#「みんなの動物広場」のうさぎ
mixiアプリである『みんなの動物広場』(提供者はRAKOO(*1))をやっている。始めてから1ヶ月ほどだろうか。
一昨日、マイミクさんちの牧場に行ったら、牛がお腹を空かせていた。
そしてあの、眼が赤いうさぎたちが10数匹、楽しそうに跳ね回っていた。
水をくんで、牧草の種をまいて、うさぎを全部捕獲した。
すっきりした。
それにしても、この動物広場におけるうさぎの存在は謎である。
初期の頃は、捕らえると経験値が貯まり、売り飛ばすとお金になるのでウレシい存在だったが、しばらく経てばこれほどウザッタイものは無い。
一匹や二匹なら許せる。
しかしちょっと放っておくとあっというまに増殖する。まさにリアルうさぎの如く。
かつ私としては白うさぎがキライである。
黒うさぎは「捕まえにくい」からまだチャレンジ精神も刺激されるが、白うさぎはただ面倒なだけ。
うさぎが嫌いになりそうな、今日この頃である。
#ガーデニングゲームのブレークスルー
もちろん、動物広場的なヤツ(ガーデニングゲームと言うらしい)は実にうまいところを突いているとも思う。
『ブラウザ三国志』のような「マイミクとチームを組んで」みたいなゲームは正直面倒くさい。いくらソーシャルゲームと言っても、そこまで行くとゲーム自体が相当好きでないとやってられないし、メンバーとの余計な人間関係に煩わされる。
でもガーデニングゲームは、他人の農場や牧場などの「お世話をする」こと(だけ)でマイミクとの繋がりが感じられる。そんなゲームだ。
これこそソーシャルゲームにおける、新たなコミュニティレベルの創造、であった。
ガーデニングゲームの先駆は『サンシャイン牧場』である。ユーザー数はなんと473万人。1000を超えるmixiアプリ中でも最大数だ。
提供者はRekoo。前出のRAKOOとの名前の違いは一文字だけ。
この2社は実はいずれも中国の会社で、両ゲームとも中国のSNS上でヒットしたゲーム(*2)のmixi版である。
ただいずれのゲームにせよ、ユーザーは初期に爆発的に伸び、すぐにフラットとなる。これがSNSでのソーシャルゲームの特徴(*3)だ。
例えば、『みんなの動物広場』のユーザー数は1ヶ月掛からずに100万人に達したが、なんとその内1/4はオープン初日に集められた。
mixiなどの強力なSNS内において、ソーシャルゲームは急速に伝播・浸透する可能性を持っている。
(*1)他に『みんなの農園』(166万ユーザー)、『みんなのイケス』(82万ユーザー)を運営
(*2)サンシャイン牧場の中国版は、51.com上で1784万人のユーザーを集めている
(*3)例外もある。DeNAの『怪盗ロワイヤル』は数ヶ月間コンスタントにユーザー数を伸ばし続けている。現在284万人。(3/24/2010)
#ソーシャルゲームのエンドゲーム
しかし問題はその継続の仕方、終り方だろう。
ユーザー数が100万を超えると言っても、その内アクティブなのは、おそらく数分の1(*4)に過ぎない。
いくら継続性が強いガーデニングゲームといっても、時間と共にユーザーたちがゲームから離れて行くことは必然である。
なのに、それにつれて、残った者たちは強い孤独を感じる。
マイミクの広場を訪れても、空白かうさぎだけが飛び跳ねる、まことに寂寥感の漂う風景ばかりが拡がる。
まあ、おそらくだが、運営者としては「ライトユーザーの排除」ということなのだろう。
こういうゲームは、ユーザー同士の紹介によって急速に広まるが、運営者の収入は多く「アイテム課金」によって成り立っている(*5)。
さまざまな便利で希少なアイテムたち。それを運営者がリアルなお金で売り捌く。レベルアップや競争心に火が付いたユーザーたちは、平気で数千円・数万円をそれに注ぎ込む。
これが、月当たりいくら、といった「定額制」では打ち破れなかった、ネットゲームの限界を集客の壁を打ち破った「アイテム課金」の在り方だ。
そういったなかで、アイテムを買ってくれないライトユーザーは、ある意味邪魔なのである。
ゆえに、うさぎたちは、ライトユーザーを駆逐するために放たれた必殺の刺客なのだ...。
