三谷宏治の学びの源泉

[第104回]電車で学ぶイマドキの若者たち:期待編

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 #朝、東京の地下鉄での「勉強」状況...

 2013年3月から、東京の地下鉄では車内でも全面的に携帯電話の電波(3GS)が届くようになりました。その結果として、ホームのみならず、車内でも多くのヒトが、携帯電話、特にスマートフォンをいじくるようになりました。
 満員電車の中、座っているヒトが一列全員、スマートフォンに目を向けている、などという光景も珍しくはなくなりました。
 そして、何をやっているかといえば、ゲーム(男性)かメール(女性)かSNS(Facebookなど。男女とも)です。

 でもそんな中でも、本を読んでいるヒトはまだ、います。私の観察の範囲内では8割が、女性です。
 読んでいるのは小説か、英語などのスキル・資格系の本。決してマンガやスポーツ紙ではありません。
 また、大型の手帳を出して、スケジュールを確認したり、思い付いたことをメモしたりしているのも、ほとんどが女性(*1)
 こんなに性差があると、男性の一員として恥ずかしいくらい...。やはり、これからの日本を背負っていくのは女性なのだと、思い知らされる瞬間です。

(*1)ただし、車内でノートパソコンをバシバシ打っているのは、ほぼ男性。

 #午後だと、どうなる? 小学生がすごい!

 午後になると、子どもたちが電車に乗っていきます。いや、きっと朝も乗っているのですが、あまりに早朝で私とぶつからず、午後、学校帰りの小中高校生と出会うわけです。
 午後早い時間だと、乗っているのは小学生。首都圏ならではですが、私立小学校(*2)が多数あるので「電車で通学する小学生」が存在するのです。
 学校で「読書競争」があるのかもしれませんが、この小学生たちは、とてもよく本を読んでいます。特にお気に入りは『マンガ 日本の歴史』『マンガ 世界の偉人物語』などなど。これは昔と一緒ですな(笑)

 この読書好きは私立小学生には限りません。公立も含めて、小学生は全世代で一番本を読んでいます。全国学校図書館協議会の調べによれば、小学生の読書量は月間10冊程度。中学生の4冊弱、高校生の2冊弱の数倍に上ります。
 ちなみに社会人も高校生と同程度ですが、その構成は30代なら(*3)「ゼロ冊 27%、1冊 26%、2冊19%、3〜4冊 17%、5〜7冊 5%、8冊以上 6%」となり、月に1冊以下の人が53%を占めているのです。
 日本で一番「勉強」しているのは、ずばり小学生なのです。圧勝です。

(*2)東京都私学財団に登録されている私立小学校は、53校、私立中学校は185校、私立高校は245校。

(*3)財団法人 出版文化産業振興財団の2009年調査。

 #行動力があるのは、黒か茶色か?

 電車内で席を譲るのは、どんなヒトでしょうか?
 私は興味があって(自分が譲る傍ら)過去20年、観察して続けています。統計的な調査結果は寡聞にして見つけられませんでしたが、私が直近見た5例は、
(1)40代の女性が、年配の女性に
(2)30代の男性が、30代の母子に
(3)女子高校生が、年配の女性に
(4)男子専門学校生が、年配の女性に
(5)20代の男性が30代の母子に
 譲られるのは年配の女性か幼児を連れた母子が多く、譲る側は半分以上が学生か若者です。電車で座っている人間の半分以上が学生や若者というわけではないので、比率的には「若い方がより席を譲る」とも言えそうです。

 さてここからが本論です。
 若者の中で、より席を譲るのは「ふつうの子」でしょうか、それとも「茶髪の子」でしょうか?
 これも私の観察によれば、席を譲る若者の半分近くは「派手めな茶髪系 」です。優等生っぽいふつうの子たちは、ほとんど席を譲りません。大人しく、目立たぬように座っています。でも、わぁわぁ大声でおしゃべりしている、つけまつげ付きの超派手めな女子高生が、目の前におばあさんが来たとたん、すっと席を立ったりします(3)。
 もしくは、足を投げ出して座っていた、ファッショナブルなメタル系のオニイサンが、やはり席を譲っていました(4)。となりのふつうの子たちは知らん顔していたのに。
 この「事実」は、みなさんの「感覚」と合うでしょうか? そして、なぜこんなことになるのでしょう?
 それはきっと「他の人と違うことをすることへの慣れ」の差です。

