三谷宏治の学びの源泉

[第73回] サッカー アジア杯決勝の楽しみ方

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 #アジア杯決勝で見つけた「面白さ」

 1月29日は、翌朝4時までテレビに釘付け。30日の日曜日は朝から仕事だったというのに・・・。

 でも、いくつか面白いことを見つけた。いや、別に意識して見つけたわけでなく、ただ素直に面白いと思ったことなのだけれど・・・。
まずはその「発見」をデイリースポーツのWeb途中経過に従って紹介しよう。

 その1.
 「後半27分豪州のキューエルとGK川島が1対1となり左足からのシュートを川島は右足でなんとか止めピンチをしのぐ」

 この場面、川島の体の動きがすごかった。
 体全体は一か八かで、左に動かしつつ、キューエルのシュートが右に来たのを感じて、右足だけがその場に残った。そして、そこにボールが当たった。いや、当てた。
 あんな動き、人間に出来るのね。

 その2.
 「延前14分豪州のヘディングシュートをGK川島が右手一本で止める」

 これもGK川島ネタ。
 物理法則に従って空中を粛々と、ゴールポスト左上隅に向かって進むボール。
 それにジャンプ一番、斜め後方に跳びつく川島。なんとか空中で追いつくも、そのままでは一緒にゴールの中。
 そこでこれも物理法則、運動量保存則に則って、自分が勢いよくゴール内に突っ込む代わりに、ボールには戻って貰う作戦を敢行。いわゆるボールを掻き出す、というやつだ。

 見事、成功。代わりに彼はゴール内へと空中を移動し続けるハメに。
 しかし彼の真骨頂はここから。

 ボールはまだデッドじゃない。
 だから、空中をゴール内に跳んだにも拘わらず、着地前からサイドネットをつかんで、自らをゴール外へ強制送還。無事、ゴールを守りきった。
 この藁をも掴む、ど根性と反射神経に、しびれた。

 ちなみに彼はこの試合で、数度、きつーい、キーパーチャージを受けたが、痛がったり倒れたりしたのは、必ず、ボールがデッドになった、後だった。
 これもさすがのプロ根性。

 #李忠成の空中ボレーと長友の八艘跳び

 その3.
 「延後4分日本は長友からの左サイドからのクロスを途中出場の李忠成が左足でボレーシュート。値千金のゴールを決めた」

 日本中が沸いたこのシーン。
 私が感動したのは、李忠成(り ただなり)の着地シーンであった。
 彼は完璧なボレーシュートを、やはりほぼ空中で行った後、そのまま転倒とか回転とかすることなく、そこままストンと着地した。
 左足キックの時の強烈な回転エネルギーを、腰と上半身や右足のひねりで吸収した、ネコのごとき軽やかでしなやかな着地であった。

 最後まで美しいシュート。それにしても着地までキレイに決めるとは、ただ者ではない、と思っていたら翌日、本人のコメントが新聞に。
 「ボレーシュートは小学生の頃からずっと練習してきた」
 そしてついでにザッケローニ監督のコメントも。
 「彼はああいった難しいシュートがじつに上手い。ただ、簡単なシュートも決められるようにならないといけないが」


 もちろんこの試合のベストパフォーマーは長友である。 その敵陣深く突っ込んだ後の、切り込みや切り返しの技こそが、チームの成果につながった。

 その4.
 「後半21分日本は左サイドの長友からのボールを岡崎がヘディングシュートを放つが、決まらず」

 この、岡崎が国民的ヒーローになり損ねた瞬間のちょっと前、長友は相手ディフェンダーを鮮やかな切り返しで置き去りにしていた。お見事。
 でも、面白かったのはここじゃない。
 デイリースポーツの試合経過にも乗らず、実況のアナウンサーも伝えなかった、長友の超絶プレーが二つある。
 一つは延長前半13分28秒前後、もう一つは延長後半7秒のものだ。いずれも彼は、相手ディフェンダーの猛タックルを、スカッとジャンプでかわして、センタリングへとつなげた。
 ちょんっ、とボールを浮かして自分もジャンプし、ディフェンダーとは一切接触せず、置き去りにする。大きなスペースとチャンスが生まれる瞬間(*1)だ。

