、個々の方策は何の役に立つのか。それらが「効用(Utility)」だ。これを論理の2段階目に挟むことで、効率的な思考が出来るはずだ。

 就職で悩む、転職で悩む、そう言うときにも役に立つ。自分にとって一番大事なコトはなんだろう。
 「職業」に自分が求めるものは?ここ数年のうちに実現したいことは?最終的に成し遂げたいことは?目標とするもの(やヒト)は?
 それが定まれば、そこから3段階(大戦略-効用-方策)で考えていけばよい。

 #転職大戦略

 大戦略(方向性)の選択肢はそう多くはない。転職するをmove、留まるをstayとすれば、stay or move!だけだし、少しひねっても「3年後を一区切り」にしてのstay and move(3年後の転職を視野にこの3年は現職で頑張る)、move and move(理想の職場目指して2回の転職を目指す)、move and stay(次の職場でじっくり頑張る)等、数パターンだ。
 まずはこれを決めること。一番大事なコトを実現する上で、どれが一番正しいのかだけに集中して。

 それが決まれば、何をするのかを考えられる。ただそれもいきなり方策に入らないこと。例えばstay and move戦略を実現する為に、自分がつけるべき経験やスキルはなんだろうか。それが「効用」となる。知力か体力か人間力か、専門性か汎用性か、それとも特定分野の経験か。
 それを列挙し優先順位をつける。その上で「方策」を洗い出し、効用と繋げよう。
 方策としては、社外の勉強会に精を出す、今目の前の仕事に頑張る、社内で人脈を拡げる、KIT虎ノ門大学院に通う・・・様々あるだろう。そして各々の効用を考えていく。

 #決めるとは「捨てる」こと

 どの段階であっても、なんでもかんでも、はありえない。どれかに決めたり、絞らなくてはいけない。
 ヒトも組織も、時間やお金は有限だし、多くに手を出せば出すほど中途半端になる。やるなら1~2に絞っての資源の集中投下しかない。でも、頭のいいヒトの最大の弱点がここにある。
 捨てたときに起こるであろういろんな問題が分かってしまうから、どれも捨てられない。そして結局1つに絞れない。
 いっぱい勉強しているから、いっぱい考えついてしまうから、いろんなことに手を出して、反復練習する時間がない。そして結局1つのスキルも身につかない。

 捨てるのはコワいこと、イヤなこと。
 でも、それを乗り越えない限り決めたことを実行できない。だから、そのコワさやイヤさをどうにかしないといけない。
 かといってこれらに正面から向き合うのも大変なこと。さてどうするか・・・
 コワさやイヤさを相殺するだけの、楽しさやうれしさ、もしくは、強制力を作ることがその答えだ。夢やビジョンを持つことも、その1つだろうし、仲間との約束(による無理強い)もそうだろう。
 そうして、今ある何かを捨て、新しい何かにヒトモノカネを投入すること。
 それなくして新しい何かの成功はない。

 正しく決め、実行するための3つのワザ、『重要思考』『Q&A力』『喜捨法』
 是非、一読あれ。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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