三谷宏治の学びの源泉

[第62回] 可愛い子には・・・家探し

転職のご相談・お問い合わせ

経験豊富な
エージェントに転職相談(無料)してみませんか?

1分で完了無料登録・転職相談

 今回は、18才の小さな冒険のお話。

 #浪人決定からの1週間

 3月も終りの頃、某国立大学の合格発表があり、そしてそこには合格者の名前しかなく、浪人が決定した。
 当然だ。そこしか受けていなかったのだから。

 郷里 福井県では非常に国公立志向が強い。理由はよく分からないが、伝統的にそうだ。都道府県別の大学進学率を見ると、全国10位。でも、国公立大学のみでみると全国1位の進学率となる。
 教員たちも強烈にそれを奨めるので、子どもたちは自然とそうなっていく。
 良い面があるとすれば、金銭的に親孝行だということに加えて、バランスよく学ぶ動機付けに繋がる、ということだろうか。
 特に昨今の私立大学は、受験生争奪戦の中で「多様な」入試機会を提供し、たった2科目での受験が可能な場合が多い。もちろん内申書は全教科対象だが、重みは教科試験側にある。
 でも国公立大学志望であれば、イヤでも5教科7科目をカバーしなくてはならない。理系でも国語を、文系でも数学を、真剣に学び続けることになる。
 将来を考えれば、高校時代にはまだそれで良い。大学や会社で専門特化して行くと言っても、そのレベルのことは知っていて、決して損はない。

 ともかく、浪人が決定したのが3月23日。予備校(駿台東京校)の入学手続き期限が翌日で、4月の最初から授業は始まる。
 たった1週間で東京での新居を決め、引っ越しを終えねばならない。東京に頼れる親戚も友人もなく、親たちも家業に忙しい。
 翌日、単身で上京し、東京 お茶の水の駿台を訪れた。入学手続きをし、住居を探すためだ。

 #高円寺からのスタート

 駿台の8階フロアに行くと、壁中に小さな張り紙。全て、駿台側が用意した住居の物件情報だ。
 何百枚もの紙が、沿線別駅別に列ぶ。
 でも、全然判断がつかない。
 東京は受験で来たのが初めてで、これが2回目。中央線のどこが中央なんだろうか、とか、総武線の総は房総で武は武蔵野かな、とか、思うばかり。町の名前も新宿とか渋谷しか知らない。
 唯一それ以外で知っていたのが、吉祥寺。明倫学舎という福井県人会の寮があったからだが、当時は浪人不可だった。

 そういう意味で、吉祥寺は無事大学進学を果たした友人たちの町。親近感もあるがなんとなくの抵抗感もある。
 なので隣の駅、高円寺、にした。
 一度も聞いたことのない町だった。

 賄い付きのテレビなし、の下宿物件に決め、家主に連絡を取って現地を訪れる。地下鉄 新高円寺駅の近くだ。
 下宿屋はちょうどリフォーム中で、部屋は工事中。六畳間が3室、四畳半が8室で計11部屋。借りる部屋を決め、引っ越しの期日を1週間後と決める。駿台が始まる前々日だ。

 でも残念ながら、引っ越してきたら、部屋はまだ完成していなかった・・・。下宿屋のおばさんは明るく「ごめんね~、明日までには仕上げてもらうから、今日はこれでどこか泊まってきて」と、5千円を私に手渡した。
 どこに泊まれば良いんだろう・・・。彷徨うこと2時間。私の東京での新生活のスタートは、高円寺でなく、渋谷のビジネスホテルから始まった。
 初めての東京暮らし。学んだことは「何が起こるか分からない」だったか。

 #長女の家探し~初日の挫折

 長女が受験を終え、埼玉県の大学への進学が決まった。家からは片道2時間弱の距離。
 通えない距離でもないが、大学受験の最初から申し渡していた。「どこに受かろうと、家を出ること」

 住まい選びは本人に、やらせた。出した条件は、大学から近いこと、同じ大学の人が多く住んでいること、等。
 学校から近隣の物件リストが送られてきたので、それをベースに自分で調査せよと、送り出した。
 昼前に出かけたのに、夕方早々に帰ってきて、しかも、大学の隣駅の不動産屋 一軒に行っただけという。
 しかも「居住中だから」と物件は1つも見せて貰えなかったと。

 その不動産屋曰く、「大学周辺ではもう物件はない、この駅のも今日明日で決めないと無くなる」
 そう言われて「明日決めたいから一緒に行って欲しい」と帰ってきた。 持ち帰ってきたのは隣駅近辺の新築に近い物件の間取り図ばかり。

 何、言ってるの。
 そんな調べ方で、十分なわけがない。
 やりなおし!

 長女、「なんでそんなに自分でやんなきゃいけないの」「自分が住むところなのに好きに決めちゃダメなの」とメソメソ。

 ダメです。

 長女は仕方なく、深夜まで掛かって、大学からのリストを確認し、地図をプリントアウトしまくっていた。

 #長女の家探し~2日目の突破

 翌朝は早くから一人で出かけた。そして個人管理の物件や駅周辺の不動産屋にアタック開始。

 昼頃、「順調?」とだけとメールしたら、
 「いえーい(ピースマーク)」と返事。「?」と問い返したら、「楽しくなってきた!もう6軒見たー」と。
 結局、一日で10軒近くの物件を回り、2軒ほどに候補を絞り込んできた。

 帰宅後、各物件(や家主の身の上話)を嬉々として説明しながら曰く、
 「私、結構、てきぱき効率的にやれることが分かった!」
 そして一番のお気に入りは、築後25年の古い物件。昨日の「新築命」は何だったのか・・・。

 まあ、何より、自分で動くことを体験できたのがよかったね。一人で調べて、動いて、考える。その、貴重な練習機会を活かせたかな。

 教訓:かわいい子には、家を一人で探させろ!


読まれてのご意見ご感想、ご質問はこちらへ。筆者が直接お答えします。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

初めての方へ 私たちキャリアインキュベーションについて

転職のご相談・お問い合わせ 業界の専門分野で10年以上の
経験を持つエージェントに
転職相談(無料)
してみませんか?

あなたのキャリアに関する相談相手として、現在の状況に耳を傾け、これまでのご経験や今後のポテンシャル、
将来の展望を整理し、よりふさわしいキャリアをご提案します。

1分で完了 無料登録・転職相談

現在約6000人以上が登録中!
転職活動にすぐに役立つ
メールマガジン(無料)もございます。

メールマガジン登録(無料)