 #行動力とは、目立つことに慣れること

 残念ながら、多くの日本人は車中、老人や乳幼子を連れた親に席を譲りません。誰もが心で思っているだけです。そんな中で、席を譲るという行為は、とても目立つ、他の人と違った行動なわけです。
 でも「茶髪系の若者」は、ヒトと違うことには慣れています。だから衆人環視の中、ヒトと違った行動ができるのでしょう。

 ある日、東北新幹線はかなり混んでいて、自由席車両では座れず通路に立つ人も出ていました。そのとき、大学生たちが素晴らしいスポーツマンシップを見せました。
 何かのスポーツ大会に出たらしい彼・彼女らは、相当疲れている様子でしたが、老人や乳幼児連れの親たちが乗ってくると、順々に席を譲っていきました。譲った後、自分たちはドアの向こう側へ消えていきます。おそらくは、新しく乗ってくるお客さんに邪魔にならないように。
 彼・彼女らがそのスポーツ大会で好成績を収められたのかどうかは、わかりません。しかし少なくとも、ある地域を代表し、衆人環視の中、プレーしたわけです。その「目立つことへの慣れ」が、車中でも彼・彼女らの連携ファインプレーを呼んだのでしょう。

 #大江戸線の天使

 東京都庁から青山一丁目に向かう大江戸線に、ある昼、乗っていました。珍しく結構混んでいます。座ったものの、向かいの席も人がいっぱいでした。
 途中、新宿駅で多くのヒトが降りました。
 伏せていた目をふと上げると、向かいの席にSuicaがコロリンと転がっています。なんと!今まで座っていたヒトが、落としていったに違いありません。素早く拾って、ホームに降りて、声を上げます。
 「誰かSuica落としてませんか?」
 でも、反応はなく、たまたま目があったお嬢さんも、クビを横に振るばかり...。
 さあ、困りました。一旦、電車内に戻ったのですが、さてこのSuicaをどうしたものでしょう。しばし、ドア近くで悩みます。
 そのうちホームのベルが鳴りはじめてしまいました。
 ああ、仕方がありません。改札まで持っていってあげることにしました。きっと落とし主は、そこで立ち往生するはずですし。
 と、決めて電車を出たら、さっきのお嬢さんがこちらを見ています。そして、唇が動きます。
 「持って行きましょうか?」
 ちょっとだけ急いでいた私には、彼女が天使に見えました。即座に「お願いします」とSuicaを渡し、電車に戻ろうときびすを返します。
 しかし、ドア(正確にはホームドア)は目の前で無情にしまり、私はホームにポツリと取り残されることになりました。こちらを見ていたお嬢さんは、少し申し訳なさそうな顔をしてから、軽く会釈をして改札へと歩き出しました。はい、いってらっしゃい。

 #期待できるのは...

 これまでの車内観察上、期待できる若者は以下の層ということになります。
・男性より女性
・中高生より小学生
・黒髪より茶髪、スポーツ選手

 これにもっと付け加わらないか、これからも電車の車内観察を続けたいと思います。残念な若者だけでなく、期待できる若者たちを見つけるために。


 読者のみなさんへ
 「車内で席を譲るヒト」を日本で今の5倍にするには、どうすればいいでしょうか? 優先席、妊婦さんマーク、を超える、イノベイティブなアイデアを募集します。HPのお問い合わせまで、お寄せください。

プロフィール

三谷 宏治 氏

KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授
http://www.mitani3.com

1964年生まれ、三女の父。 87年、東京大学理学部物理学科卒、92年、INSEAD MBA修了。87年から96年までBCG、96年から06年までアクセンチュア戦略グループ。03年から06年は同 統括エグゼクティブ・パートナー を務める。 06年8月からは教育(特に子ども・親・教員向け)に注力し全国で講演・研修・授業を行う。 著書多数。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『一瞬で大切なものを決める技術』はビジネス書賞を獲得。近著に『戦略子育て』『新しい経営学』『戦略読書〔増補版〕』など。早稲田大学ビジネススクールおよび女子栄養大学 客員教授。永平寺ふるさと大使。

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