#なぜ旭山動物園は「大」成功したのか
1月下旬、約一年ぶりとなる新刊が、ダイヤモンド社から出版される。題は「正しく決める力」、副題は「『大事なコト』から考え、話し、実行する一番シンプルな方法」だ。
もちろん定量的検証の方法もないので、「一番シンプル」は当社比、であるが。
この本の目的は「若き社会人たちの意思決定および実行力を上げること」だ。私が経営コンサルタントとして鍛えられ、そして若手たちを指導し、研修を作っていく中で感じたこと。リクルート社に始まり、グロービスやKIT虎ノ門大学院、早稲田大学ビジネススクールなどで、社会人教育に携わる中で分かったこと。そう言った中で、「一番大事なコト」が書いてある。
それが、『重要思考』『Q&A力』『喜捨法』だ。
重要なのは絶対的な大きさ(それが議論すべき大事なコト)なのに、ヒトは絶対的な大きさよりも「差」に目が行ってしまう。
他社より大きい、他社より目立つ、他社より安い・・・。買う人は、値段なんかどうでもいいかもしれないのに、外見なんて気にしないかもしれないのに、そういった差ばかりを追い求め、そればかりを気にする。それが思考の上でも、議論の上でも最大の無駄だ。
まず気にすべきは、大事なコトかどうか、なのだ。
そして、その最初の視点は「誰が何をしたか」ではなく「誰にとってどうだったか」だ。
旭山動物園に殺到した人々は、一体誰なのか。その人たちにとって、大事なコトは何だったのか。その人たちを運んできた企業はどこなのか、その企業たちにとって大事なコトは何だったのか。
それを考えれば、旭山動物園というヒット商品が「大ヒット」(上野動物園級の集客数)となった理由が分かるはずだ。
#大事なコトから3段階で考える
この世の大体のことは、白黒への分類で済むほど単純ではない。かといって複雑に考えすぎると3×3×3の多次元マトリクスみたいになってヒトの大脳がついて行かない。
論理的な構造としては、3段階が適切ではないかと思う。まずは前提として一番大事なコトを決める。これは感情でも主義主張でも良い。だから論理としてはゼロ段階。
論理構造が1段階だけなら、もうここから「答え」(方策)を選ぶことになる。2段階なら、その前に「大戦略」(方向性)が入るだろう。これはかなり単純な白黒 二元論(もしくは三者択一)となる。進むのか撤退するのか、右か左か。
しかし、この世の複雑性を吸収するには、「大戦略」と「方策」の中間が必要となる。それが「効用」(中目標)だ。
大戦略を実現するには、何を達成しなくてはいけないのか。逆に、個々の方策は何の役に立つのか。それらが「効用(Utility)」だ。これを論理の2段階目に挟むことで、効率的な思考が出来るはずだ。
就職で悩む、転職で悩む、そう言うときにも役に立つ。自分にとって一番大事なコトはなんだろう。
「職業」に自分が求めるものは?ここ数年のうちに実現したいことは?最終的に成し遂げたいことは?目標とするもの(やヒト)は?
それが定まれば、そこから3段階(大戦略-効用-方策)で考えていけばよい。
#転職大戦略
大戦略(方向性)の選択肢はそう多くはない。転職するをmove、留まるをstayとすれば、stay or move!だけだし、少しひねっても「3年後を一区切り」にしてのstay and move(3年後の転職を視野にこの3年は現職で頑張る)、move and move(理想の職場目指して2回の転職を目指す)、move and stay(次の職場でじっくり頑張る)等、数パターンだ。
まずはこれを決めること。一番大事なコトを実現する上で、どれが一番正しいのかだけに集中して。
それが決まれば、何をするのかを考えられる。ただそれもいきなり方策に入らないこと。例えばstay and move戦略を実現する為に、自分がつけるべき経験やスキルはなんだろうか。それが「効用」となる。知力か体力か人間力か、専門性か汎用性か、それとも特定分野の経験か。
それを列挙し優先順位をつける。その上で「方策」を洗い出し、効用と繋げよう。
方策としては、社外の勉強会に精を出す、今目の前の仕事に頑張る、社内で人脈を拡げる、KIT虎ノ門大学院に通う・・・様々あるだろう。そして各々の効用を考えていく。
#決めるとは「捨てる」こと
どの段階であっても、なんでもかんでも、はありえない。どれかに決めたり、絞らなくてはいけない。
ヒトも組織も、時間やお金は有限だし、多くに手を出せば出すほど中途半端になる。やるなら1~2に絞っての資源の集中投下しかない。でも、頭のいいヒトの最大の弱点がここにある。
捨てたときに起こるであろういろんな問題が分かってしまうから、どれも捨てられない。そして結局1つに絞れない。
いっぱい勉強しているから、いっぱい考えついてしまうから、いろんなことに手を出して、反復練習する時間がない。そして結局1つのスキルも身につかない。
捨てるのはコワいこと、イヤなこと。
でも、それを乗り越えない限り決めたことを実行できない。だから、そのコワさやイヤさをどうにかしないといけない。
かといってこれらに正面から向き合うのも大変なこと。さてどうするか・・・
コワさやイヤさを相殺するだけの、楽しさやうれしさ、もしくは、強制力を作ることがその答えだ。夢やビジョンを持つことも、その1つだろうし、仲間との約束(による無理強い)もそうだろう。
そうして、今ある何かを捨て、新しい何かにヒトモノカネを投入すること。
それなくして新しい何かの成功はない。
正しく決め、実行するための3つのワザ、『重要思考』『Q&A力』『喜捨法』
是非、一読あれ。