 ただ横に切り返すだけでなく、八艘跳びでまっすぐかわす。相手にとっては、とてつもないやりにくさだろう。これぞ世界レベル!(世界最強クラブ インテルへのレンタル移籍ももっとも)

 さて、これくらいにしよう。あなたには、いくつ、見えただろうか?(^_^)

(*1)それは久しぶりに、あの忍者ハットリくんを思い出した瞬間でもあった。ちょっと似てる?


 #いったい何を見ているのか?

 私は試合中、一体「何を」見ていたのだろう。ヒトと少し違う発見が出来ていたとしたら、それはなぜだったのだろう。
 思いつくものを、いくつか挙げてみよう。
 ・違う時間を見る
 ・違う対象を見る
 ・違う範囲を見る

 違う時間:あるプレーが起こった瞬間ではなく、その前後も見ている。(ボレーの後、センタリングの前)
 違う対象:ボールでなく、ヒトを見る。ボールを追うと、そもそもそのプレーの瞬間しか見られない。
 違う範囲:なるべく広めに見る。もしくは凄く細かく、ディテールを見る。
 こう見ていくと、要は視野を広めにして、ボールが来る前や後にヒトが何をしているかを見ること、ということか。
 うーん、でも、それだけじゃないなあ。ある場面を見ていても、「それ」を見つけられるかは、別の話。一体どんなとき、それら膨大な情報の中から、「面白いもの」が掬(すく)いだされるのだろう。

 #「予測」との「違和感」が、発見につながる

 見つけるきっかけは、多分「違和感」というやつだ。それも、事後的にゆっくり出てくるものでなく、その場での即時の引っかかり。
 記憶や経験と比べての差ではなく、こう動くだろうという推測と比べての差。だから即座に引っかかる。
 もちろん、人間であれば誰でもそういった「予測」を自動的に行っている。ヒトの大脳は、そういう風にできている。
 そして現実がそれと異なったとき、必ずそのズレを検知する。でもそれをどう処理するかは、そのヒト次第だ。そのまま流せば、それまでの話。
 でもそれをダイジにしたり、面白がったりすれば、その検知能力は上がっていくだろう。

 それだけでなく、「予測」も意識して高めていくことが可能だ。次は一体どうなるのかな? と、ちょっとだけ気にすればいい。
 きっとそれだけで、もっともっと色々な違和感を手に入れられるはずだ。
 あとはその違和感を元にして、どう面白いのかを解釈するだけ。どう普通と違ったのかを分析するだけだ。


 こうやって、ときどき自分をちょっと科学してみる。それも、「偶然」を「必然」にする、「たまたま」を「スキル化」する、一つのやり方だ。
 お試しあれ。

 ああ・・・でも、MVPをとった本田圭佑は言っていた。
 「今回の本当のMVPはヤットさん(遠藤保仁)」

 これは、見えなかった。まだまだだなあ。

 (文中、敬称略。お許しを)

 お知らせ:3月に2冊の本が出版予定です。1冊はプレジデント社から。親たちに向けた子育て本で『お手伝い至上主義でいこう!』で「ヒマと貧乏とお手伝い」がテーマです。三谷家の子育て論、お楽しみに。3人娘たちの悲喜こもごも・・・。
 もう一冊は実務教育出版から『ルークの冒険』。これは子どもたちに向けた発想力ワークブックで、主人公のルーク(イワトビペンギンの子ども)が、この世に潜む「カタチの秘密」に挑んでいきます。
 グラス、紙コップ、ペットボトル、トリ、飛行機・・・。そして解き明かされる、古代からの言い伝えの秘密。
 フルカラー180頁の冒険譚を、お待ち下さい。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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