三谷宏治の学びの源泉

[第103回]電車で学ぶイマドキの若者たち:残念篇

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 #朝、京浜東北線の若者の、行く先と行く末は...

 ある春の朝。京浜東北線で。大井町から東京駅に向けた6駅15分のお話しです。

 電車は空いていました。少し離れたところに、若いサラリーマンが一人で座っていました。
 熟睡、しています。乗り過ごさないか心配です。

 彼のポケットでは途中でピーピー、スマホがアラーム音を発しはじめました。
 エライ。彼はちゃんと乗り過ごさないように、手を打っていたわけです。
 どんどん音は大きくなり、車内の視線が彼に集まります。
 でも、彼は熟睡を続け、1分後、アラーム音は止まりました。残念...。

 もう2駅進んだところでまた、アラーム音がなり始めました。おお、こっちが本命か!
 でも、彼は熟睡を続けます。アラームもじきに止まってしまいました。あ~あ。

 さらに2駅進んだところで、私の降りる東京駅に着いてしまいました。「誰も起こさない」というのも可哀想だと思い、私は降り際に、彼に声をかけ、頭を3回、( ´_ゝ`)σ)Д`)ツンツン してあげました。
 でも...、反応はありません。「大物だ」。
 私はホームに降り立ちました。彼の行く先と、行く末が楽しみだなあ、と思いながら。

 #A学院の学生、後輩に大いに語る

 今度はお昼、田園都市線でとなりの大学生が、後輩の高校生に語っています。

 「おれ、大学入ってから、一回も勉強したことないんだよね」「ま、やる気もないっていうか」
 「うちの大学、入るのはまあ、難しいって言われてんだけどさ、英語の授業でやってるの『三単現のSつけろ』とかだし。中1レベルだよね」「他の大学は、英語はもっと厳しいらしいよ。K学院とか」
 「でもA学って、『ゆとり(教育)』で、オレにはちょうどいいわ」「基本、やる気ないし」
 「明日の英語のテストも準備してない。出席足りなくてどうせ、再履修、決定だし」

 A学生、ここで、なぜ出席が足りないのかの説明を、詳しくはじめます。

 「いっつも寝坊して1限(の授業に)出られなくてさ、仕方ないから学校に近い友だちの家泊まったのよ」「でも友だちと遊んじゃって、結局、朝起きたら2限の時間で、2限すらでられなかった(笑)」
 「まあ、ふだんは学校あんま行かなくって、バイトして、好きなことやってる」

 降車駅である渋谷も近くなり、A学生、いよいよ後輩に進路選択の結論を語ります。

 「だからさ、そう(いう生活を)したければ、A学はオススメ」「まあ、どこも大しては変わんないと思うけどね」

 うなずく後輩クンと、後輩に語って満足げな先輩、でした。あ~、録音して、親に聞かせたかった(笑)
 3年後、キミは京浜東北線で爆睡してるのでしょうか、それとも...。

 #女子高生の夏休み?

 ちょっと派手めな女子高生が2人、話しています。けだるげな感じで。

 「夏休みヒマだよねー」
 「だけど、遊びに行くのもお金かかるし」「かといって家にいたくないし~」
 「お金のかからない遊びないかなぁ

 しばらく、どういう遊びがいいかの議論があり、しかし結論は、「結局、家にいるのが一番お金かかんないんだよね~」となりました。
 健全なのか、夢がないのか...。しかし、ここで終わるかと思われた「遊び」の話は突如、飛びます。

 「やっぱ、どうせ遊ぶならオールだよねー」
 「そうだよね~、その方がお金かかんないしねぇ」

 なに!? 女子高生が徹夜遊び?
 よく見たら、高校生でなく女子大生でした。ま、それにしても...。夏休みは有意義に、過ごしましょう。
 遊びだけが、人生じゃないですよ。遊べるのは今だけ!と思っているのかもしれませんが、逆です。そこで遊びすぎると、あとで遊べなくなるのです。

 #高3女子の進路家族会議

 私の後に乗り込んできた親子4人が、突如、大声で娘の進路会議をはじめました。
 と、いうか、お母さんと娘が、学校での進路相談結果を、お父さんに説明する、の図(*1)です。娘は多分、高校3年生。
 なんで電車の中でこんな重要な話しを? お父さんは、そんなに忙しいのか、それとも、「ついで」扱いなのでしょうか。

 問題は「しょっかん」か、「しょくせん」(*2)かのよう。
 両方、今通っている私立高校からの内部進学で行けるらしいのですが、「しょっかんはマジ授業や演習や試験が大変」と、担任に止められたと、訴えています。「試験で覚えなきゃいけない資料が10cmもあるんだって!」
 行きたかったのは「しょっかん」だが、「しょくせん」にしようか...。でも、「しょくせん」だったら簡単すぎる。
 その上で、さらに担任に「外部進学は考えないのか?」と投げかけて、娘は悩んでいるのでした。

 でもお父さん、特に意見は無い感じです。ふんふん、聞くばかり。

 その内、本当の問題が見えてきました。お母さん、です。娘が何か意見や事実を言おうとしても、すかさずそこに自説をかぶせてきます。「そこはこうなのよ」と。
 人脈がどうの、就職先がどうの。科目がどうの、入試がどうの。大学のブランドがどうの。

 うるさ~い!娘の意見を聞かせろっ!
 あ......いやいや、他人の家庭のことでした。
 でも、娘の進路に関心を持って、自分も勉強するのはいいですが、娘より詳しくなって、しかもその知識や意見を、娘にも夫にもぶつけまくって、どうするのでしょう? そうやったら「ベストの選択」ができると思っているのでしょうか。
 神さまじゃあるまいし、「ベストの選択」なんて誰にもできません。いや逆です。自らが十分調べ、考え抜いた決断は、すべてが「ベストな選択」となるのです。結果、何か辛いことがあったとしても、他人のせいにする余地はありません。それを選ばなかったら自分がどうなっていたかなんて、まったくわからないので、他の選択との比較も無意味です。自ら決定した後、それは自動的に、ベスト(1番)の選択となるのなのです。

 ガンバレ、娘。自分の意見を持って、両親を説得しよう。お母さんと一緒に考える、じゃ、ダメですよ。
 たったひとつの、あなたの人生。お母さんの人生ではありません。そして「進路」は、あなたの意思決定力の貴重な訓練機会なのです。

 A学院のやる気ない学生さん、夏休みもっと遊びたい女子大生のお二人、お母さんにまだ負けている高3のお嬢さん、人生から、逃げず、逸らさず、ぶつかっていきましょう!数年後、「残念」とならないように。
 そうそう、京浜東北線の若者は、まずちゃんと前夜、寝ることから。東京では、目覚ましも、人の善意も当てにならないのですから。

(*1)弟はずっと視線をそらせて、他人のふり作戦だった。

(*2)「しょっかん」は管理栄養専攻、「しょくせん」は食物学専攻、か。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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