そして最後には、アイテムを買う少数のユーザーだけが残れば、良い。それがエンドゲーム(最終像)。
#社会性を「消費する」ソーシャルゲームであってはならない
いや、それではとてもソーシャルゲームとは呼べない。
マイミク同士の繋がり(社会性)を元にして集客し、お互いの「お世話」によって発展させるガーデニングゲーム。
その最後が、お世話も繋がりも失せた、うさぎ砂漠であって良いはずがない。それではただの「ユーザーの社会性の消費」だ。
ソーシャルゲームのエンドゲームの在り方において、もっともっと有意義な楽しい解決策を望みたい。
それをどうにか出来ないと、「アイテム課金」に成功したとしても、長期の収入には繋がらないだろう。
いや、それでいいと割り切っているならそれも立派な戦略か。
短期にアイテム課金で稼いで、その内に実質ユーザーを減らしてクローズする...。
やっぱりそれはもったいないなあ。
100万人以上のユーザーを折角獲得したのだから...。
(*4)『みんなの動物広場』で私のマイミクユーザーを数えると、ちょうど1/3だけが継続中。残りの2/3は休眠(?)ユーザー
(*5)mixiアプリの場合には、mixiから1PV(ページビュー)当り、最低0.01円の「広告」収入も保証されている。
#mixiアプリを眺めてみると...
最後に、最近のmixiアプリのランキングを眺めて分かることをいくつか。(2010/03/24時点)
・登録アプリ数は1200、総登録ユーザー数は120百万人。1アプリ当り平均は10万人
・実際には上位集中がかなり強い。上位20アプリで37百万人、31%を占める
・提供者も数百社あるが、上位20社で77百万人、64%を占める
・提供者のほとんどは専門のウェブゲーム制作会社だが、それ以外ではホンダが圧倒的
ホンダのmixiアプリは懸賞型で、1つは『当たれ!Hondaマイミくじ』
これは2009年9月に第一弾が行われ、数十万人のユーザーを獲得した。総額数百万円にのぼる豪華景品が、200名あまりに当たるものであったが、その応募条件は
・Hondaインサイトのメルマガを購読すること
・属性と車に関しての簡単なアンケートに答えることだった。
たった数百万円で、数十万人のメルマガ購読者の獲得とその基礎アンケートが出来た計算だ。これに味をしめて、第2弾、第3弾(*6)が行われ、同様の成果が上がっている。
ただこれらは、普通の懸賞サイトと変わりない。
#ホンダのソーシャル懸賞アプリ
しかし、2010年3月末まで行われる『Ole! Ole! CR-Z』は、同じ懸賞型でもSNSのソーシャル性を活かしたものと言える。
賞品はズバリ、新型HV(*7)スポーツカー CR-Z!。その応募条件は
・自分のmixiでのニックネームに「CR-Z」という文字を入れる
ことだけだった。
だから私の周りにも急に、「XXX CR-Z」みたいなヒトたちが増えた(*8)のだなあ。
結局『Ole! Ole! CR-Z』は、2/12にスタートし40日後、78万人のユーザーを集めるに至った。
同日、ホンダはCR-Zについての受注台数を発表する。
「2/26に発売されたCR-Zの累計受注台数が約1ヶ月で1万台を超えた」「これは当初の月間販売計画の10倍である」
『Ole! Ole! CR-Z』のユーザー数は、なお増加を続けている。その数、毎日約2.5万人。増加数ランキングで3位に入る検討ぶりだ。
締切日までに、100万人近くを集めることは間違いない。
このmixiアプリはCR-Zの実売増加に、どれくらい貢献しただろうか。
少なくとも宣伝効果は大きかっただろう。100万人の登録者とその数倍数十倍のマイミクたちが、「CR-Z」を意識した。
そして、掛けたコストはまたもや総額で数百万円に過ぎない。
ニッチで情動的な商品の、新しい広め方である。
(*6)2009/0925~2010/03/24まで。44万人を集めた。
(*7)ハイブリッド車。リッター25km走る。ユーザーは独身者が半分を占める。
(*8)マイミク内だけで数えても4人もいた。