今回は、18才の小さな冒険のお話。
#浪人決定からの1週間
3月も終りの頃、某国立大学の合格発表があり、そしてそこには合格者の名前しかなく、浪人が決定した。
当然だ。そこしか受けていなかったのだから。
郷里 福井県では非常に国公立志向が強い。理由はよく分からないが、伝統的にそうだ。都道府県別の大学進学率を見ると、全国10位。でも、国公立大学のみでみると全国1位の進学率となる。
教員たちも強烈にそれを奨めるので、子どもたちは自然とそうなっていく。
良い面があるとすれば、金銭的に親孝行だということに加えて、バランスよく学ぶ動機付けに繋がる、ということだろうか。
特に昨今の私立大学は、受験生争奪戦の中で「多様な」入試機会を提供し、たった2科目での受験が可能な場合が多い。もちろん内申書は全教科対象だが、重みは教科試験側にある。
でも国公立大学志望であれば、イヤでも5教科7科目をカバーしなくてはならない。理系でも国語を、文系でも数学を、真剣に学び続けることになる。
将来を考えれば、高校時代にはまだそれで良い。大学や会社で専門特化して行くと言っても、そのレベルのことは知っていて、決して損はない。
ともかく、浪人が決定したのが3月23日。予備校(駿台東京校)の入学手続き期限が翌日で、4月の最初から授業は始まる。
たった1週間で東京での新居を決め、引っ越しを終えねばならない。東京に頼れる親戚も友人もなく、親たちも家業に忙しい。
翌日、単身で上京し、東京 お茶の水の駿台を訪れた。入学手続きをし、住居を探すためだ。
#高円寺からのスタート
駿台の8階フロアに行くと、壁中に小さな張り紙。全て、駿台側が用意した住居の物件情報だ。
何百枚もの紙が、沿線別駅別に列ぶ。
でも、全然判断がつかない。
東京は受験で来たのが初めてで、これが2回目。中央線のどこが中央なんだろうか、とか、総武線の総は房総で武は武蔵野かな、とか、思うばかり。町の名前も新宿とか渋谷しか知らない。
唯一それ以外で知っていたのが、吉祥寺。明倫学舎という福井県人会の寮があったからだが、当時は浪人不可だった。
そういう意味で、吉祥寺は無事大学進学を果たした友人たちの町。親近感もあるがなんとなくの抵抗感もある。
なので隣の駅、高円寺、にした。
一度も聞いたことのない町だった。
賄い付きのテレビなし、の下宿物件に決め、家主に連絡を取って現地を訪れる。地下鉄 新高円寺駅の近くだ。
下宿屋はちょうどリフォーム中で、部屋は工事中。六畳間が3室、四畳半が8室で計11部屋。借りる部屋を決め、引っ越しの期日を1週間後と決める。駿台が始まる前々日だ。
でも残念ながら、引っ越してきたら、部屋はまだ完成していなかった・・・。下宿屋のおばさんは明るく「ごめんね~、明日までには仕上げてもらうから、今日はこれでどこか泊まってきて」と、5千円を私に手渡した。
どこに泊まれば良いんだろう・・・。彷徨うこと2時間。私の東京での新生活のスタートは、高円寺でなく、渋谷のビジネスホテルから始まった。
初めての東京暮らし。学んだことは「何が起こるか分からない」だったか。
#長女の家探し~初日の挫折
長女が受験を終え、埼玉県の大学への進学が決まった。家からは片道2時間弱の距離。
通えない距離でもないが、大学受験の最初から申し渡していた。「どこに受かろうと、家を出ること」
住まい選びは本人に、やらせた。出した条件は、大学から近いこと、同じ大学の人が多く住んでいること、等。
学校から近隣の物件リストが送られてきたので、それをベースに自分で調査せよと、送り出した。
昼前に出かけたのに、夕方早々に帰ってきて、しかも、大学の隣駅の不動産屋 一軒に行っただけという。
しかも「居住中だから」と物件は1つも見せて貰えなかったと。
その不動産屋曰く、「大学周辺ではもう物件はない、この駅のも今日明日で決めないと無くなる」
そう言われて「明日決めたいから一緒に行って欲しい」と帰ってきた。 持ち帰ってきたのは隣駅近辺の新築に近い物件の間取り図ばかり。
何、言ってるの。
そんな調べ方で、十分なわけがない。
やりなおし!
長女、「なんでそんなに自分でやんなきゃいけないの」「自分が住むところなのに好きに決めちゃダメなの」とメソメソ。
ダメです。
長女は仕方なく、深夜まで掛かって、大学からのリストを確認し、地図をプリントアウトしまくっていた。
#長女の家探し~2日目の突破
翌朝は早くから一人で出かけた。そして個人管理の物件や駅周辺の不動産屋にアタック開始。
昼頃、「順調?」とだけとメールしたら、
「いえーい(ピースマーク)」と返事。「?」と問い返したら、「楽しくなってきた!もう6軒見たー」と。
結局、一日で10軒近くの物件を回り、2軒ほどに候補を絞り込んできた。
帰宅後、各物件(や家主の身の上話)を嬉々として説明しながら曰く、
「私、結構、てきぱき効率的にやれることが分かった!」
そして一番のお気に入りは、築後25年の古い物件。昨日の「新築命」は何だったのか・・・。
まあ、何より、自分で動くことを体験できたのがよかったね。一人で調べて、動いて、考える。その、貴重な練習機会を活かせたかな。
教訓:かわいい子には、家を一人で探させろ!