#子どもを幸せにする子育てとは?
親が、親として子どもに望むことは「子ども自身の幸せ」(のはず)です。「幸せ」はなかなかに測りにくく、扱いづらい代物ですが、なによりそれは本人が「幸せ」と感じるかどうかでしょう。
子どもの頃どうだったら、大人になったときに「自分は今、幸せだ」と感じるようになるのか。クレイグ・オルソン(Craig A. Olsson)博士たちは、ニュージーランドの1000人を対象に、32年間かけてそれを追跡調査・分析しました。
そこでの結論は、「一般に、大人になってからの幸せ度は、子どもの頃の学力でなく社会的つながりによって決まる」というものでした。
15~18歳時点での学力は、32歳時点での幸せ度に、ほとんど影響していなかったのです。
(1)32歳で幸せ度が高いのは15~18歳で社会的つながりが高かった人。学力の高低はほとんど関係がない
(2)15~18歳での社会的つながりは主に5~9歳での社会性(と言語能力)で決まる
園児・児童期の子育てとして一番ダイジだったのは、社会的つながりの向上でした。そして次が言語能力を高めることだったのです。
#もっとも重要な「社会的つながり」は幼少期から!
ここでの「社会的つながり」(Social Connectedness)とは、家庭を含む社会との密着(Social Attachment)であり、スポーツなどを通じた参加(Social Participation)であり、学力以外の能力(Strengths)であり、人生への満足度(Life Satisfaction)を指します。
15~18歳時点で、そのスコアが高い子どもたちは、非常に高い確率で32歳時点の「幸せ度 Wellbeing」が高いのです。
では「15~18歳 社会的つながり」の高さ(と低さ)は、どうやって生み出されるのでしょうか。
それは同じく、5~9歳時点での「社会的つながり」の高さ(と低さ)からでした。園児・児童期の頃から、幅広い人間関係を築けた子どもたちが、そのまま中高生に育っていったのです。
これは逆に言えば、中高生時代の社会的つながりは、園児・児童期から鍛えておかないと、なかなか急には築き得ないということを示唆してもいます。
#幼少期の「言語能力」は幸せにもつながる
「15~18歳 社会的つながり」の高さにもう一つ貢献しているのが5~9歳時点での「言語能力」の高さです。
「5~9歳 言語能力」の高さは、非常に強く「15~18歳 学力」につながります。そのファクターは0.9。残念ながらそれがそのままは「幸せ」につながらないのですが、「15~18歳 社会的つながり」にかなり影響します。
そういう意味(経路 Path)で、園児・児童期の「言語能力」は、32歳時点での幸せ度向上に役立つのです。
#「社会的つながり」が就職力を分ける
子どもたちの将来を考えるのに、もっと直接的に「日本の大学生の就職力」で見てみましょう。2010年6月に明治安田生命が大学生4120人(内 4年生1030人)を対象に調査をしました。
大学生の社会性を見るのに「何をしているとき楽しいか」という設問を使い、「友人や恋人、サークル」などと答えた者を「お仲間タイプ」、「ひとり・ネット・ゲーム」と答えた者を「おひとりタイプ」と分けました。
そうしたら、大学4年6月時点での就職内定率が2倍以上違ったのです。
・お仲間タイプ 51%、おひとりタイプ 22%
こういった差がつく理由は、結構簡単です。「おひとりタイプ」に向く就職先が少ないからです。就職先を職種で分ければ、もっとも多いのは「営業・販売」です。次に多い「事務」にしても、人と話さなくていい仕事なんてとっくにIT化されています。人とつながることが好きで慣れている者の方が、内定率が高いのは当たり前なのです。
「就職浪人→ニート」を避けたいなら、そして子どもたちの将来の幸せを本当に望むのなら、必要なのは単純な学力ではありません。幼少期からその「社会的つながり」を育むのが第一です。そして同じく「言語能力」を鍛える事なのです。
参考図書:『お手伝い至上主義でいこう!』プレジデント社